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2008年1月に外務省が開催した「日本・メコン外相会議」に関する各紙報道は、メコン地域へと「南進」する中国政府と従来の影響力を保持しようとする日本政府との綱引きを描き、最近の開発潮流の変化をきわめて象徴的に示した。
もともとメコン河流域諸国はラオス、ビルマ、ベトナム3国が中国雲南省と国境を接し国境貿易が盛んであり、人民元が日常的に流通するラオス北部のルアンナムター県に見られるように地理的な近さによる中国の影響力が大きい。加えて近年ではラオスの文化会館や英雄の銅像の建設、カンボジア政府が負っていた債務帳消しと大規模インフラ建設など中国政府による華々しい援助外交が繰り広げられている。
その一方で、現地社会からは中国企業による植林事業のため天然林の伐採や土地使用権をめぐる紛争が各地で起きていること、ラオスのナンマン3ダムの建設をめぐって現地モン族が暴動を起こし軍が出動する事態に至ったこと、カンボジアのカンポート州自然保護区で建設中のカムチャイ・ダムによって周辺住民が竹や籐の採集ができなくなり水の汚染や近隣の街への供給量不足の問題が発生していること、ココン州の自然保護区の近くでも同様のダム計画が進行中で稀少な野生動物への影響の可能性や地元住民が反対していることなど、数多くの懸念すべき事例が報告されている。
2007年9月にはカンボジアのサンボール地方でNGOの戦略会議が開かれ、中国、マレーシア、タイなど新興国と呼ばれる国々の企業よるメコン河本流上でのダム開発事業への関与とその環境影響への懸念が広く共有された。さらに12月初旬にはビルマにおける中国企業のダム建設について適切なプロセスを踏むよう求める要望書がビルマ国内を中心とする数十のグループの連名で中国の胡錦濤主席に提出されている。
こうした国々による開発事業の増加は、開発資金の多様化と現地での環境社会影響をもたらすのみならず、既存のドナーの政策レベルを維持する意欲を阻害しかねないという意味で、ここ数年、多くのNGOの注目を集めており、私たちメコン・ウォッチもとくに注目している問題である。
メコン流域国で国境貿易や植林事業に携わる中国企業はたいてい中央政府の関わらない民間の海外直接投資だが、メコン河本流ダムやその他のインフラ開発事業に関わる企業はしばしば国有企業であり、政府からの融資を受け、一体となって海外事業を展開している。こうした企業への融資を含む中国の対外援助は、石油や天然ガスなどエネルギー資源へのアクセス、重要な貿易相手国との関係維持、国際社会における政治的影響力の拡大、自国企業の利益獲得などさまざまな目標を達成するための外交手段の一つとして行われ、FTA交渉、日本の常任理事国入りの阻止や台湾問題、人権問題をめぐる途上国票への影響などさまざまな面で成果を挙げていると言われている。DAC(OECD)非加盟国として中国は援助の実態を明らかにしていないが、断片的なデータや情報を分析した研究成果によると、中国はとくにアフリカとアジアを重点地域としており、無償資金協力や無利子借款は商務部など、優遇借款や輸出信用については中国輸出入銀行や国家開発銀行によって援助を実施している。また後者の中国輸銀と国家開発銀行については国家予算ではなく資金の大部分を金融市場から調達していると見られる。
アメリカ輸出入銀行は2005年の時点で、中国輸出入銀行は2010年までに世界最大の輸出信用機関になると予測していたが、2008年1月の新華社通信の報道によれば、2007年末にはすでに中国輸銀は2,654億元(約363億米ドル)を承認、1,960億元の融資を行った。それぞれ2006年比で26%と49%の伸びであり、承認額としてはすでに世界最大の輸出信用機関となっている。
こうした中国の対外援助とその影響力の拡大については、実はメコン流域諸国だけでなく世界各国から懸念の声が上げられてきた。批判の主はNGOのみならず、世界銀行や欧州投資銀行など既存のドナーからもあがっていた。とくに中国政府がアフリカでの反汚職メカニズムの効果に反するような援助を行ったり、スーダンやビルマなど深刻な人権侵害を起こし、国際社会から孤立しているような国々に対しても一切の条件づけなしに援助を行なうなど援助のルールやグッド・プラクティスを台無しにするというものであった。
その一方で中国政府は現在、急速に成長を続ける自国の経済に見合う対外援助体制を構築するため、さまざまな体制改革を実行中であることも事実である。2007年の1年間だけでも不十分な内容ながらNGOに対して中国輸銀の環境政策が公開されたり、各国から批判を受けているスーダンに対してミッションを派遣し、調停役としての役割を果たそうとするなど積極的に外からの声に応えようとする姿勢が見られる。