このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。
2005年の世界の温室効果ガス排出量のうち、アジアは全体のおよそ36%を占めています。今後見込まれる急速な経済発展を鑑みると、低炭素社会を目指さないシナリオにおいてはアジア地域からの温室効果ガス排出量は引き続き伸び続けることが予想されています。低炭素社会の一つの目標は2050年までに世界の温室効果ガスを半減させることです(図1)。アジア地域では今後の経済発展に伴いエネルギー消費が大幅に増加することが予想され、燃料の消費に伴う二酸化炭素(CO2)の排出量を抑制することは非常に重要です。また、アジア地域では燃料の燃焼以外による排出が現状では4割と大きな割合を占めているため、土地利用の変化によるCO2吸収源の減少、農地や家畜からのメタンや亜酸化窒素の排出抑制も重要な課題です。低炭素社会実現に向けた対策を講じることによって、エネルギーアクセスの向上や貧困の撲滅といった課題の解決にもつなげることも大きな目標です。
アジアが低炭素社会に移行するのは容易ではなく、中央・地方政府、民間企業、NGO・NPO、市民、そして国際社会それぞれが長期的な視点から目指す社会の姿をしっかりと見据え、担うべき役割を認識して相互協力しながら取り組みを進める必要があります。アジアといっても、国や地域によって発展レベル、資源賦存量、国土や文化などは異なるため、それぞれ効果的な対策は変わります。
「アジア低炭素社会研究プロジェクト」は、アジア諸国を、多面的な側面から総合的に低炭素社会へ誘導する政策オプションと、その実現のためのロードマップを策定・提案し、各国が実施可能かつ有効性の高い低炭素社会実現戦略や政策の作成を支援することを目的としています。
本プロジェクトがスタートした5年前に比較して低炭素社会に対する認識は向上し、低炭素社会へのロードマップもいくつかの国、地域、都市において策定されました。しかし、これらのロードマップが予定どおり実行され成果をあげていくためには、個別具体的な低炭素システム作りの方法論の共有や、資金の確保など、まだまだ課題が残されています。低炭素技術の導入を促す制度が確立されたとしても、各国の産業や市民、政府といった各主体がその意義と理由を十分理解していなければ、十分な効果が期待できません。省エネルギーに対する理解や、温暖化など低炭素社会に関わる問題に対する知識や理解の深める教育制度の確立なども課題として残っています。また、ロードマップが策定されていない地域については、今後、低炭素社会への舵とりを、すでに進んでいる国や、国際社会が支援していく必要があります。
本プロジェクトは、国立環境研究所(低炭素社会シナリオ担当)、東京工業大学(低炭素ガバナンス担当)、東京大学(資源消費から見た低炭素化担当)、名古屋大学(低炭素交通システム担当)の四つのチームで構成されています。