このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。
環境問題は深刻になりつつあります。今年の夏は間違いなく暑く、熱中症で100名以上の方が亡くなったそうです。フランスでは2003年に約1万4,000人が熱中症で亡くなりました。これは地球温暖化が大きな背景にあると思われます。生態系の変化も大きく、昔は九州にしかいないといわれていた長崎アゲハが今は東京で自由に飛んでおり、沖縄ではサンゴが白化現象を起こしています。人間にも最近では環境難民という表現が出てきました。他にも砂漠化の拡大、熱帯雨林の減少、オゾン層の破壊など地球全体の問題があります。人間を含めた生物の滅亡はそんなに非現実的なものではなく、危機が切迫している問題だと思います。
環境問題に関する取り組みに対して、福祉の関係者もその戦いに加わらなければ効果が十分ではありません。とくに福祉の持っているパワーというものは絶大なのです。全国には2万以上の保育所があり、これが全体で取り組めば相当強力なものになります。保育を受けている子どもは200万人を超えており、その200万人にはお父さんやお母さんがいるでしょう。そうすると「保育所が地球環境問題に取り組むぞ!」となればそれは両親、家庭にも影響していきます。特別養護老人ホームの数は6,000〜7,000ですが、そこに約40万人が入所しています。特別養護老人ホーム施設で地球環境問題に取り組めば、その家族の方も含めて広がりができます。
福祉施設は地域のどこにでもあり、日本中の全ての人が福祉と関連を持っているのです。福祉施設が地球環境の危機に取り組むということを宣言すればこれは大変大きな力になりますが、現在の関心は薄いのではないかと思うのです。その原因は、弱い人、病気の人、障がい者などをお世話しているから環境問題なんかやっている余裕はないよという気持ちや、それは行政や企業がやれば良いのだという気持ちを持っているところにあると思います。
障がい者や高齢者、難病患者等の仕事を環境分野で作ることができます。7月中旬に、イギリスの障がい者などの仕事作りの現場を見てきました。例えば、中古の自転車のリサイクルをロンドンのイーストエンドという貧民街でやっていました。そこに事務所を構えて障がい者や刑務所から出た人の仕事場づくりをしているのです。中古の自転車を買ってそれを手入れして販売している。今年度の収入は2億3,000万円を上げると言っていました。これは大変進んでいます。ロンドンにあるバークレイズ銀行がこの施設を全面的にバックアップしているそうです。私は釜ケ崎での支援活動をやっています。釜ケ崎にこのようなリユースをやっている事業所があるのですが、今一つ伸びないので、ロンドンの事業を勉強して儲かるように、とハッパをかけているのです。
社会福祉法人において再生可能エネルギーをどう利用したら良いでしょうか。福祉施設には大きな施設や敷地を持っている所があります。また、非常に環境の良い所にあり、太陽光や風力、バイオマス発電もできるという有利さがあります。その発電によって施設を利用される人のケア向上にも役立っている事例は多いです。例えば飯能市のグループホームでは太陽熱による床暖房をして光熱費を低く抑えています。鹿児島南大隅町の歴史ある大きな施設では、日がよくあたる南面で、太陽熱の発電を古くからやっています。
次に説明のある北陸グリーンエネルギー研究会による廃アルミを使った発電において、障がい者の仕事づくりになるのではないかと現在模索をされています。木材のペレットについても、その次にさいかい産業から説明がありますが、大変有望なやり方だと思います。福島県の西郷村にある川谷保育園でも太陽熱をうまく利用した保育を試されていると聞いています。
経営者の立場になってみると電気代や光熱費の値上がりは無視ができなくなってきました。私が理事長を務める済生会の施設では平均6〜7%は水道光熱費です。福祉施設の利益の幅は大きくて1〜2%というなかで、水道光熱費を節減すると1〜2%の利益を得ることが可能になります。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度や排出量取引も現在は東京都や埼玉県で行われており、規模の小さい福祉施設も将来このような制度の活用が可能になってくると思います。
エネルギーの地産地消によって地域も発展します。地域の資源である森林、川、温泉をうまく利用していけば地域おこしになります。環境や再生可能エネルギーとそして福祉事業を結びつければ、一つの地域ブランドとして売り出せるのではないかと思っています。