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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第104回 海外農地投資とバイオマスの関係について

  • 2012年9月13日

特集/シンポジウム報告 海外農地投資の現状とバイオマスの持続可能な利用  第104回 海外農地投資とバイオマスの関係について

 バイオマス、バイオ燃料は、上手に使えばよいのですが、必ずしも環境によくないこともある。あるいは社会的なさまざまな問題をはらんでいるものもある。上手に使うと地域振興にもなるし、生物多様性保全にもつながる。上手な利用をしながらバイオマス、バイオ燃料を推進し、利用を考えていく必要があるということを、このシンポジウム主催3団体は、調査研究し、広報や提案してきています。

 バイオマスとは、生物由来の有機資源です。廃物系としては、建築廃材、製材廃材、生ごみ、食品廃棄物、下水汚泥、家畜糞尿など、それから農業残さや資源作物。とくに問題になっているのが資源作物で、トウモロコシ、サトウキビ、ナタネ、アブラヤシ、大豆などです。これらは食料にもなるもので、食料との競合の問題が生じ得ます。それから木質、例えば林地残材などです。

 バイオマス、とくに資源作物の生産には、土地が必要です。バイオマスは、不適切な利用を行うと森林などの生態系を破壊し、むしろ温暖化を促進し、土地をめぐる紛争や食料との競合、労働問題など深刻な社会問題を引き起こす恐れがあります。そのため、適切な利用についての知識と仕組みづくりが不可欠だと思っています。

ランドラッシュとは

 ランドラッシュの概要ですが、バイオ燃料、食料、炭素クレジット獲得などを目的とする大規模な土地取得のための投資ということで、ここ数年目立っています。世界的に大きく行われ、日本の企業が何らかの形で関わっているケースもあります。これがどういう問題をはらんでいるのか。バイオマス、バイオ燃料の対象になっているものもあります。2010年9月に世界銀行が発表したレポートでは4,460万haという日本の国土を超える面積が投資対象になっており、そのうちの2割がバイオ燃料ということです。

 安価もしくは無償で数万ha単位の農地が所有移転、賃貸される。その中には地域住民に十分な情報提供がなされなかったり、住民の合意なしで進められ、土地に対する権利が尊重されず、立ち退きを求められるケースも多数発生しているということです。そこでこのバイオマス、バイオ燃料の持続可能性がとくに2008年のG8洞爺湖サミットで話題になり、今、国際的な基準づくりが進んでいます。

 日本でも、バイオ燃料の持続可能性基準が施行されています。また、日本も参加している世界バイオエネルギーパートナーシップ(GBEP)という組織があり、2011年5月にバイオエネルギーの持続可能性指標をまとめました。環境、社会、経済・エネルギー保障という三つの分野にわたり24の指標をあげています。特徴は、社会分野を重視している点です。というのは、日本で施行されたバイオ燃料の持続可能性基準には、この社会的な項目が入っていないのです。日本の基準は、一つは温室効果ガス排出が化石燃料に比べて50%以下でなければいけない、もう一つは食料競合および生物多様性に対する影響について配慮するというものです。

 GBEPの指標の社会分野の最初にあるのが、土地分配と土地所有権です。このバイオマス、バイオ燃料の社会的な問題としてクローズアップされているのが、この土地分配と土地所有権の問題であるということです。

 経済産業省は、日本国内でエタノールを作るのが難しいので、開発輸入で50%以上を賄うのが一つの方向性であるという方針を打ち出しています。日本の導入目標値は小さいですが、海外でエタノールを生産するとどういった問題が生じるのかについての議論が、必要ではないかと思います。

(グローバルネット:2012年3月号より)


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