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AIのおかげでクジラやイカと会話できる時代がやってくるかも

  • 2025年5月20日
  • Gizmodo Japan

AIのおかげでクジラやイカと会話できる時代がやってくるかも
Image: Shutterstock

伝説によれば、ソロモン王は神から授けられた指輪のおかげで、動物の言葉が理解できたそうです。

この話がどれくらい昔に作られたのかは分かりませんが、人類はずっと動物たちと会話がしたいと思っていたんだと思います。

だから、2002年にタカラトミーが発売した犬の鳴き声翻訳機の「バウリンガル」は大ヒット。イグノーベル賞平和賞まで受賞したほどでした。

もちろん、動物の主張を会話レベルで理解したいという人間の飽くなき探究心は、「バウリンガル」で終わりません。AIが発達した今、むちゃくちゃ進んでいるんです。

クジラとの対話を目指すProject CETI

研究者が目指しているのは、「うれしい」「悲しい」「お腹すいた」レベルをはるかに超えた異種族間会話。

その最前線であるProject CETI(Cetacean Translation Initiative)は、ドミニカ沖で収録されたマッコウクジラのクリック音(コーダ)約8,000件を機械学習モデルにかけ、音の並びに文脈的・構造的パターンを発見しました。

音楽でいう「ルバート(テンポの揺れ)」や「装飾音」のような要素も見られ、研究チームはクジラの音声にある種の音素的アルファベットが存在する可能性も指摘しています。言語そのものではないかもしれませんが、これまで考えられていた以上に、洗練されたコミュニケーション手段が存在しているらしいのです。

Google×イルカ=DolphinGemmaの誕生

イルカの世界では、Google DeepMindとWild Dolphin Projectによる共同研究のDolphinGemmaが進行中です。

イルカと話せる日が来るかも…Googleがイルカ語を解析するAIを開発 海にいるイルカと地上から話せるようになったらいいのに(泳げないのよ)…。もしイルカが「言葉」を持っていたとしたら、会話ができるのでは? Google(グーグル)と研究者たちは、長年の問いに本気で挑んでいます。40年分のデータでAIがイルカの会話を解析AIがイルカの「おしゃべり」を理解して、そしていつか「会話」ができるようになるかも。そんな未来を目指して、Googleは野生のイルカから集めた音声デ https://www.gizmodo.jp/2025/04/google-develops-ai-interpret-dolphin-language.html

40年分のイルカの発声データを学習した大規模言語モデル(LLM)で、人間のChatGPTのようにイルカの音から次に来る発声を予測したり、イルカに似た音声を生成したりできます。

この技術は、スマートフォンベースの双方向インターフェースCHAT(Cetacean Hearing Augmentation Telemetry)にも活用されており、イルカが海草やスカーフをリクエストする実験も行われています。

これは、まさにAIを介した実質的な異種間コミュニケーションの萌芽といえるでしょう。

以前からイルカの知能の高さは注目されており、イルカと人間の間に特別な関係を感じている人も多くいます。AIはそうしたつながりの可能性をさらに後押ししてくれているのです。

身近な動物の言葉ももちろん研究対象

ミシガン大学の研究チームは、人間の音声認識モデルWav2Vec2を使い、イヌの鳴き声から感情、性別、犬種、個体識別までを予測する実験を行ないました。

結果として、人間の音声に基づいて訓練されたモデルのほうが、イヌ用に専用設計されたものよりも高い精度を発揮したといいます。

また、2022年に発表されたフランス パリ ナンテール大学の研究では、ネコが飼い主の声を識別し、「ネコ語」で話しかけられた場合に強く反応することが確認されました。

ネコは「何を言われたか」よりも、「誰がどのように話しかけたか」をしっかり認識しているといいます。

イカの声も対象に

コウイカに関する研究では、彼らが互いに対して、あるいは人間による再生映像に対して特定の波のジェスチャーを用いることがわかってきました。

研究者たちは、これらの動作をAIで分類・追跡し、表現の文脈を解析するアルゴリズムを開発中とのこと。

イカの言葉がわかるようになったら、イカ刺しとか食べられなくなっちゃうな…。

動物版Google翻訳はできるのか

こうした研究の先にあるのが、地球上のすべての種の「音声」をつなぐ構想です。

この構想を追うのがEarth Species Project。彼らは今年、NatureLMという新たな音声言語モデルを公開予定です。

NatureLMは、人間の言葉、動物の鳴き声、環境音、さらには音楽までをも学習対象として、人間の言葉を動物の音に変換する技術の開発を目指しています。

開発チームは、AIの中には種を超えて共有可能な「表現の構造」(shared representations)が存在するという仮説を立てて、実証を進めています。

メリットばかりではない

動物の言葉がわかるようになる可能性があるのはうれしいことですが、メリットばかりではありません。

例えば、先ほど私が感じた「食べられなくなっちゃう」もそう。人間は動物の命をいただいています。会話が成り立ってしまったら、食べる/食べられるの関係は崩れるのではないでしょうか。

また、テクノロジーへの過度な依存と、擬人化することで発生するであろう多くの誤解も懸念されています。

私は動物好きの父から「動物は話せないのだから人間がしっかり観察してケアしてあげないといけない」と教わって育ちました。健康管理はもちろんのこと、幸せだと感じてもらえているかどうかまで人間側が慮る必要がある、ということです。

でも、会話ができるようになったら、手抜きするようになるかもしれません。

動物行動学者のChristian Rutz氏は、「音の意味を理解するには、生態学的な注釈や文脈情報が不可欠であり、AIだけで全てを解読できるわけではない」と警告します。

会話できるから話すのではなく、会話が本当に必要かどうかも考えなければならないでしょう。

ソロモン王は指輪の力によってあらゆる命を支配した結果、孤独や試練を味わうことになった、という教訓を伝えています。

人間が動物と会話できるようになったら、その先にあるのはどんな世界なんでしょうね。

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