世界初のコード展開可能なバイオコンピューターだそうです。
オーストラリアのスタートアップ企業「Cortical Labs(コーティカルラボ)」は、「脳みそ(神経細胞)を内蔵するコンピューター」を販売しようと試みています。価格は約3万5000ドルで、日本円にするとおおよそ521万円(2025年3月現在)。マシンにはさまざまな情報を学習させることが可能です。
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このコンピューターの開発に6年の歳月を費やしているCortical Labsは、その詳細をオンラインメディア「New Atlas(ニューアトラス)」に公開しています。神経細胞を活用した本コンピューターは「CL1」と呼称され、今年後半にも出荷をする予定なんだそう。
New Atlasの記事は、Cortical Labsの最高科学責任者ブレット・ケイガン氏のインタビューを中心に構成されています。同氏によると、CL1は、実験室で培養されたニューロンを平面に並べた電極の上に配置することで動作するとのこと。59本の電極に接続された人工脳組織は、安定した神経ネットワークを形成。これらはすべて「生命維持ユニット」に制御されながら、独自のソフトウェアシステムと繋がります。
Cortical LabsのCEO ホン・ウェン・チョン は、ロイターのビデオで以下のように語りました。
「CL1は心臓のようなポンプや排泄機構、栄養を供給するリザーバー、腎臓のようなろ過装置といったシステムを完備しています。さらに、供給される空気も成分を調整したものです。」
ディストピア感あるCL1のマーケティングはどこか不気味。
「ニューロンは健康状態を維持するために必要なもの全てが供給され、栄養豊富な溶液の中で培養されます」「ニューロンはシリコンチップの上に成長し、そこから電気信号の送受信を行います」といった文言が記載されています。
ところで、このマシンの応用例として、Cortical Labsは数年前に初期バージョンのCL1に卓球のゲーム『Pong(ポン)』を遊ばせることに成功しています。CL1のストロングポイントは、デジタルAIシステムと同等以上のパフォーマンスを発揮できる点です。
ケイガン氏は New Atlas に対し、「120台のCL1があれば、知能の起源を解き明かす実験ができる」「学習についてタンパク質レベル、遺伝子レベルで分析ができる」と語ります。
しかし、『Pong』を学習する技術の開発は他でも進んでおり、昨年には レディング大学の研究チームがイオン性電気活性ポリマーハイドロゲル、すなわちゲルの塊に『Pong』をプレイさせることに成功したという論文を発表しています。科学者らは、ゲルに対して痛みを感じさせる方法を見つければ、さらに上手にゲームをプレイさせることができると語りました。
ニューラルネットワークの応用はロマンがあるものの、同時に得体の知れない不気味も感じます。
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