「カセットテープ」でDJする人の集まりに行ってみた

  • 2025年3月18日
  • Gizmodo Japan

「カセットテープ」でDJする人の集まりに行ってみた
Photo: 小原啓樹

私たちの記憶やクリエイティビティをアーカイブしてくれるメディアがその役目を終え、表舞台から姿を消す機会も近年多くなってきました。

先日も一世風靡したソニーのミニディスク(MD)の生産終了が告げられ、別れを惜しむ声もたくさん聞かれました。

こうした一世代前のメディアは当時の魅力を知っていた人からすれば、ノスタルジーを誘うものでもあり、同時に「未だ現役で使いたい」「コレクションしたい」と思わせてくれるような遊び心くすぐるものでもあります。

時には熱狂的なファンによる草の根活動のおかげで、役目を終えたはずのメディアに再び脚光が当たる機会も。もっと言えば、メディアを機能させるAV機器そのものの進化によって、過去にはなかった新たな魅力が引き出されることもあります。

そんな新しい魅力を今人気が再燃しているカセットテープに与えてくれるのが、「カセットテープDJプレイヤー」です。

「カセットテープDJプレイヤー」とは?

この「カセットテープDJプレイヤー」をつくったのは、カセットテープを駆使したDJで、巷のクラブを賑わせる大江戸テクニカさん。なんと彼は「カセットテープDJプレイヤー」を自身の手で製作し、しかも実際のクラブの現場で活用しているといいます。

そもそも「カセットテープDJプレイヤー」とはどんな代物かというと、文字通りカセットテープでDJプレイを可能にするための装置のこと。これだけ聞いても、あまりピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。

まずはその実物を見ていただきましょう。

シックな見た目で、一見すると近未来っぽさも感じられるこの装置。カセットテープのリールの巻き取り部分もあり、本体下部には再生ボタン、巻き戻し・早送りボタン、停止ボタンと、カセットテーププレイヤーには欠かせないボタンが配置されているのが確認できます。

一方で、一般的なカセットテーププレイヤーには見られない部分も。ボタンの並びには、表面に「Q」と書かれた謎のボタンが。また本体左上には、回転式のノブがついている様子。そして本体上部にはモニターがあり、「STAND BY」と表示されています。

さらには、2つの丸い円盤のようなものも付属。レコードスタビライザーのような見た目をしていますが、一体どのような用途なのでしょうか…?

「カセットテープDJプレイヤー」の使い方を詳細に解説する動画も

この動画では、この「カセットテープDJプレイヤー」をどのようにして操作するのか、詳細に解説してくれています。

電源プラグと、DJミキサーにつないだ音声出力ケーブルを取り付ければ、すぐに音が鳴らせる状態に。カセットテープをセットし、再生ボタンを押すと、音が鳴り始めます。

謎の「Q」ボタンは、カセットテープでスクラッチをする際に利用するためのもので、丸い円盤は「スクラッチ用ハンドル」という名称だそう。つまり、両方ともカセットテープでスクラッチを実現するために必要なもののようです。

動画には、大江戸テクニカさんが実際にスクラッチする様子も収められています。とても手慣れていますが、「Q」ボタンを押し続けながら2つのハンドルを同時に操らなければならないため、一筋縄ではいかなさそう。

本体左上のノブは、テープの再生スピードを変更するためのもの。ターンテーブルのピッチフェーダーと同じ役割を果たしています。

しかもこのピッチフェーダーがかなりハイテクで、ピッチを変更する際、ノブを押し込むことで増減したいBPMの数字の桁を変更できるようです。

この解説動画を見ているだけでも、「ちょっと間近で見てみたい…」と思っちゃいます。

実際のカセットテープDJの現場に潜入!

というわけで、「カセットテープDJプレイヤー」が使われているクラブの現場を目撃しに、ミュージックバー「阿佐ヶ谷DRIFT」でのイベント「阿佐ヶ谷カセットテープDJサミット」に潜入しました!

今回潜入したこちらのイベント、Vol.20ということで、なんとすでに20回も行なわれているとのこと。平日(しかも月曜日)の夜にもかかわらず、とても賑わっていました。

本イベント主催はもちろん大江戸テクニカさん。イベントのトップバッターとして登場し、バキバキのヴェイパーウェイヴ〜フューチャーファンクを中心にプレイ。

解説動画で見せていたスクラッチも披露してくれました。

続いて、DJブースに入ったUME CHANGさんは、シティポップや昭和歌謡の流れを汲んだ、カセットテープならではのDJプレイで会場を魅了します。

ここまで聴いていながら気づいたことは、通常のカセットテーププレイヤーで再生した時に聴かれるような「シーッ」というノイズがなく、とてもクリーンかつ聴き心地良い音が流れているということ。「カセットテープDJプレイヤー」の音質の良さに気付かされました。

3番手としてプレイしたのは、hadjidpさん。ドナ・サマーや久保田利伸など、80年代のディスコ〜ファンクチューンを矢継ぎ早にかけていくと、フロアのテンションもどんどん高まっていきます。

次々に曲をかけながらも、カセットテープのケースのジャケット側を、フロアのオーディエンスに見せるようにポンとラックに置くhadjidpさん。思わずその所作に目が行きます

そしてここでスペシャルゲストとして登場したのが、我らがギズモード・ジャパン編集長、尾田和実! 先日レビュー記事で紹介したフランス生まれのピンクミキサー「Bébé Chérie」をはじめ、さまざまなガジェットを携え、DJブースに。

山下達郎やダイナソーJr.、ナズにソールトなど、ジャンルを縦横無尽に駆け巡るプレイで魅了します。「Bébé Chérie』でミキシングした野太い音も聴き応えたっぷりでした。

尾田の流れを引き継いだtakuchiさんは、サントリーウイスキーのCMソング「ウイスキーが、お好きでしょ」や、アナウンサーがニュースを読み上げる音声をドープなヴェイパーウェイヴ仕立てにした音源など、異色のプレイを披露。

そのプレイした音源のほとんどが、オリジナルで作られたミックステープ(今で言うサブスクリプションサービスなどで各々が好きな楽曲を集めたプレイリスト)に収録されているものだったこともあり、カセットテープでDJする奥深さを実感できた瞬間でした。

この異色のプレイに続いて、今度は山口工業さんがジャズ・ボッサ〜ラテンジャズノリのプレイで魅せてくれます。終盤、ザ・ビートルズの名曲「イエスタデイ」のジャズリミックスを3連続違ったバージョンで流すと、フロアからはシンガロングも聞こえてきました。

ここでふと気づいたのが、皆さんそれぞれがたくさんのカセットテープを持ち運びできるケースを持参しているということ。アタッシュケースのようなものもあれば、木製のケースもあり、思い思いのケースでカセットテープを持ち運びしているのが印象的でした。

本イベントを締めくくったのは、DJ YEWさん。ターンテーブリスト顔負けのスクラッチで、RUN DMC、ジュラシック5、NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDなど、誰もが知るヒップホップソングを次々につないでいきます。その高い技術に、フロアも大盛り上がり!まさに最高のクライマックスとなりました。

実際に「カセットテープDJプレイヤー」がクラブで活用されている現場を訪れてわかったことは、カセットテープには現代の音楽好きを熱狂させる魅力が十分にあるということ。そして、その魅力をより際立たせているのが「カセットテープDJプレイヤー」であるということです。

さまざまな音楽の趣味を持った人たちが各々の嗜好に刺さるカセットテープをコレクションすること自体、アーカイブ性もありとても有意義なことのように感じられます。そして、そのカセットテープを「カセットテープDJプレイヤー」を駆使してクラブの現場でかけることで、「今」に活かすことができる。

もしかすると、「カセットテープDJプレイヤー」は過去と現在をつないでくれる架け橋のような存在なのかもしれません。

今後のイベントはこちら!

3/23(日)、町田Nutty'sで開催される7inch早川さんの7周年記念イベントでカセットテープDJやらせていただきます!!
ぜひお越しを

ライヴ&Djイベント
『7inch早川と愉快な仲間たち』
3/23(日)
町田Nutty's
16:30open.start
前売り¥3000+1D
当日¥3500+1D pic.twitter.com/WUNq4jfaX9

— 大江戸テクニカ (@ooedotechnica) March 17, 2025

3月24日(月)阿佐ヶ谷DRFTにてカセットテープDJサミット vol.21を開催します!
今回はスペシャルゲストでトラハピよりShandyさんとがんばれ!あかりちゃんさんにご出演いただきます
ぜひお越しを!!
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カセットテープDJサミット vol.21
START - PM : 19:30 - PM : 23:00(予定)@AsagayaDrift pic.twitter.com/S2S62XHuZZ

— 大江戸テクニカ (@ooedotechnica) March 10, 2025

Photo: 小原啓樹

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