まさに太陽光発電の「万里の長城」。スケールがデカい。
内モンゴル自治区のクブチ砂漠で、約800km離れた北京へ電力を送るための巨大な太陽光発電施設が建設中です。2030年の完成を目指して進められているこのプロジェクトは、まさに太陽光発電の「万里の長城」と呼ばれるにふさわしいスケールの大きさ。また、砂漠の緑化にも貢献する可能性を秘めているそうですよ。
かつては「死の海」と呼ばれ、不毛の地とされていたクブチ砂漠ですが、いまや「太陽光パネルの海」へと大変身を遂げようとしています。
Image: Michala Garrison / NASAアメリカ航空宇宙局(NASA)が捉えたトップ画像のビフォーアフターぶりを見ればわかるとおり、何もなかった広大な砂漠に太陽光パネルがガンガン設置され、再生可能エネルギーの主要拠点として脚光を浴びつつあるんです。
超巨大な太陽光発電施設は、完成すれば全長400km、幅5キロkmにも及び、最大容量は100ギガワットを見込んでいるのだとか。現時点で、すでに5.4ギガワット分の発電能力が整備されているそうです。
この太陽光発電版「万里の長城」は、2030年までに年間約1800億kWhの発電が期待されているそうで、それが実現すれば北京の年間電力消費量である約1358億kWhをすべて満たしてお釣りがくることになります。
クブチ砂漠のロケーションもかなり魅力的とのこと。包頭市とバヤンノール市(巴彦淖爾市)の間、黄河の南に広がる砂丘地帯は、日照時間が長く、地形も平坦で、しかも産業の中心地にも近いという、太陽光発電施設建設に最適な条件が整っており、効率的な発電と電力供給につながると考えられています。
また、この大規模プロジェクトは、発電だけでなく砂漠の緑化にも貢献できると期待されています。太陽光パネルが風の勢いを和らげることで、砂丘の移動を防ぎ、砂漠化の進行を抑制できる可能性があるとのこと。
さらに、太陽光パネルの下にできる日陰によって水分の蒸発が抑えられるため、牧草などの栽培にも良い影響を与えるとみられています。
Global Energy Monitorの調査によると、2025年2月時点における中国の太陽光の発電容量は447.5ギガワットで、世界全体の48.4%を占めています。これに対し、第2位のアメリカは121ギガワット(13.1%)、第3位のインドは72ギガワット(7.8%)、第4位の日本が31ギガワット(3.4%)と、中国が完全にぶっちぎっている状況です。
成長速度を比較しても、2017年から2023年にかけて、中国の太陽光発電容量は年平均40ギガワットという驚異的な成長を遂げたのに対し、同期間のアメリカが年平均8.1ギガワット、日本が1.4ギガワットの成長に留まっているのをみると、中国の太陽光発電導入のすさまじさが際立ちます。
パリ協定の目標を達成するための最短ルートは、化石燃料を再生可能エネルギーに置き換えること。太陽光や陸上風力の発電コストが、化石燃料よりも安くなったこともあって、世界的な太陽光ブームは続くと思われます。
日本も例外ではありません。経済産業省の試算によると、2023年の時点ですでに事業用太陽光発電のコストがもっとも低く、天然ガス火力の約半分になっています。住宅用太陽光発電も、天然ガス火力より安いのが現状です。
また、2040年には再エネのコストがさらに下がるため、火力発電は完全に競争力を失います。「再エネは高い」はすでに神話になりつつあります。つまり、太陽光発電は、気候だけじゃなく、私たちのお財布にもやさしい電力ということになりますね。再エネを増やして火力発電を減らせば、家計を圧迫する電気代も下がっていくでしょう。
そんなわけで、今から数年後には、トップ画像に見られる砂漠の空白部分が太陽光パネルで敷き詰められているかもしれませんね。
Source: NASA Earth Observatory
Reference: SciTech Daily, Popular Mechanics, Global Energy Monitor, IRENA, 経済産業省
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