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シロアリの巣に棲むハエ幼虫、その知られざる生存術

  • 2025年2月18日
  • Gizmodo Japan

シロアリの巣に棲むハエ幼虫、その知られざる生存術
Photo: Roger Vila

クイズです。ハエの幼虫はどうやってシロアリの巣でバレずに住めるのでしょうか?

答えは、ハエの幼虫のお尻は、シロアリの頭の形だから!どういうことかと言いますと、モロッコの国際研究チームが、シロアリのコロニーの中で生存し、繁栄しているクロバエの幼虫を発見しました。

この新種と思われる幼虫は、侵入者を素早く八つ裂きにすることで有名な兵隊アリを回避するために、びっくりするような進化を遂げていました。シロアリの頭の形をしたお尻、触角のような触手、そしてコロニー特有の匂いを模倣する能力を持っていたのです。この戦略は見事に成功していて、研究チームはシロアリがハエの赤ちゃんの世話を騙されてしている様子を観察しています。

偶然の発見

実は偶然の発見だったんです。私たちの研究グループは主に蝶とアリを研究しています。雨がたくさん降って蝶が飛んでいなかったため、アリを探していました。石を持ち上げたとき、これまで見たことのないハエの幼虫3匹がいるシロアリの巣を見つけたんです。

と、スペインの進化生物学研究所の生物学者Roger Vila氏がスペイン国立研究評議会の声明で述べました。

これは極めて珍しい種に違いないと思いました。なぜなら、その地域でさらに3回調査を行ない、何百もの石を持ち上げましたが、唯一見つけたのはひとつの別の巣で2匹のハエが一緒にいるところだけだったからです。

と説明しています。

シロアリを模写する体の作り

学術誌Current Biologyで発表された今回の研究論文によると、研究チームはクロバエの幼虫の後部に「シロアリのマスク」と呼ばれるものを確認したそうです。なにも機能しない触角と触肢がついたシロアリの頭と同じ形をした付属器で、これはすべて大型のシュウカクシロアリのものと全く同じ大きさでした。さらに驚くべきことに、幼虫の呼吸孔はシロアリのマスクの目に見えるようになっていたのです。

ほとんどのシロアリは数mの深さに生息しているので、視覚的な認識能力がありません。しかし、シュウカクシロアリは夕暮れ時に草を集めるために外に出てくるため、機能的な目となっています。ハエの幼虫は呼吸孔で、その目の形状を真似することができるのです。

とVila氏は説明しています。

シロアリの匂いも模倣

シロアリは同じコロニーのメンバーのことを、触角を使って互いの匂いを嗅ぎ、触れ合うことで識別しています。そして、ハエの幼虫たちはこのことを知っていたのです。Vila氏のチームは、幼虫の体に多数の触角のような触手があることも確認しており、これは複数のシロアリと同時にコミュニケーションを取る(というか騙す)役割をしていると考えられます。さらに、幼虫はシロアリの匂いさえも模倣する技も持っていたのです。

ハエの幼虫の化学組成を分析したところ、驚くべき結果が得られまし。幼虫は生息しているコロニーのシロアリと区別がつかない、まったく同じ匂いなのです。さらに、特定のコロニーのハエの幼虫とシロアリには、他のシロアリの巣とは異なる微妙な化学的プロファイルの違いがあります。この匂いは、シロアリと交流し、共同生活から恩恵を受けるための重要な要素です。これは化学的な変装といえます。

とVila氏は述べています。

ハエの幼虫たちは恩恵を受けていることは確かなようです。研究者たちが幼虫とシロアリのコロニーを研究室に移したあと、幼虫たちは通常、シロアリの巣の中で最も往来の多い場所に留まっていることに気づきました。騙されたシロアリの宿主たちが幼虫の毛づくろいをし、さらには餌を与えていたことが伺えます。ただし研究チームは、シロアリの行動についてはさらなる確認が必要だとしています。

環境を変えたら死んでしまった...

さらに、

私たちが研究した幼虫は最終的に変態することなく死んでしまいました。そのため、巣の中の要素や、シロアリとハエの間の共生関係の中には、研究室に移すことができなかった何かがあるのかもしれません。そこにいたハエの幼虫の食性は現在も不明で、成虫の姿も謎のままです。

とVila氏は説明しています。

研究チームは、コブバエもまた擬態行動を示すことに注目しましたが、ひとつ大きな違いがありました。コブバエは幼虫期ではなく、成虫の段階でシロアリを「騙す」のです。さらに、

クロバエとコブバエの共通祖先は1億5000万年以上前にさかのぼり、これはヒトとマウスを分ける時間よりもはるかに長いものです。したがって、私たちは社会的統合進化の新しい事例を発見したと確信しています。

とVila氏は述べています。

また、クロバエ科の中でこの新種のクロハエがRhyncomya属に属することが研究チームによって判明しました。チームは、このような独特な「生活様式」を示す他のRhyncomya属のハエを知らないため、この種が急速に進化したものであると推測しています。

最終的に研究チームは、シロアリのなかで変装して生活するクロバエを観察した最初の事例であるとも主張しています。シロアリを騙せるほどの容姿と匂いまで獲得するまでに、どれだけ多くのハエの幼虫たちが兵隊アリに八つ裂きにされたのか想像を絶しますが、改めて進化やサバイバルスキルの凄さを思い知らされますね。

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