AIがすべてコントロールする未来を、と。
世界的ソフトウェア会社、Oracle(オラクル)の創業者で資産総額世界4位(2月5日時点)のラリー・エリソン氏は近頃、ますますSFの悪役みたいになってます。彼は先日行なわれた世界政府サミットで各国政府に対し、彼らの扱うデータすべてをAI産業に注ぎ込むよう呼びかけました。それこそが長期的に各国の利益になるのだという主張です。
Bloombergによれば、ドバイで行なわれた世界政府サミットで、エリソン氏は英国の元首相、トニー・ブレア氏からの質問を受けていました。エリソン氏は世界のリーダーに対し、国家のデータを「統合」し、それをAIモデルに流し込んでいくべきだと促しました。Bloombergには以下のようにあります。
国民の健康や農業、インフラ、政府の購買や国境関連の分散しているデータセットは、ひとつの安全な、AIモデルがアクセス可能なデータベースに統合されるべきだとエリソン氏は言う。…豊かな国民に関するデータセットを持つ英国やアラブ首長国連邦(UAE)のような国々は、このアプローチでコストを削減でき、公共サービス、特にヘルスケアを改善できるだろうとエリソン氏は言った。
一般論としては「へ〜」ですけど、エリソン氏が大株主でもあるOracleは、まさにそんなデータベースの会社で、AIビジネスでもうかる会社です。「我々は高品質なサービスを提供し、政府の多大なコスト削減に貢献します。国民はより健康になり、政府は少ない費用でよりよい成果が得られます」とエリソン氏は聴衆に訴えました。
でも、政府があらゆるデータをAIに突っ込んでいくと、普通の人の生活はどう変わるんでしょうか? エリソン氏のビジョンは、今まで映画や小説で描かれ恐れられてきた監視社会そのものです。
2024年9月、エリソン氏はOracleの金融アナリスト向けミーティングで、AIを基盤とする監視国家の興隆を予言していました。ロボットや自動システムが全国民を監視し、コントロールする社会です。
我々はスーパービジョンを手に入れるのです。すべての警察官は常に監視され、何か問題があったら、AIがそれをしかるべき人物に報告します。市民も行儀よくふるまうようになります。なぜなら我々が常にすべての出来事を記録し、報告しているのですから。
…これが、テック億万長者の夢なんですね…。
同じミーティングで、エリソン氏はAIやロボット技術が今後政府のさらなる国民コントロールを可能にするという一例を挙げました。彼は犯罪者と警察のカーチェイスを例に挙げ、もう人間の警察官も要らないとばかり、「ドローンに車を追跡させればいいのです」と言いました。「自律ドローンの時代には、きわめて簡単なことです」。
ただ、人間は毎日24時間行儀よくふるまえるものではありません。ちょっと羽目を外したとき、エリソン氏の理想社会ではどんなことになるんでしょうか? 社会の調和を乱す存在として、ドローンに殺処分されてしまうんでしょうか?
エリソン氏の言葉にそのまま共感する人は多くないかもしれませんが、彼らが煽るAI中心の流れを止めるのはますます難しいように見えます。米国ではドナルド・トランプ政権がAI業界にオールインして、米国のAIビジネスで世界を支配しようとしています。エリソン氏のOracleは、米国中にAIデータセンターインフラを張り巡らせるスターゲイト・プロジェクトへの参画を発表しました。OpenAIやMicrosoft(マイクロソフト)、NVIDIA、それにソフトバンクも入ってる、あのプロジェクトです。
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