未知の脅威とはこのこと…。前例がない気温上昇に専門家も困惑

  • 2025年2月16日
  • Gizmodo Japan

未知の脅威とはこのこと…。前例がない気温上昇に専門家も困惑
Image: C3S/ECMWF 2025年1月の世界平均気温偏差(基準年: 1991〜2020年)

温暖化はますます説明できない領域に入ってきたようです。

2024年の世界平均気温は、産業革命前比の気温上昇を1.5度未満に抑えるというパリ協定の目標をあざ笑うかのように、1.5度どころか1.6度上昇しました。でも、2024年はちょい強めのエルニーニョ現象の年で、弱いながらラニーニャ現象にシフトした今年は気温が下がるだろうと予測されていました。

が、2025年1月の世界平均気温が、なぜかエルニーニョ全開だった昨年の同月を上回る観測史上最高を記録してしまったんです。もう意味不明で挙動不審になるレベルですよ。

産業革命前比+1.75度の衝撃

Image: C3S/ECMWF 世界平均気温偏差の推移(基準年: 1850〜1900年)

EUの気象機関であるコペルニクス気候変動サービス(C3S)によると、2025年1月の世界平均気温は、産業革命前(1850〜1900年の平均)の水準を1.75度上回る観測史上最高を記録しました。昨年1月よりも気温が0.09度高くなったそうです。

1カ月の平均気温が過去最高を更新したからといって、大騒ぎする必要はありませんが、パリ協定の目標(2度)と努力目標(1.5度)の中間まできたのは、象徴的な意味合いを持ちます。

過去19カ月のうち18カ月が過去最高を記録

また、2023年7月以降の過去19カ月のうち、昨年7月を除く18カ月で過去最高を上回る高温が続いており、温暖化の進行を如実に表しています。しかも、そのうちの12カ月間は、産業革命前の水準を1.5度以上上回っています。

ヨーロッパ中期気象予報センター(ECMWF)の気候戦略リーダーであるSamantha Burgess氏は、プレスリリースで次のように述べています。

「2025年1月もまた驚くべき月となりました。熱帯太平洋でラニーニャ現象が発生し、一時的に地球の気温が低下したにもかかわらず、過去2年間に観測されたような記録的な高温が続いています」

エルニーニョ翌年の1月が過去最高になったのは初

これは以前から懸念されていたことなのですが、昨年5月にエルニーニョが終わってから8カ月たつというのに、まだ気温が高止まりしたまま下がる気配を見せないのは心配です。

現在、世界はエルニーニョの真逆にあたるラニーニャ現象の影響下にあります。赤道太平洋の海面水温が高くなるエルニーニョに対して、ラニーニャは同海域の海面水温が低くなるため、世界平均気温も平年より低くなる傾向があります。

なので、通常、エルニーニョからラニーニャに移行した年の1月の平均気温が、エルニーニョがフルスイング状態だった前年を上回ることはないんです。ないはずなんです。理屈的にあってはいけないはずなんです。

どれくらいないはずのことが起こっているのか、気候科学者のZeke Hausfather氏が分析しています。

Slight correction: the original graph has in incorrect y-axis label; the data is plotted relative to Berkeley Earth's default 1951-1980 baseline rather than an 1850-1900 one.

[image or embed]

— Zeke Hausfather (@hausfath.bsky.social) 2025年2月11日 11:53

このグラフは、エルニーニョとラニーニャ、ニュートラルの年における1月の世界平均気温を表しています。赤い丸がエルニーニョ、青い丸がラニーニャです。1950年以降、エルニーニョの翌年に1月の平均気温が前年を上回った例はありませんでした。

見ればわかるように、たいていの場合、エルニーニョ明けの1月はかなり気温が下がっています。真逆の現象が起こるので、それが自然な変動なんです。こんなことになったのは、今回が初めて。起こるはずのないことが起こる。もう慣れてきた感もありますが(慣れちゃダメです)、これが温暖化がもたらす未知の脅威なんですよね。

なぜ1月がこんなに暖かくなったのかはミステリー

イギリス気象庁のAdam Scaife氏は、BBCの取材に対して、1月の平均気温について次のように答えています。

「数カ月前に、2025年1月が昨年の1月と比べてどうなるかと尋ねられていたとしたら、私は『涼しくなるでしょう』と答えていたはずです。そうならなかったわけですが、その理由はよくわかりません」

アメリカ航空宇宙局(NASA)ゴッダード宇宙研究所のギャビン・シュミット所長は、2023年以降の暑さの大きな要因は人為的な温室効果ガスとしながらも、「2023年から今年初めにかけてなぜこれほど暖かくなったのか、温室効果ガス以外の要素も関係しています。私たちはそれを特定しようとしています」とBBCに話しています。つまり、シュミット氏も「わからん」と…。

2023年以降の想定外の暑さについては、温室効果ガスとエルニーニョ、太陽活動の活発化、フンガトンガ火山噴火の影響とともに、近年行なわれた船舶燃料の規制強化によって大気中のエアロゾルが減少したために、太陽エネルギーを宇宙に反射する役割を果たすはずの低層雲が減少し、アルベド(地球が太陽放射を反射する割合)が低下しまったことが一因なのではないかと考えられています。

また、米海洋大気庁(NOAA)でハリケーン科学の専門家として勤務し、民間の気象サービスWeather Undergroundを設立したJeff Masters氏もそれを捕捉するかのように、Yale Climate Connectionsへの寄稿で、1月は地表の反射率が通常よりも低く、より多くの太陽エネルギーを吸収したために平均気温が高くなったのではないかと説明しています。特に、ヨーロッパとアジアにおける雪の被覆が少なかったとのこと。

1月の世界平均気温が過去最高を更新してしまった理由については、今後明らかにされると思われますが、地球のヒートアップを止めるため、少しでも遅らせるためには、温室効果ガス排出量を減らしていくしかありません。

Burgess氏はBBCの取材に対してこう述べています。

「温室効果ガス排出の蛇口を閉めない限り、地球の気温は上昇を続けるでしょう」

Source: Copernicus

Reference: Copernicus, Zeke Hausfather / Bluesky, BBC, Yale Climate Connections

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