猿のせい? でも元を辿れば人間のせい?
人類は自分たちの住みやすいように環境を変えながら生きています。たとえば、海岸沿いの地域では堤防や胸壁を作って海水を止めたり、乾燥した地域の家にエアコンを設置したり...などなど。さまざまな対策をしています。
しかし、結局のところ自然の意思といったものには逆らえないもの。自然はそのことを私たちに思い出させてくれる出来事も多々起こりますよね。
そんな人間にはとめることができない「自然」を思い知ったのが、スリランカ。先週、1匹の猿によって国の電力供給を一撃でダメされたそうです。その結果、2200万人が暮らすスリランカで全国的な停電が起こってしまったのです。ちなみに、その日のスリランカの気温はなんと32度。
ガーディアン紙の報道によれば、スリランカのエネルギー大臣は「1匹の猿が送電網の変圧器に接触したことで国全体が停電になった」と考えているとのこと。
病院などの重要施設への電力復旧を急ぎましたが、多くの家庭では一晩中電気が復旧しないままだったそうです。
スリランカの全国的な停電の原因が猿の接触のみかどうかは実のところ不明ですが、電力供給の不均衡が送電網全体に連鎖的な問題を引き起こしてしまったようです。デイリー・ミラー紙の取材に応じたあるエンジニアは、「国家送電網が非常に脆弱な状態にあり、1本の送電線に問題が生じただけでも全国的な停電が頻繁に起きる可能性がある」と述べています。
これはスリランカだけの問題ではありません。アメリカでも専門家たちは、送電網が時代遅れで、AIデータセンターや電気自動車の充電による新たな需要増加に対応できていないと警告しています。
送電網は想定外の大きな需要変動にさらされており、停電や家電製品を破壊する可能性のある有害な電力サージが以前より頻繁に発生するようになっています。数十年前に送電網を設計したエンジニアたちは、何千人もの人が毎晩大型SUVを充電するような状況を想定して作っていないからです。
原子力発電は電力供給の増加を助けられますが、開発には何年もかかり、さらに送電能力を向上させるために送電網全体のアップグレードも必要となってきます。
トランプ大統領も先日、古い送電線に負担をかけないよう、新しいデータセンターを発電所の近くに設置すべきだと提案しています。
スリランカは歴史的にも森林が豊富な国で、もちろん多くの人が暮らしています。しかし近年の人口増加に伴い、急速な森林破壊が進んでいます。というのはつまり、人間が猿の生息地に侵入しているから、今回のようなことが起こったといえるわけです。
こうした観点を踏まえると、今回の停電は人間にとっては因果応報ともいえるかもしれません。猿は、スリランカ全土の町で食料を奪い、農作物を荒らすなど、スリランカの人たちを悩ませていることで知られています。
でもこれも、もともと住んでいたのは猿のほう。人間が類人猿に害を与えているのであって、その逆ではないと考える人も多いようです。