弾けろ、XR。
2025年2月7日〜11日までの5日間、XR(VR/AR/MR)の祭典「NEWVIEW FEST 2024」が開催されました。
今回で6回目となる本イベントでは、総勢約40組のアーティストによる、空間コンピューティングとAR(拡張現実)を用いた作品が展示。3次元空間での、クリエイティブ表現の可能性が模索されました。
XRを学ぶNEWVIEW SCHOOL卒業生の作品展示や、Apple Vision Proを使ったライブパフォーマンス、トークショーなど、XRカルチャーの最前線に触れられる催しが盛りだくさんだった「NEWVIEW FEST 2024」。
なかでも見逃せなかったのが、「NEWVIEW AWARD 2024」です。世界中から集まった95作品から厳選されたファイナリスト作品が一堂に会し、受賞作が決まりました。
今回フォーカスされたのは、「空間コンピューティングがもたらす現実世界の情報・空間・体験のリフレーミングと脱構築、そこから紡ぐ、新たな認知と変容するわたしたちの物語」。Apple Vision Proを使った「Spatial Computing部門」と、AR作品の「Site-Specific AR部門」の2部門が用意され、新たなXR時代へと向かいます。
ファイナリスト作品の展示会場となった渋谷PARCO地下1階のGALLERY Xでは、実際に作品を体験することができました。Apple Vision Proを装着し、いざ作品世界へ。
JACKSON kaki氏の『Bloom in Motion』では、空間上に置かれた木の周りに咲いた花を、自由に動かすことができます。
普段形を変えることのない花を、あり得ない方向へ引き延ばしたり、自分と同じ高さにまで持ち上げたり、現実と虚構が揺らぐような感覚に。
また、建野みどり氏の『Carrousel du Style』で楽しめるのは、着せ替え遊び。
中心に配置されたモデルを囲むように、服やアクセサリーが回転しています。体験者は、気に入ったアイテムを掴んでモデルに着せることができ、自分なりのコーディネートを楽しむことができるのです。
「VRは世界を変える」。そんなことが言われて久しいですが、皆さんにとって、VRやARは、どれぐらい身近なテクノロジーでしょうか。少なくとも、スマホやPCといったツールに比べて、まだ一般的に浸透しているとは言い難いように思います。
その理由って「何に使ったらいいかわからない」からだと思うんです。これは、ユーザー側のリテラシーの問題ではありません。おそらく、XRデバイスを「こうやって使うといい!」という具体的なユースケースが、まだ確立されていないからではないでしょうか。だからこそ、現在のXRカルチャーは発展途上期。さまざまな人が、「XRデバイス、こう使ったら面白いんじゃないか」を実験しているフェーズです。
「NEWVIEW FEST 2024」で最も印象に残ったのは、発想力と表現力でXRを使い倒すアーティストたちの挑戦(実験)と、その成果としてのXRの可能性を垣間見れたことでした。
前述の、服の着せ替えができる作品『Carrousel du Style』。私自身、「今日どんな服着よう?」とクローゼットを見渡しても、なかなかピンとこないことがよくあります。「この服とこの服を合わせたらどうなるかな」と確かめたくても、服を広げて鏡の前で確認、なんてするのはめんどくさい。
仮想空間でコーディネートを確認できるシステムがあれば、毎日がちょっと便利になりそうですよね。このアイデアと技術は、部屋のインテリアコーディネートや、建築デザインなどにも応用が効きそうな気がします。
また、より実用的な可能性を探る作品もありました。『VEGA: Reach Your Stars!』は、検索エンジンを可視化した試みです。
デモとして用意された検索キーワードは「K-POP」と「旅行」。立体的なインターフェイス上でどちらかを選ぶと、キーワードにまつわる要素が目の前一面に展開されます。K-POPアーティストのプロファイルが並べられていたり、世界中の都市を覗けたり、空間コンピューティングに最適化された検索体験を味わえます。
AR作品で面白かったのは『Immersive Novel』です。
実際に渋谷のハチ公前に行くと遊べるようになる作品で、スマホをかざすと、イヌの幽霊が現れます。イヌとコミュニケーションをとりながら物語を体験してくノベルゲームで、いつもの渋谷がちょっと違って見える、街の魅力も拡張するような作品でした。
その他にも、空間コンピューティング作品では"情報過多時代における調和"をテーマとした瞑想体験や、自分の顔をしたアバターの首を絞め"死の概念に向き合う"作品。
AR作品では、でんぱ組.incのライブを渋谷スクランブル交差点に投影する作品や、頭上に町中の落とし物が広がり、鑑賞者自身の存在が問い直させられる作品など、XRの可能性を追求する多種多様な試みがありました。
現実と虚構の間を融解する「空間コンピューティング」の登場は、3次元表現の可能性を新たなフェーズへと推し進めています。
これまでになかった技術の確立で、いよいよ次は、“そのテクノロジーを私たちの暮らしや社会にどのように活かしていくのか”が問われる時代に入りつつあるのだと感じます。
iPhoneが登場したときは「こんなの必要ない」なんて声こそ聞かれましたが、LINEやYouTube、Instagram、Google Mapといった“具体的な使い方”が浸透することで、約20年後の今では私たちの生活になくてはならないものとなりました。
XRデバイスは、スマートフォンのようなゲームチェンジャーになれるのではないか。「NEWVIEW FEST 2024」は、そんな未来を予感させてくれる場所でした。
Image & Photo: NEWVIEW FEST
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