“ブルズアイ”という言葉自体は、NBAのゲームでスリーポイントシュートが決まったときに実況アナウンサーがよく使うので聞き馴染みがありました。
ハッブル宇宙望遠鏡が宇宙空間にある超巨大な銀河を捉えたそうですよ。その名も「ブルズアイ銀河(正式名称はLEDA 1313424)」。見た目の印象か“標的の中心円”という意味を持つこの名前がついたようです。
で、サイズはなんと天の川銀河の約2.5倍もの大きさらしいんです。
ブルズアイ銀河はすごく大きいんですが、画像を撮るのは非常に大変だったようです。この銀河は、地球から約5億6700万光年も離れているため、細かい画像を撮影するのがかなり難しいといいます。
でも、撮影のプロで大ベテランのハッブル宇宙望遠鏡のおかげで、今回の画像はこれまで知られていた以上のリングがブルズアイ銀河の周りに存在することを明らかにしました。
Image: NASA, ESA, Ralf Crawford (STScI)ブルズアイ銀河には、現在9つのリングが確認されていて(上の画像を参照)、そのうちの8つはハッブル望遠鏡で観測できるとのこと。
さらに、研究者たちはW・M・ケック天文台のデータを解析して、9つ目のリングの存在を確認したそうです。つまり、ブルズアイ銀河はこれまで知られているどの銀河より6つも多いリングを持っていることになります。
この巨大銀河の興味深い点は、単にリングの数が多いというだけではなく、どうやってリングができたかにあるんです。
研究者たちは、小さな青色矮小銀河が約5000万年前にブルズアイ銀河を通り抜けた結果、まるで池に石を投げたときに広がっていく波紋のようにリングが形成されたと考えているそう。
エール大学の天文学者で、The Astrophysical Journal Lettersに掲載された、この銀河に関する論文の共著者であるPieter G. van Dokkum氏は、米Gizmodoへのメールで次のように語っています。
「ハッブル宇宙望遠鏡がより優れた空間分解能を持っているおかげで、以前の観測よりも多くのリングを捉えることができました。地上からの観測では、これまでリング同士がぼやけてひとつのリングのように見えていたそれぞれの間隔も、ハッブル宇宙望遠鏡のおかげではっきりと区別できるのです」
銀河の衝突によって、ガスやちり、星があちこちに散らばり、珍しい同心円状の銀河構造が生まれました。さて、ブルズアイ銀河を通り抜けた青色矮小銀河はこの衝突で消滅したわけではありません。下の画像で、ブルズアイ銀河の左側に見えるぼんやりした天体が青色矮小銀河です。
Image: NASA, ESA, Imad Pasha (Yale), Pieter van Dokkum (Yale)おもしろいことに、ブルズアイ銀河はもともと存在していなかったんです。青色矮小銀河が衝突したことで新しい星が生まれ、結果的に銀河が形成されました。
つまり、青色矮小銀河は「標的の中心円(ブルズアイ)」を射抜いたことになります。なかなかひねりが効いていますね。現在、2つの銀河は約13万光年離れています。
W・M・ケック天文台の発表によると、かつては10番目のリングが存在していたものの、今はもう消えてしまった可能性があると研究チームは考えているのだとか。もし当時そのリングが存在していたとすれば、トップ画像のもっとも外側のリングよりもさらに約3倍も外側に位置していたかもしれないとのこと。
Image: NASA, ESA, Ralf Crawford (STScI) 左が天の川銀河、右がブルズアイ銀河エール大学の博士課程の学生であり、今回の研究論文の主執筆者であるImad Pasha氏は、アメリカ航空宇宙局(NASA)によるリリースの中で以下のように述べています。
「もし私たちが銀河を真上から見下ろすことができれば、リングは同心円状に見えるでしょう。中心部にはリングが密集していて、外側に行くにつれて徐々に間隔が広くなっているはずです」
要するに、ブルズアイ銀河は完璧な同心円の集まりではありません。しかし、それでもなお、目を奪われるほどの美しい姿をしており、ブルズアイ銀河ともっとも近い隣接銀河における過去の相互作用を垣間見る手がかりとなっているのです。
2027年5月までに打ち上げが予定されているナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡の登場によって、銀河の衝突がさらにたくさん観測されるかもしれません。
先出のvan Dokkum氏は、ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡への期待を隠さずに話します。
「ローマン宇宙望遠鏡から得られる最も驚くべき成果の一部は、単に画像を見ることから生まれると予想しています。ひとたび何を探すべきかが判明すれば、機械学習やAI、その他の自動化技術によって、信じられないほどの速さと効率でクールな天体が発見されるでしょう。しかし、まだ何があるのかわからない段階で、まったく新しいものを見つけるは、やっぱり人間の目なのです」