宇宙には、私たちの目に見えているよりはるかに多くの超巨大ブラックホールがまだまだ潜んでいるようです。
ブラックホールの重力は非常に強いため、ある領域より先は光さえも逃れることできません。しかし、その境界面である「事象の地平線」の外側は非常に明るく、降着円盤と呼ばれる円盤状に広がった過熱したガスと塵でいっぱいなのです。
このガスや塵は、本来なら天文台が観測できる光を遮ることがあります。そして今回、研究チームは、研究対象である超巨大ブラックホールの約35%が周囲のガスや塵で隠れていることを突き止めました。以前の研究で示されていたのは15%ほど。隠されたブラックホールの数はこれまで考えられていたより多いことが判明したのです。なお、この論文は2024年12月、学術雑誌『 The Astrophysical Journal』に掲載されました。
Image: NASA/JPL-Caltech今回は、NASAのX線天文衛星「NuSTAR(Nuclear Spectroscopic Telescope Array)」と赤外線天文衛星「IRAS(Infrared Astronomical Satellite Iras)」のデータを基に研究が進められました。IRASは、1983年に打ち上げられた40年のベテラン人工衛星です。ブラックホールの降着円盤から放射される赤外線を取り込んで、ブラックホールが衛星に正対しているか、あるいはブラックホールの端が観測装置に向いているかがわかるということが、今回の研究に役立ちました。IRASで数百の初期ターゲットのグループを特定したのち、NuSTARを使ってX線放射を取り込み、端に向いている、つまり隠れているブラックホールを確認したのです。
研究の共著者でサウサンプトン大学の天体物理学者、Poshak Gandhi氏は
ブラックホールがなければ、銀河はもっと大きいでしょう。もし、天の川銀河に超巨大ブラックホールがなければ、空にはもっと多くの星があったかもしれません。このようにブラックホールが銀河の進化に与える影響は、他にもたくさんあるはずです。
と、NASAジェット推進研究所のリリースで述べました。
さらにブラックホールの影響は、そのブラックホールが存在する銀河をもはるかに超えて広がる可能性があると言います。2024年には天体物理学者のチームが、観測史上最大のブラックホールジェット(ブラックホールから光速で放出されるジェット流)を特定しました。このジェットは、ギリシャ神話の巨人にちなんで「ポルフィリオン」と名付けられ、その長さは2300万光年。少なくとも天の川銀河140倍の長さだと考えられています。
ブラックホールは銀河の進化にとって重要な原動力ですが、こうした超巨大天体でさえ人間は見過ごしてしまいます。最近の研究では、こうした隠れブラックホールがどのようにして目に見えないままでいるのかが明らかになりつつあります。宇宙には私たちが考えているより多くの巨大天体が存在しているんですね。
「ギズモード・ジャパンのテック教室」