ここまでできるのに惜しい!
2024年、Garmin(ガーミン)がスポーツウォッチのフラッグシップ「fenix 8」を発売しました。米Gizmodoのアウトドア派 Brent Rose記者が、ハイキングからスノボ、ダイビングまでいろんなスポーツで使ってしっかりレビューしていますので、以下どうぞ!
Garminのスポーツウォッチは、ランニング用やゴルフ用などの運動内容に特化したものから、より多くのアクティビティをカバーするものへと変化してきました。特にfenixシリーズはいろんな用途を飲み込んできましたが、中でもfenix 8はその最高峰です。fenix 8は今までのepixシリーズを飲み込み、ダイビングウォッチのDescentシリーズの機能にも食い込んでいます。
その結果、fenix 8は今までで最も幅広い場面で使えるスポーツウォッチになり、しかもそれぞれの機能をしっかりこなしています。ただ、スマートウォッチとしての機能には、まだまだ改善の余地があります。
Garmin fenix 8
◾️これは何?:Garminの全部乗せフラッグシップスポーツウォッチ
◾️評価:★★★★✫
◾️価格:1,000ドル(日本国内価格:17万8000円)から
◾️好きなところ:屋外でする運動にほぼすべて対応、実測で15日持つバッテリー、タフで見た目も良い、GPSと心拍計の正確さ
◾️好きじゃないところ:値段が高い、スマート機能は要改善、セルラーモデルがない
まずハードウェアからいきましょう。fenix 8にはいくつかのモデルがありますが、基本機能は共通です。本体左側に3つ、右側に2つの物理ボタンがありますが、すべて密閉の防水仕様なので、ダイビングでも使えます。タッチ画面もわかりやすく、スクリーンやメニュー、地図を操作する方法はボタンも含め複数あります。画面が濡れているときや水中ではタッチが使いにくくなるので、これは大事ですね。
右側にはスマート系機能で使えるスピーカーとマイクがあり、上部にはLEDフラッシュライトがあります。内部には心拍計やパルスオキシメーター、体温計などなどといったGarminのセンサー群が詰まってます。心電図機能もありますが、これは残念ながら今のところ米国でしか使えません。
LEDフラッシュライト機能は、一見地味かもしれませんが、意外なほど活躍します。3段階に調節できる白色LEDで、一番明るくすれば、真っ暗な野山でも道が見えるくらい明るくなります。光を赤くするモードもあって、これだと目にやさしく、知らないホテルの部屋で夜トイレに行くときに助かりました。
モデルの違いはいくつかありますが、一番大きいのはディスプレイです。選択肢としては、明るくカラフルでシャープなAMOLEDと、省電力なMIP液晶があります。MIP液晶の方はソーラーパネルも内蔵されていて、バッテリー持ちがさらに良くなります。
AMOLEDには3つのサイズ展開(43mm、47mm、51mm)があり、47mmと51mmはサファイアクリスタルガラスとチタンのベゼル、43mmはゴリラガラスとステンレスです。MIP液晶+ソーラーモデルは47mmと51mmの2サイズのみで、素材はソーラーサファイアガラスとチタン。それ以外はほぼ同じですが、大きいモデルの方がバッテリー持ちは良くなります(詳細は後述)。
ここでepixシリーズ、Descentシリーズとfenix 8の関係について、ちょっと補足します。epixは数年前に登場し、AMOLED以外はfenixと同じだったので、この2モデルをくっつけるのは納得いきます。でも、Descentシリーズの機能、特に水深計機能をfenix 8に取り入れたのは、カジュアルなダイバーには非常に大きいです。
fenix 8には、ダイビングを趣味とする人がダイビングコンピューターで使うであろう機能を、ほぼすべて搭載しています。ダイブプランニングもできるし、ダイビングの自動開始・終了、酸素・窒素モード、GPSでの入水地点・終了地点保存、浮上・潜行のインジケーター、安全停止、無減圧潜水時間、コンパス、潜水時間、水深などなどなどすべて管理できます。スキューバ、アプネア(無呼吸)、シュノーケリングといったモードもそれぞれあります。
ダイビングにすごく入れ込んでいて、ワイヤレスのタンクモニタリングのような機能が必要な人には、Descentの方が合っていると思いますが、ほとんどの人にとっては、fenix 8の方がふだん使いもしやすくて良さげです。
ふだん使いといえば、fenix 8をレビューしていた約1カ月間、fenix 8を外したくなることはほとんどありませんでした。僕が使ったのは47mmのAMOLEDモデルで、個人的にサイズも機能も一番しっくりくるタイプだったんです。バッテリーはMIP液晶版ほど長くないといっても、フル充電で15日も持ちました。Apple WatchやAndroid Wearスマートウォッチは36時間程度しか持たないので、15日なんて異次元です。しかもフル充電に1時間しかかかりません。
もちろんGPSを使い続けていると減りは激しくなりますが、それでも通常のスマートウォッチより長いことに変わりありません。僕はスノーボードを丸4日やって(滑るたびにGPSを使用)、寝るときはパルスオキシメーターもオンにしていましたが、その後でも2日分のバッテリーが残っていました。さらに、もし47mmのソーラー版ならバッテリーは21日、51mmのソーラー版なら30日(日当たりの条件が良ければ、それぞれ28日と48日!)持つはずです。
fenix 8のアクティビティトラッキング機能はどんな運動でも素晴らしいです。僕はランニング、ハイキング、有酸素運動、筋トレ、水泳、サーフィン、スノボ、ピラティス、フリーダイビングと、幅広く使って検証しました。
Garminのスマートウォッチでは運動中にたくさんデータが見られるだけでなく、他のスポーツウォッチよりもデータ項目のカスタマイズ性が高く、デフォルトで表示されていない項目があれば自分で追加できます。ただデフォルトの項目も、それぞれの運動内容に対してしっかり考えられているので、たいていはそのまま使って問題ないはずです。
例えばフリーダイビングのときは、水深や潜水時間、潜水と潜水の間に血中酸素濃度を上げるために水面に出ているべき時間などがちゃんと出てきます。ハイキング向けにはカラフルな地形図がプレインストールされていて、ボタンとタッチ画面で操作しやすいし、TrackBack機能を使えば最初の地点に戻るときも迷いません。
Image: Brent Rose - Gizmodo USランニングでは高度計を使って登り坂を検知し、平坦な道よりペースが落ちても怒られなくなります。サーフィンでは、(リアルタイムではないものの)乗った波の数や大きさを測ってくれるだけじゃなく、Surflineと連携してるので、自分が波に乗ってる動画もダウンロードできます。他にもほとんどどんなスポーツでも、きめ細かくカバーしています。
Image: Brent Rose - Gizmodo USまた、どんな使い方のときでも、GPSには素早く正確につながるし、心拍計も、検証用に着けていたチェストストラップとほぼ一致していました。SpotifyやAmazon、YouTube Musicから音楽をダウンロードして、Bluetooth接続したイヤホンで聴くこともできます。Garmin Payでのタッチ決済もできます。
あとは天気予報、日の出、日没、月の満ち欠け、大気圧、潮の干満も見られます。心拍数や心拍変動、体表温度、血中酸素濃度、歩数、階段を上がった階数、睡眠時間などのデータも24時間トラッキングし続けます。米国限定ですが、手動でECG機能を使い、心房細動の兆候を見ることもできます。これ以上のスポーツウォッチは考えにくいです。
一方でスマートウォッチとしての機能は…。fenix 8はスポーツウォッチの割に頑張ってる、とは思います。
でも、Apple WatchとiPhone、またはPixel WatchとAndroidスマホのような深い連携を期待すると、特にiPhoneユーザーの人はがっかりしそうです。
といっても、iPhoneでもAndroidでも通知の表示はちゃんとできているし、AMOLEDでは文字も読みやすく、メール全文も読めました。fenix 8で通知を表示するアプリと、そうでないアプリの指定も簡単でした。
またfenix 8には、シンプルなオフラインの音声アシスタントが入ってます。右上のボタンを長押しするとマイクが立ち上がり、基本的なコマンドを聞き取ってくれます。たとえば「ランニング開始」「アラームを7時30分にセット」「天気を見せて」「タイマーを15分にセット」といったコマンドは問題なく使えるし、メニューをスクロールするよりその方が楽です。
ただ、ちょっと混みいったことをしようとすると、反応がなくなります。例えば「アラームの時間を8時に変更」と言っても、Apple WatchやPixel Watchのようには受け入れてくれません。
クイックメニューのボタンを押して、スマホのデジタルアシスタント(Siriなど)に話しかけることも可能ですが、何か質問すると、答えはfenix 8に表示されるんじゃなく、スマホの画面かスピーカーから返ってきます。APIの問題なのかもしれませんが、ここを直せればfenix 8はもっとスマートになれると思います。
メッセージへの返信もちょっと面倒で、iPhoneにつないでいる場合、受け取ったメッセージに直接返信できません。これはGarminがメッセージ送信に必要なAPIにアクセスすることを、Apple(アップル)が許可していないからです。周りの人がGarmin Messengerを使ってくれれば、fenix 8上でのやり取りが可能ですが、そこまで付き合ってくれる奇特な人はなかなか見つかりません。
Androidだとこの点はベターで、メッセージやメールに対して、プリセットした短いリプライを送れます。プリセットの言葉はカスタマイズできるので、何も送れないよりはこっちのほうがマシです。でも、fenix 8にはマイクがあって音声認識もできるんだから、声で返信を入力できればいいのでは?と思ってしまいます。
また、内蔵のマイクとスピーカーを使って、スマホにかかってきた電話に出ることもできますが(スマホが近くにあれば)、音質は良くありません。あと、fenix 8単体で電話を受けられるセルラーモデルはないので、スマホを持たずにジョギングに行ってしまうと、その間は電話に出られません。ここまで高度なスポーツウォッチでセルラーモデルがないのはかなり驚きで、これから進化していく中で追加されることに期待です。
fenix 8はよくできてるだけあって、それなりのお値段です。
AMOLEDモデルの43mmが1,000ドル(日本国内価格:17万8000円)、47mmが1,100ドル(日本国内価格:17万8000円)、51mmが1,200ドル(日本国内価格:19万8000円)と、間違いなくプレミアム価格です。
でも、個人的には、fenix 8はスマートウォッチとしての機能に不満が残るものの、今まで試してきたスポーツウォッチの中で一番気に入っている方です。僕が一番最近試した他のスマートウォッチは、LTE機能付きPixel Watch 3で、たしかにスマートだしセルラーも使えるんですが、fenix 8を使い始めてからはPixel Watchに戻る気がなくなりました。
fenix 8はいろんなトラッキングを優秀にこなしてくれます。スポーツウォッチの中ではとても直感的なインターフェースだし、機能の豊富さ、カスタマイズ性という意味でも群を抜いています。2週間着けっぱなしにもできて、ランニング中でもスーツを着てても見栄えが良いです。スマートウォッチ機能さえ改善されれば、fenix 8は競合より何マイルも先を走れそうで、そんな自らの快走もしっかりトラッキングしてそう、です。