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興味深いけど、すげえ!とはならなかった。NvidiaのAIデモ体験記

  • 2025年1月19日
  • Gizmodo Japan

興味深いけど、すげえ!とはならなかった。NvidiaのAIデモ体験記
Image: Kyle Barr - Gizmodo US

ゲームのモブキャラに人格があるとうれしいか、など。

今年のCESではいろんなところでNvidiaの名前が飛び交っていた気がしますが、彼らがいま注力してるのがAI技術です。

そんなNvidiaのAIの最新のクローズドなデモ、米GizmodoのKyle Barr記者が体験してきましたので、以下どうぞ!

NvidiaのGPU、RTX 50シリーズは今年のCESのスターだったかもしれませんが、Nvidiaにとって真の飯のタネは、AI技術です。Nvidiaの理想の世界では、PCやゲームはすべてAIに飲み込まれていて、AIはクラウドなしで動くことができます。

僕は今回、Nvidiaのクローズドなデモで、次世代のAIのコンセプトを見せてもらえました。まだラフな状態で、さらなる精緻化が必要なものもあったかもしれません。Nvidiaはたとえば、テキストから身体の動きに変換するデベロッパー向けフレームワークを開発していますが、そのユーザーとなるアニメーターが実際どう受け止めるかはまだわかりません。

協力プレイしてくれるAI

デモでは、AIによるリップシンクや「自律的エネミー」といった、ゲームのボス戦を進化させる技術も見せてもらえました。今までのボス戦では、相手の攻撃パターンをその場で見極めて攻略してきましたが、今後のゲームでは相手がより自律性を持ち、敵も自分ももっと臨機応変な動き方をするのかもしれません。

ただ、NPCや敵キャラを進化させるべく使われた生成AIは、しっくりきませんでした。Nvidiaの技術を使って開発された、バトルロワイヤルゲーム『PUBG: Battlegrounds』の「Ally」というAIを見てみましょう。いわゆる協力プレイをしてくれるAIで、ユーザーが声で指示をするとそれに応じて動いてくれるんです。こちらがそのトレーラーです。

なので試しにAllyに向かって、「海賊みたいに話して」と言ってみました。するとAIは「ああ、海賊の人生。板歩きの刑にかけられたくはないね。一緒に来てくれ、すぐバギーが見つかるだろう」…どうでしょう。僕としては、こんな風に会話してくるAIに人格を与えようとするよりも、モブキャラはあくまでモブキャラとして、ムダに突っ立って邪魔してくれるほうがいい気がします。

またこの協力AIは、武器の入手を助けてくれるはずが、そのときの反応はかなりゆっくりです。さらに、上のトレーラーでは撃たれたプレイヤーをAIが優しく助けてるように見えますが、デモで僕が撃たれて彼の方に這って行き、起こしてくれと頼むと、AIは興味なさげに敵を狙撃し、近くの家に飛び込んでいきました。僕が生き延びられたのは、デモ中は無敵の設定だったからです。

そんなPUBG Allyとの噛み合わない感じは、botと協力プレイするのと同じ感覚でしたが、ただAllyはつねに完ぺきな文章で会話してくることだけが違います。

ビジョンは納得、実際は?

またPUBGのデベロッパー・KraftonはNvidiaの技術を使い、ライフシミュレーションゲーム『inZOI』を作り出しました。inZOIのAIはゲームキャラのために計画し人生における選択をしてくれるはずですが、見た目はThe Simsをつまらなくしたような感じで、この手のゲームにおいて重要な魅力をほとんど感じませんでした。やりたいビジョンはわかるんですが、まだ実現していないのです。

こういったキャラクターAIを支えるNvidiaのACE技術は、去年もトライさせてもらってました。その体験からすると、生成されたセリフはまったく生気がなく、サイバーパンクか探偵もののパロディを読んでいるようでした。Nvidiaは今回AIのNPCはアップデートしていなくて、代わりに『ZooPunk』という新しいゲームのデモを見せてくれました。そのゲームはレーザーソードを背負ったウサギの物語ですが、そのセリフがキーキーしたいかにもAIっぽい声で、全然クールじゃありませんでした。

『Zoopunk』のデモでは、Nvidiaの人がキャラクターに、ゲーム内の宇宙船の色をベージュからパープルに変えるように言いました。すると宇宙船の色はパープルじゃなくオレンジになり、2回目のトライで正しい色になりました。

また次の指示では、「宇宙船に描かれた絵を、ユニコーンと戦うイッカク(角を持つクジラ)にして」に対し、イッカクがユニコーンと一緒に『わんわん物語』の犬みたいにスパゲティを食べてる図ができました。

「興味深い」じゃなく「すげえ!」が欲しい

自分的に一番ヒットしたのは、デスクトップコンパニオンのデモです。まずはチャットボットの「G-Assist」、これはNvidiaアプリの設定を操作して、PCのスペックに合わせたゲーム内設定を計算するのに使えます。PCのGPUやCPUのパフォーマンスレベルを時系列グラフ化もできて、クラウド経由ではなくPC内で直接動きます。個人的には、自分で細かく設定を調節するより、勝手に良い塩梅に変えてくれるほうがいいので、とにかく興味深いAIの使い方ではあります。

ただAIって、「興味深いですね」レベルではなく、「すげえ!」となってほしいのです。

あとは、動画配信者向けのAIヘッドのデモもありましたが、そのAIはユーザーに対してやたら失礼な態度なんです。ここで真のスターは、画面に出てるAIの顔でした。NvidiaのNeural Faces、リップシンキング、テキストから声への変換、そして肌のモデルを使って、「リアル」に見せようというものです。とはいえ見た感じ、やっぱり不気味の谷は越えられてませんでした。

考え方としては、WindowsのCopilotみたいな感じで話しかけられるというものですが、AIの顔にファイルを落とすと読み上げてくれたり、情報を抜き出してくれたりもするんです。デモでは『Doom 3』に付いてきたブックレットのPDFをAIに読ませると、ゲームのストーリーの概要を教えてくれました。

AIに顔を持たせることはできますが、結局AIにできることは、テキストの中身を理解もせずにただ生成することだけです。Nvidiaいわく、アニメーションのアシスタントにG-Assist機能を持たせることもできるそうですが、そうすることでアシスタントの動作が早くなったり、信頼性が増したりするわけじゃありません。

AIはまだコンピューターの中に鎮座するブラックホールに過ぎず、生気のない目に空虚な微笑みを浮かべて、こちらを見つめているだけなのです。

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