ブラウザがユーザーの代わりに働いてくれる未来は、2025年にやってきます。
ウェブブラウザを提供するThe Browser Companyが、新ブラウザ「Dia」を発表しました。
このブラウザの肝は、AIに強くフォーカスされたブラウザであること。同社はGoogle(グーグル)のChrome(クローム)やApple(アップル)のSafari(サファリ)、Microsoft(マイクロソフト)のedge(エッジ)などと比べると知名度、歴史ともに浅いかもしれません。同社は2019年にジョシュ・ミラー氏とハーシュ・アグラワル氏によって設立された企業で、2022年にウェブブラウザ「Arc」を各デバイス向けにリリースし、今回リリースしたDiaではさらにAI強化をアピールしています。
新ブラウザ「Dia」公式サイトを開くと、真っ先に飛び込んでくる言葉は
AI won’t exist as an app. Or a button. We believe it’ll be an entirely new environment — built on top of a web browser.
「AIはアプリやボタンとして存在するものではありません。私たちは、AIがウェブブラウザ上に構築されるまったく新しい環境になると信じています」
現在のAI業界に対してのパンチライン。AIはアプリでもボタンでもない。ウェブブラウザこそが新しいんだと主張しています。
公式サイトではプロトタイプ発表に伴い、Diaのデモ映像を公開しています。映像では3つのユースケースが紹介されていますが、その中の3つ目が私の心を鷲掴みにしました。
ざっくりと紹介すると、1つ目は文章を書く手助けをしてくれる予測変換、情報の補足機能。途中まで入力された内容を理解して、ウェブ情報から補足して書き足してくれます。 2つ目はアドレスバーのコマンド対応。アドレスバーからメール送信、カレンダーの設定が可能に。
自動でAmazon内をブラウジング Image:The Browser Companyそして3つ目が、ユーザーの代わりにDiaが自律的に検索して、Amazon(アマゾン)の商品から選び、カートにまで入れてくれる機能。これには驚きました。ブラウザ内でカーソルが自律的に動いて、Amazonの中を自動で動き回っているではありませんか。
映像ではまずメールに記載された内容をDiaが理解して、Amazonへ移動。そこで商品検索して、カートに追加するという一連の流れをすべて自動で操作してくれています。この選択(商品のピック)がユーザーにとってベストかは別として、ほしい物リストを供給すれば、自動で商品購入までしてくれるということです。
もちろんDiaの他にもライバルは多くいます。ただ現時点でほとんどが受動的(ユーザーの指示や入力によって動作する)AIであるのに対して、Diaは能動的にアクションを実行してくれます。この機能に対して検索界の王者GoogleのGemini、ChatGPTのSearch GPTがどのように眺めていて、対抗してくるのかが気になるところです。
そこで有力候補のChatGPTに、今回のDiaで公開された3つ目の(AIが自律的にAmazonで商品をカートに入れる)デモをどう思ったのか、ChatGPTとしての見解をインタビューしてみました。
(※事前にDiaの紹介記事を読み込ませた上でChatGPTの意見を出力するよう指示しています。)
ChatGPT「「Dia」の第三のデモは興味深いですが、課題も明確です。他人のアカウントで購入を行う自動化は便利な一方、ユーザーの意図と異なる結果を招くリスクがあります。このようなAI機能は正確性が鍵であり、ユーザー体験を向上させるには細部への配慮が必要です 」
ユーザー「人間からすると自身の時間を節約できる機能はとてもありがたいものです。あなたを含むOpenAIのサービスには、現状タスクをある程度自律的に実行できるようなものはありませんから、私の目には徐々に技術的優位を失っているようにも見えます。あなたはこの指摘について思うところはありますか?」
ChatGPT「ご指摘は非常に興味深いです。たしかに、タスクを自律的に実行する機能は、時間の節約や生産性向上において非常に魅力的です。
(中略)
技術的優位についての懸念は一理ありますが、OpenAIの方向性は、信頼性・倫理性・安全性を高めることに重点を置いています。完全に自律的なタスク実行には、意図せぬ結果や誤動作のリスクが伴います。そのため、現時点では透明性を保ちつつ、安全で効率的なアプローチを優先しています。
未来には、私たちのようなAIモデルが部分的な自律性を持つ形で進化する可能性もあります。
(中略)
技術的優位を失わないためには、競争だけでなく、信頼と価値を提供する形でAIを進化させる必要があると考えています。皆さんのフィードバックが、その進化を後押しします」
ユーザー「かなり慎重な考え方ですね」
ChatGPT「確かに、慎重なスタンスだと感じられるかもしれません。それはAIの進化が単なる技術的な競争だけではなく、ユーザーが安心して使える環境を作ることが鍵だと考えているからです。
自律的なタスク実行は、可能性が広がる一方で、潜在的なリスクも増えます。例えば誤操作による結果がユーザーに与える影響や、プライバシーと安全性の確保といった問題です。これらは特に見過ごせない課題であり、ユーザーの信頼を損ねないために重要です。
(中略)
慎重ながらも柔軟かつ進取的な視点を持つことが、今後の課題と言えるでしょう」
ChatGPTは、Diaの優位性は認めつつも、リスクに対して慎重なスタンスを取っているようです。
確かに「意図せぬ結果や誤動作のリスク」はありますが、それは現状どのAIにもあり得ることですし、「競争だけでなく」と強調しているのは、自律的なAIの登場で優位性が脅かされることを自覚しているのかもしれません。
AIという言葉を聞き始めたころ、イメージしていたのは、ユーザーが指示する前に勝手に出力してくれる姿でした。しかし、2024年時点では、ユーザーからのプロンプトや指令に対して、情報をまとめて出力するのが基本的なAIです。もちろんそれもすごいのですが、ユーザー側がある程度上手い指示を出せなければいけません。
そんな中今回のDiaが持つ機能、欲しいものリストから情報をピックアップして、買い物をしてくれる機能は、当初のイメージにとうとう技術が追いついた! という感覚でした。そうそうAIってそういうのだよ。
もちろんChatGPTが指摘するように、プライバシー、安全性、意図せぬ結果、誤作動のリスクはつきまといます。倫理的な議論も必要です。ですが、テクノロジーには可能性を、ワクワクを、驚きを見せてほしいのです。望むべくは、各社ごとの特色ある多様なAIから選択できるというのが理想ですが、はたしてAI界隈はどうなるでしょうか。動向を見守りましょう。
そして改めて、AIウェブブラウザ「Dia」は2025年に登場予定です。
その仕事、AIエージェントがやっておきました。 ――ChatGPTの次に来る自律型AI革命 1,760円 Amazonで見るPRSource: TechCrunch, The Browser Company, ChatGPT