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見えないものを可視化するヨシロットン。その師と共に作品を振り返る

  • 2024年12月7日
  • Gizmodo Japan

見えないものを可視化するヨシロットン。その師と共に作品を振り返る
Photo: 照沼健太

アートを通して見る、テックと人間、そして自然の新たな関係性。

11月、ギズモードはサイトやギズ屋台などのデザイン、小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』のカバーアートなどを手掛けるアートディレクター土井宏明と共に、アーティスト/アートディレクターYOSHIROTTENの個展「特別企画展 ヨシロットン展 FUTURE NATURE Ⅱ in Kagoshima」(12月8日まで開催中)の取材を行ないました。

Photo: 照沼健太

実は土井氏が主宰するデザイン会社ポジトロンは、YOSHIROTTEN氏がキャリア初期に在籍していた会社でもあるのです。

今回は本展の制作過程に迫った前回の記事に続き、今回はそこに展示されている作品群と土井氏のコメントを紹介します。

1.シルバーの石

Photo: Kazuki Miyamae ©︎YAR

展覧会会場に入ってすぐに出会う作品がこちら。

YOSHIROTTEN氏の趣味の一つである「石集め」を連想させる、「理想の石」をイメージして設計し、3Dプリンターで成形された作品です。

「展覧会テーマにも通じる、周辺の光を拾う造形を持つ理想の石をイメージして作った作品です。ここから展覧会の作品制作が始まりました」 by YOSIROTTEN

2. KIRINOSHIMA

Photo: Kazuki Miyamae ©︎YAR

デジタルとアナログを行き来する、何時間でも見ていられそうな作品。

本展制作にあたってYOSHIROTTEN氏が集めた、霧島の伝記や資料。1950年代の文献にあった霧島連山の写真からインスピレーションを受けて制作された作品がこちらです。

霧島の名前は、天孫降臨の神話に由来しています。天の浮橋から霧の海を見下ろすと、雲に浮かぶ島のようなものが見えたという伝承がその起源とされています。

「iPhoneで撮影した雲や地面から湧き出す煙の画像やらを組み合わせてできた作品です」 by YOSHIROTTEN

3. tranthrow

Photo: Kazuki Miyamae ©︎YAR

霧島の光をスキャンし、ビジュアル化した作品。

独自開発した分光器であらゆる場所の光を採集し、可視光線、赤外線、紫外線の値をグラフ化。それらを大胆にトリミングして加工した作品です。

左から<大浪池への道> 、<硫黄谷噴気地帯公園の雲>、<丸尾自然探勝路と湯気>、<夏の御手洗川>、 <青い千里ヶ滝>でのフィールドワークの成果。

土井コメント:

抽象的な作品は、想像力を働かせることができていいなと思っています。

tranthrowでは、実際に宇宙船で使用されるアルミハニカムが素材として使われています。

本物の持つマテリアルの強さ、僕も宇宙が好きだからそういった要素にも想像力が働かされてグッときました。

4.メンヒル

Photo: Kazuki Miyamae ©︎YAR

地球のいろんなところにある巨石=メンヒルをモチーフとした作品。

〈tranthrow〉で使用したセンサーを<グリーンスキャナーとシルバーの岩>に設置し、展覧会場の光をスキャン/可視化するインスタレーションを、シラス(火山灰土)に埋め、2000年前の屋久杉や地元の軽石と並べています。

「会場であるアートの森の天井は光を通すので、その時間帯や天気によって作品の表情が変わります」 by YOSHIROTTEN

5.グリーンスキャナーとシルバーの岩

Photo: Kazuki Miyamae ©︎YAR

「特別企画展 ヨシロットン展 FUTURE NATURE Ⅱ in Kagoshima」会場の中でも一際目立つ巨大な作品。

メタリックシルバーの巨大岩に投影されるのは、スキャナーが放つグリーンの光。他にも天井の光や、隣接した<宙の窓 -霧島百景->の光を反映し、その表情を刻一刻と変えていきます。

「このグリーンの光は、2016年にペルセウス座流星群のピークに近い時期、アンドロメダ銀河に現れた流れ星の色です。シルバーの岩は目に見えている部分だけじゃなく、床に埋まっているイメージです」 by YOSHIROTTEN

6.宙の窓 -霧島百景-

Photo: Kazuki Miyamae ©︎YAR

霧島でのフィールドワークをカタチにした、約100枚のイメージをまとめた約50分の映像作品。それらを巨大な3つのスクリーンに投影する作品です。

ハンドスキャナーによる石や地面などのスキャンニングのほか、写真撮影、音のレコーディングが組み合わされた作品群の前を、時折<シルバーの石>が横切ることで、3つのスクリーンが窓であることがわかる仕組み。

「フィールドレコーディングの素材をもとに約40分の音楽を作ってもらったのですが、美術館の監視員の方が気持ちよくて眠ってしまうこともあると聞きました(笑)」 by YOSHIROTTEN

土井コメント:

今回の展示で最初に圧倒されたのは、3つの巨大なモニターで展示されている「宙の窓」です。大きさそのものが持つ力強さに圧倒されました。特に真下に立ち見上げると、吸い込まれるような感覚でトリップ感が得られます。

大きいものが作れるのもその人のパワーであり、彼のエネルギーそのものが表れている作品でした。 まるで巨大なサンドピクチャーに身を投じるような体験に、時間を忘れて引き込まれてしまいました。

7. 読み込みの柱

Photo: Kazuki Miyamae ©︎YAR

長い柱が回転し、周囲の光を反射し姿を変えていく作品です。

8. パイライト

Photo: Kazuki Miyamae ©︎YAR

YOSHIROTTEN氏の好きな石である「パイライト」をタイトルとした作品。

「まるで呼吸するように中の光がついたり消えたりしていて、周りの光を反射巣る状態と、中が光る状態を交互に繰り返すようになっています。会場が暗いとまた違った表情を見せてくれます」 by YOSHIROTTEN

9. U.F.O. (Unearthed Found Objects)

Photo: Kazuki Miyamae ©︎YAR

展覧会で唯一二階に展示されている作品がこちらです。

アンテナ施設やソーラーパネルの畑が立ち並ぶ霧島の風景や、屋久杉、軽石、花などを立体コラージュ。いくつか設置されたモニターには、霧島周辺をiPhoneで記録した映像から情報を削いだムービーが投影されていて、情報の真実性を問いかける側面も。

土井コメント:

行く前からメディアで展示情報を見ていて、一番気になっていた作品です。

断然コレがタイプ。自分の脳内にあるものが具現化されたような親近感が持てました。

見えない力を使って交信するものなので。

だって宇宙人とかと交信したいじゃないですか。

10. オレンジの光窓

Photo: Kazuki Miyamae ©︎YAR

実は天井もYOSHIROTTEN氏の作品です。

アートの森の天窓から着想を得て、人工的なオレンジの光を追加。

その時間帯の光や天候とオレンジの光がミックスされ、一期一会の光景が誕生。さらにはその光がシルバーの岩や<メンヒル>、<パイライト>などの作品に影響を与えていく、まさに「展覧会全体が一つの作品」というコンセプトを体現する作品ですね。

Photo: Kazuki Miyamae ©︎YAR

最後に土井氏の総評です。

総評「地球と宇宙という2つの未知」by 土井宏明 Photo: 照沼健太

今回の展示では、地球内部(コア)と宇宙(アウター)という2つの未知の世界をテーマにしているように感じました。

彼は昔から地球の鉱物や石に興味を持っていて、自身の地元でもある鹿児島の霧島という場所で、火山や温泉が放つ地球のエネルギーをスキャニングし、そこから作品を生み出しました。この地場の力を取り込んだ展示は、まさに46億年の歴史のある「地球のエネルギーそのもの」を表現したものだと思います。

一方で、彼の作品には「光とは何か」という問いが根底にあります。作品の中にある光の点にフォーカスすると、不思議な気持ちになるんです。

RGBやモニターの光、グラデーションの映像は、インフォメーションがないと綺麗な映像として目に映ります。しかし今回、彼が用いたフィールドスキャニングというプロセスについて知り、実際にスキャンの現場を目の当たりにすることができ、その本質に触れることができました。

彼が示したかったのは人間の可視領域を超えた光の存在だと。

例えば赤外線や昆虫が見る世界、さらには宇宙に飛び交う見えない光線。それをどう視覚化するか、彼なりの挑戦を感じました。

彼の作品はただ「見る」のではなく、偶発的に表れる光の動向や干渉を追うことが正しい鑑賞方法でしょう。例えば、上下する巨大な「グリーンスキャナー」や「宙の窓」の光が「パイライト」や「読み込みの柱」に映り込む様子は、偶発な視覚効果を意識的に取り入れたものでした。

今回のFUTURE NATUREで彼が目指していたのは、地球と宇宙という、どちらも未知の領域をスキャニングして「見えないものを可視化する」というテーマだと感じました。これはまさに自分のやっているビジュアルを作る行為とも共通し、共感する部分です。

僕もいけるのなら宇宙に行きたい。是非、一緒に火星に行ってフィールドスキャニングをしよう。

YOSHIROTTENの個展「特別企画展 ヨシロットン展 FUTURE NATURE Ⅱ in Kagoshima」は、12月8日まで開催中です。

ぜひ、これらのアートを体験してみてください。

Source : 特別企画展 ヨシロットン展「FUTURE NATURE II In Kagoshima」

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