ホオノキ、強すぎる。
国際宇宙ステーション(ISS)に向かってホオノキでできた小さな立方体が飛び立ちました。ISSに到着後、その立方体は宇宙空間に放出され、その過酷な環境にどれだけ耐えられるかをテストされます。京都大学の研究者たちは、この実験が宇宙建設においてより持続可能な素材への道を開くことを望んでいます。
京都大学の研究チーム(京都大学宇宙木材プロジェクト)と住友林業が共同開発した木造人工衛星「LignoSat(リグノサット。木を意味するLignoとSatelliteを組み合わせた造語)」が現地の11月5日、国際宇宙ステーション(ISS)への補給ミッションの一環として、アメリカのフロリダ州にあるケネディ宇宙センターから宇宙企業スペースXのロケットによって打ち上げられました。木造人工衛星は世界初なのだとか。
京都大学宇宙木材プロジェクトがX(旧Twitter)に打ち上げを報告していましたね。
LignoSatは約1カ月後にISSから放出され、宇宙空間における耐久性と、地球低軌道に散乱する宇宙ごみの量を減らすための代替品になり得るかどうかの実験を行ないます。
宇宙で耐えられる素材と聞いて、木材はなかなか思い浮かびませんよね。しかし、木材は大気圏外でも驚くほど耐久性が高く、人工衛星に使用される従来の素材よりも利点があるかもしれません。
LignoSatの研究チームは2022年3月、ISSの外の過酷な環境に3種類の木材を10カ月間暴露させました。その結果、地球低軌道に1年近く放置されても、木材からはひび割れ、剥がれ、反り、表面の損傷は確認されませんでした。最も耐久性が高かったのはホオノキ材だったそうです。
この軌道実験が今回のLignoSat打ち上げにつながりました。木造人工衛星の大きさは一辺約10cmほどで、重さは0.9kg強。すべてが木製というわけではなく、通常はアルミニウムが使用される部分を木に置き換えてあるそうです。
LignoSatは地球低軌道で6カ月間テストされ、ホオノキ材が過酷な宇宙空間でどのように機能するかについてデータを収集します。
宇宙ごみを増やさない低コストの宇宙船を製造するための方法として、LignoSat構想はスタートしました。木材が大部分を占めるこの衛星は、従来のものとは異なり、地球の大気圏に再突入する際に完全に燃え尽きます。
金属製の衛星は、大気圏で燃え尽きるときに細かく砕けたり、有害なアルミニウムを大気中に放出したりして、環境に悪影響を与えてしまいます。
木造人工衛星のもうひとつの利点は、木は電磁波や地磁気を遮断しないので、衛星のアンテナや姿勢制御装置を衛星内部に格納できることです。
そして、その可能性は人工衛星だけにとどまりません。プロジェクトチームは、月や火星においても、木材は人間の住居など宇宙での構造物の建設にも使用可能と考えているそうです。また、地球環境下においても木造建築向け超高耐候性木質建材の開発など、木材の利用推進につなげたいといいます。
木の可能性、どこまでも広がりそうですね。ひとまずはホオノキ材が6カ月間の宇宙滞在に耐えることを祈りましょう。
Reference: 京大宇宙木材プロジェクト / X , 有人宇宙研究センター
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