2023年11月18日の記事を編集して再掲載しています。
サザンクイーンズランド大学の天体物理学教授Jonti Horner氏が教えてくれる、不思議な惑星、土星とその環のお話(The Conversation寄稿文より)。
もし望遠鏡を持っていたら、壮大な環を持つ土星を観察するのに今はもってこいの機会。現在、土星は夕方の空できれいに見え、そして日没直後に最も高い位置に来ます。太陽系の第六惑星である土星を見るためには、やはり望遠鏡や双眼鏡を使うのが理想的です。
ですが、ソーシャルメディアでは土星の環が2025年までには完全に消失してしまうという記事が広がっています。本当なのでしょうか? 今夕方の空に見えている姿が、土星の環が見られる最後のチャンスなのでしょうか?
簡単に言うと、答えは「いいえ」です。でも2025年に土星の環は地球からほとんど見えなくなります。でもパニックにならないでください。環はその後すぐに「再出現」します。その理由をお教えしますね。
土星の見え方が変わる理由を理解するためにはまず、地球は太陽の周りを回りながら旅をしているでことを思い出してみましょう。この旅行によって、冬から春、夏、秋、そして再び冬へと季節が変わります。
季節が変わるのは何でしょうか? 単純に言うと、地球は太陽から見ると片側に傾いています。赤道は軌道面から約23.5度傾いています。その結果、太陽の周りを移動するときには、片方の半球を下へ傾け、もう一方の半球を上へと傾けている状態です。自分のいる半球が太陽に向けて傾いていると、昼間が夜よりも長くなります。春と夏です。逆に傾いていると、昼間が短くなり、夜が長くなります。秋と冬ですね。太陽の視点から見ると、地球は上下に顔を上下に動かしているに見えます。星の周りを動きながら交互に半球を見せている状態です。
では、次に土星の話に移りましょう。
地球と同様に、土星も季節があります。でも地球よりも29倍以上も長い季節です。地球の赤道が23.5度傾いているのに対し、土星の赤道は26.7度傾いています。なので、地球の公転周期が365日に対して土星の公転周期は29.4年です。そして地球と太陽から見ると土星も顔が上下にうなずいているように見えます。
土星の環はどうでしょうか? 土星の巨大な環システムは、氷、塵、岩の粒子から構成され、土星から280,000キロメートルの距離に広がっています。環は非常に薄い作りで、ほとんどの場所で数十メートルの厚みしかありません。環は土星の赤道直上を公転しており、そのため土星の軌道面に対しても傾いています。
土星の環は非常に薄いため、遠くから真っ直ぐ見ると薄くてほとんど見えなくなります。どんなイメージかと言うと、紙を一枚を手に取り、紙の端っこを見ようとすると紙はほとんど見えなくなります。それと同じです。
土星が太陽の周りを動くと、私たちからの見え方が変わります。軌道の半分では、北半球が私たちに傾いていて、土星の環の北側が私たちの方に傾いています。土星が太陽の反対側にあるとき、南半球が私たちの方を向いています。同じ理由で、私たちは土星の環の南側がこちらに傾いて見えます。
もう一度、紙を手に取り、水平に目の高さに持ってきてください。それから紙をそのまま下に数センチ下げます。何が見えますか?紙の上面が見えてきますよね。紙を目線に戻して、上に動かすと紙の裏面が見えます。しかし、目線の正面を通過する時、紙はほとんど見えなくなります。
土星の季節が進むにつれて、環が傾きます。傾きが南と北に最大になる時が私たちから環が大きく見える時です。土星の年で2回、環の端っこが私たちの方に水平に向くので、その時、環はほとんど見えなくなります。これが2025年に起こることです。土星の環が「消える」理由は、私たちが環の端っこを真っ直ぐ見ているからです。
実はこれ、定期的に起こります。最後は2009年で、環は数カ月かけて徐々に見えるようになりました。環は2025年3月に見えなくなります。その後、大型の望遠鏡なら見えるくらいになり、2025年11月に再び見えなくなります。その後、また次第により見えてきます。なので、土星の環をはっきり見たいのなら、今が最高のチャンスですよ!