パソコンといえばCPU。その前提から考えたことはある?
TDK株式会社といえば、世界有数の電子部品メーカー。CEATEC 2024でも大規模なブースを展開していましたが、小さいながらもただならぬ存在感を見せつけていたのがコレ。
スピンメモリスタ〜。一見するとSSDやメモリのようにも見えますが、実はGPUやNPUなどが行うAI処理を1/100の消費電力でこなせる、ものっそい素子なんです(そりゃイノベーション部門賞も受賞するわ)。
このスピンメモリスタは、スピントロニクス技術を活用したニューロモルフィック(神経模倣)素子。似た言葉のニューラルネットワークは神経細胞の模倣で、ニューロモルフィックはニューロン発火をの仕組みをハードウェア実装として模倣したものですね。どちらも脳から着想を得ている。
スピンメモリスタが得意とするのは、NPUやGPUが行うAIに関する処理。こう聞くと珍しくもなさそうですが、エッジAIとしてネットワークに繋がっていなくても機能する点と、デジタルではなくアナログで演算できるのが特徴です。
詳細な仕組みを話すと専門的&長くなってしまうのでTDKさんのサイトに任せるとして、結論からいうとNPUやGPUに比べて圧倒的な省電力化が可能。従来のおよそ100倍も消費電力が節約でき、AI演算で課題とされている膨大な電力消費を解決ができる可能性を秘めています。
また、近年のAI PCでも注目されているオンデバイスでの動作にも強い。さらに不揮発性やデータ更新の容易さも持ち合わせており、通信環境が悪い洋上といった局地でAIを学習させたい用途にも向いています。
CEATEC 2024の会場では、スピンメモリスタを用いた音源のAI分離処理がデモ展示されていました。処理速度も特に遅いといったことはなく、一般的なPCで使えるAI機能と同じ感じです。
演算装置=IntelやAMD、Armだとばかり思ってたけど、そうではないアプローチもあるんだなと、そこが一番驚いた点でした。
スピンメモリスタはCPUの代用になるものではありませんが(複雑な演算は苦手)、NPUなどが行っているAI処理を可能とし、さらに課題とされている消費電力の増大化に対するソリューションでもある。用途によってはめちゃくちゃ化ける可能性、ありそうじゃない?
東北大学との協業で生産した12インチのウエハーも。スピンメモリスタの開発には東北大学やフランスの研究機関CEAも協力している。思えばかつてのコンピューターはアナログで演算していたし、CPUを中心とした0と1による仕組みも、たまたま今それが主流ってだけなのかも。AIの普及、ムーアの法則の限界、まったく新しいコンピュータのアイディア…。これからのテクノロジーのゆくえ、読めなさ過ぎるッ!
Source: CEATEC 2024
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