53日間の一期一会。
2024年9月末から、地球には2つの月ができます。とはいえ、それはたった2カ月弱の話。しかも残念なことに、地球から2つ目の月を目視することはむずかしそうです。
2024年8月7日ATLAS(小惑星地球衝突最終警報システム)が、2024 PT5と名付けられた小惑星を発見しました。この天体の軌道が、ある一定期間、地球の重力に引き寄せられることになります。スペインのマドリッド・コンプルテンセ大学の研究者であるカルロス氏とラウル・デ・ラ・フエンテ・マルコス氏の計算によると、小惑星は2024年9月29日から11月25日までの期間、地球の周りを1周だけし、すぐに飛び去ってしまうとのことです。
2024 PT5は非常に小さく、幅はわずか10メートル。なので、肉眼で見ることは期待できないでしょう。天体観測情報サイトのEarthSkyによると、この小惑星は明るさの等級であらわすとせいぜい22等。肉眼で見える限界が6等ですから、ベランダで天体望遠鏡を構えていたとしても、目視することはむずかしいと思われます。
アメリカ天文学会のResearch Notesに掲載された論文で、カルロス氏とマルコス氏は、「月が2つになる、というシナリオは地球にとって珍しいことではありますが、前代未聞ではありません」と述べています。実は2006年7月にも同じようなことが起きており、その時はミニ・ムーンが約1年間地球の周りを回っていたといいます。
また、ある天体は数年間にわたって地球を周回し、2020年5月にようやく重力から逃れて行ったそうです。他にも地球の重力に引っ張られ、地球の周りを1周する前に逃れて行く天体もあります。2020年にもミニ・ムーンらしきものが見つかりましたが、決定的なデータはありませんでした。
この小惑星は、地球と似た軌道をとるアルジュナ小惑星帯からやってきた可能性があります。
「この天体は人工物ではない可能性が高いです。というのも、1981年にミニ・ムーンになり、2022年に再びミニ・ムーンになった2022 NX1と短期的な力学的進化が酷似しているからです」。
アマチュア天文学者のトニー・ダン氏は、Xに小惑星の進路のシミュレーションを投稿しています。
Newly-discovered #asteroid 2024 PT5 is about to undergo a "mini-moon event" when its geocentric energy becomes negative from September 29 - November 25.https://t.co/sAo1qSRu3J pic.twitter.com/pVYAmSbkCF
— Tony Dunn (@tony873004) September 10, 2024実はこの2024 PT5、2025年1月9日に再び地球を通過する見込み。ただ、その時も目視するのは無理っぽいそうですが…。その後は2055年まで地球に近づくことはないようです。