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1999年以降、アメリカで熱中症による死者が2倍超に。日本でも急増

  • 2024年9月13日
  • Gizmodo Japan

1999年以降、アメリカで熱中症による死者が2倍超に。日本でも急増
Image: Shutterstock.com

こんな異常に暑い夏、もう無理。

北半球のあらゆる場所が猛暑に見舞われた2024年夏。EUの気象機関コペルニクスによると、今夏(6月から8月)の世界平均気温は、エグすぎる暑さだった昨年を上回って、観測史上最高を更新してしまいました。気温上昇に伴って、アメリカでは熱中症による死者が1999年と比較して2倍以上になっています。

アメリカで熱中症による死者が急増中

Image: Howard et al. 2024のデータからギズモード編集部が作成。傾向線は5年の移動平均

アメリカの医学会誌Journal of the American Medical Association(Jama)に掲載された報告書で、研究チームが米国疾病予防管理センター(CDC)のデータを分析したところ、アメリカで熱中症による死亡数が1999年以降上昇しており、2016年以降は特に増加傾向が加速していると指摘しています。

熱中症による死亡数は、1999年が1,069人だったのに対し、2023年は2,325人と約2.2倍になっています。なお、1999年から2023年の熱中症による死者は2万1518人で、年平均861人とのことです。2023年には、年平均の2.7倍まで増加しています。

1999年からの5年と直近5年を比較すると、熱中症による死者は2.5倍になっています。最初の10年と直近10年だと1.8倍と、グラフを見ればわかるとおり、特に2020年以降の急増ぶりが影響しています。

研究チームは、死因を誤分類している可能性があるため、熱中症による死亡数を過小評価しているおそれや、暑さに脆弱(ぜいじゃく)な、弱い立場の人たちのデータが不足していることなど、今回の分析では制限があったことを報告書で述べています。

日本でも熱中症による死者が急増

日本の夏も同じく記録的な暑さになりました。気象庁は日本における今夏の平均気温が昨年と並んで過去最高を記録したと発表しています。

昨年と今年のデータはまだ公表されていませんが、1999年から2022年までのデータを見ると、日本でも熱中症による死亡数は増加しています。

Image: 厚労省の人口動態統計のデータを元にギズモード編集部が作成。傾向線は5年の移動平均

年ごとにばらつきがあるので、まず最初の10年(1999年〜2008年)と直近の10年(2013年〜22年)を比較すると、熱中症による死亡数は2.6倍になっています。また、最初の5年(1999年〜2003年)と直近の5年(2018年〜22年)では4.9倍と、短期間とはいえ直近5年の急加速は心配です。1999年から2022年までの熱中症による死者は1万8000人を超えています。

グラフを見て、「2010年に何があった?」って思いませんか? 2010年のスパイクは、気象庁が発表している日本の夏の平均気温と照らし合わせると理由がわかります。

Image: 気象庁

昨年と今年がとんでもない記録を出すまで、2010年の夏の平均気温は観測史上最高だったんです。しかも、当時の過去最高だった1994年の夏を0.29度も上回るかなりのぶっちぎりでした。2010年夏は、熱中症による死亡数が過去最高の1,731人と、初めての1,000人超えを記録しました。

最も暑い今年と去年の夏は、その2010年よりも0.68度も暑かったんです。その前の記録を0.29度差でぶっちぎった2010年を0.68度も上回るモンスター級の夏が2年続いています。

その2年間の熱中症による死亡数の確定値はまだ公表されていません。今年の夏も連日のように熱中症による死者や救急搬送のニュースが流れていました。発表されてもチェックするのをためらいそうです。

熱中症による救急搬送も増加傾向

データの収集時期などにばらつきがあるため、2010年の数値が低く出ていたりもしますが、夏に熱中症で救急搬送される人も増加傾向にあります。

Image: 総務省のデータを元にギズモード編集部が作成

救急搬送数は、最も暑い夏になった昨年、9万1467人(5月〜9月)に達しました。今年は、8月までに速報値で8万5000人を超えており、過去最多レベルまで増えそうです。

温暖化と猛暑の関連性についてほとんど報道されませんでしたが、気象庁の異常気象分析検討会の中村尚会長(東京大教授)は記者会見で

今年も異常気象と言って差し支えない。長期的な地球温暖化で日本の気温は底上げされており、日本近海の海面水温が高い状態は解消されにくいため、これまでにない高温が起きやすくなっている。

と話しています。

記事前半で取りあげた報告書で、研究者らは、温暖化が進む中で今後も熱中症による死亡数は近年のような増加傾向が続くと考えられると指摘したうえで、暑さに対するリスクが高い地域の自治体に、水分補給センターや公共のクーリングセンター、空調設備のある施設の拡充への投資を検討するよう呼びかけています。

また、世界保健機関(WHO)は、気象関連死で最も多いのが暑さだと指摘します。そして、化石燃料の燃焼を主因とする気候変動によって、世界中で猛暑にさらされる人の数が指数関数的に増加していると警鐘を鳴らしています。

よく「災害級の暑さ」という言葉を見聞きしますが、年間に1,000人を超える死者を出す暑さは、もうハッキリ「災害」と呼んでいいと思います。

都市部では、温暖化に加えてヒートアイランド現象による気温上昇も上乗せされます。温暖化を止めない限り、猛暑を乗り切るためにエアコンをつけるようにいくら呼びかけても、熱中症にかかる人は減りません。

人間による都市化を見直して、気温上昇が著しい地域や、弱い立場の人たちが多く住む地域を優先的に、気温を下げるために樹木や公園、水辺を増やし、建物の屋根や屋上、舗道などを明るい色にして太陽エネルギーをより反射できるようにするなど、熱中症を防ぐためにできることはたくさんあります。

長期的に見て、熱中症による死者や救急搬送される人を防ぐために最も重要なのは、1日でも早く化石燃料から脱却することなんですよね。温室効果ガス排出を止めないと、温暖化は止まりませんから。

Source: Copernicus, Howard et al. 2024 / JAMA, 気象庁, 厚生労働省 (1, 2) , 総務省, 時事通信, The Guardian

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