まさに一石二鳥。
コストかかりすぎるといわれる脱炭素とユニバーサルベーシックインカム(UBI)ですが、新たな分析結果によると、世界的なUBIの導入によって、脱炭素しながら世界の国内総生産(GDP)が2倍以上になるそうですよ!
カナダのブリティッシュ・コロンビア大学に所属する研究チームが186カ国を分析したところ、世界の人口77億人にUBIを定期的に支給することで、現在よりも世界全体のGDPを2.3倍押し上げられるという結果が出たそうです。
1ドルの投資につき、4〜7ドルの経済効果が見込めるとのこと。うまい話すぎてちょっと怖い。
UBIはあらゆる形の社会福祉の代替になり得るため、先進国と後発開発途上国の貧困層など幅広い層にとって、ウェルビーイングの向上につながります。無条件で収入を与えたら、無駄遣いして怠惰になるんじゃないかという懸念もありますが、数々の試験導入で否定されています。
でも、投資をするには元手が必要。研究チームは、77億人にUBIを定期的に支給するには、世界のGDPの30%にあたる41兆6000ドル(6300兆円)が必要だそう。貧困ライン以下の9億4900万人を対象にした場合では、7兆1000億ドル(1100兆円)になるとのことです。
では、研究チームはこの膨大な資金の財源を、いったいどうやって確保するのでしょうか?
研究者たちは、環境を汚染した者に浄化するためのコストの支払い責任を負わせる「汚染者負担原則」に基づいて、二酸化炭素排出に課税する炭素税などによる財源確保を提案しています。
炭素排出量1トンにつき50〜100ドルの炭素税を一律に課せば、約2兆3000億ドル(354兆円)の税収になるそうです。この税収で、アジア、ヨーロッパ、北米の貧困ライン以下で暮らす人々のUBIをカバーできるといいます。
その他にも、地球規模の環境汚染や生態系破壊の原因になっているプラスチックや、石油・ガス、農業、漁業に支給されている補助金を財源に回すよう研究チームは提案しています。
具体例としては、漁業の場合、環境に悪影響を与えるような方法を採っている事業者への補助金を廃止すれば、開発途上国の多くの漁師は収入が減って家族を養えなく可能性がありますが、そういう人たちにUBIを支給することで、誰の生活も犠牲にすることなく、持続可能な漁業を目指せると指摘しています。
炭素税導入や補助金の廃止によって、気候変動と環境破壊を抑制しながら貧困を緩和できれば、一石二鳥ですよね。
上の図は、各シナリオごとのコスト(左の赤い部分)とGDPへの影響(右側の緑の部分)を示しています。
一番上は、世界中の人にUBIを支給した場合、コストは42兆ドル(6300兆円)かかりますが、GDPは163兆ドル(2京5000兆円)になり、約4倍の経済効果が見込まれます。この額は現在の世界全体におけるGDPの2.3倍にあたるとのことです。
その下のシナリオでは、貧困ライン以下の人すべてにUBIを支給するために7兆ドル(1100兆円)投資すれば、GDPは49兆ドル(7500兆円)になります。経済効果はなんと約7倍。
数字だけを見ると、今すぐやった方がいいんじゃないのと思いますよね。
UBIは気候変動や環境破壊の抑制と経済効果以外にも、自然災害やパンデミックなどの危機に遭遇したときの回復力が増すなど、潜在的な利点もあります。
もしも自然災害によって住む場所を追われた場合でも、UBIがあれば生活を立て直すリソースになります。農業経営者が、洪水や地震、今なら気候変動の影響で農地が使えなくなったり、農作物の収穫量が減ったりしても、UBIがあれば少なくとも目の前の生活を心配しなくて済みます。
利点が多そうなUBIですが、経済的コスト以外に、労働や貯蓄のインセンティブが小さくなるんじゃないかという懸念もあるようです。しかし、これまでに試験導入されて大失敗に終わった例はありません。
成功するかどうかは、各レベルの政府が効果的な制度を設計できるかどうかにかかっているといいます。
地球沸騰化の時代に突入したといわれる中で、これまでとは違う、気候変動の影響を受けて激甚化した気象災害を、社会として乗り越えていくためのセーフティーネットは必要になってくるでしょう。
論文の筆頭執筆者であるUssif Rashid Sumaila氏は、次のように語っています。
異常な時代には、それに見合った対策が必要なのです。
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Source: University of British Columbia, Science Alert