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スマホも量子で超高速充電? 量子電池の可能性

  • 2024年6月23日
  • Gizmodo Japan

スマホも量子で超高速充電? 量子電池の可能性
Illustration: Vicky Leta

量子コンピューターだけじゃない、量子物理学の広がり。

今我々が日々使ってる電池は、224年の歴史を経て進化してきました。一番最初の電池はイタリアの科学者・アレッサンドロ・ボルタが作った、金属板と塩水漬けの布を何重にも重ねたものでしたが、現代のそれはクッキーくらいの大きさで、数日使えるほどの電力が収まります。

でも、今ある電池にも限界があります。その限界を突破するためにはどんな技術的課題があり、それが解決されるのはいつでしょうか? 未来の電力貯蔵のあり方は何でしょうか?

今世界では何人もの科学者が、量子物理学を使ってその答えを探そうとしています。量子物理学を使った電池技術の確立には長い道のりがありそうですが、千里の道も一歩から、というわけです。

電池の基本

電池とは、化学反応を使って電力を作り出すデバイスです。家庭用電池の場合、回路を流れる電子の流れから電気エネルギーを作っています。「電池」(electrical battery)という用語は、アメリカの政治家で科学者でもあったベンジャミン・フランクリンが、1749年に書いた手紙の中で初めて使ったと言われます。その中でフランクリンは冗談めかしてピクニックを提案しつつ、電気がいかにあらゆる用途で使えるかを列挙しています。

ディナーの七面鳥を電気ショックで殺し、帯電した瓶でおこした火を使って、電気ジャックでローストしよう。イングランドとフランス、ドイツの高名な電気技術者の健康に電気グラスで乾杯し、電池を使った銃を放とう。

その後、いろいろな酸と金属の化学反応を使ったさまざまな方式の電池を経た1859年、鉛蓄電池が生まれます。これは、電池内の電流の逆流により再充電もできる、初めての電池でした。

20世紀後半にはリチウムイオン電池が注目を集め、その後リチウムや他の金属、リン酸塩の配列をいろいろ変化させながら愛用され続けています。でも近現代の電池の歴史を通じて、化学反応から電力を取り出す、という原則はずっと変わりませんでした。

で、量子とは?

量子電池の話に入る前に、そもそも「量子」についてもざっくり振り返ります。量子状態の粒子は、雲の中の水滴とか血管を流れる血液といった、我々が見る普通の世界とは全く違う法則で動きます。粒子が量子状態になるのは、真空の中の超低温といった極限状態に置かれたときです。こうした環境では粒子が一度に複数のもののようにふるまうようになります。この性質が、量子コンピューターなどでの複雑な数学演算や、タイムトラベルの可能性の探索(ある意味で)などで活用できます。

量子力学系では、ふたつ以上の量子がお互いの性質を定義する「もつれ」という状態があります。量子コンピューターにおいては、原子の配列が演算に必要な情報を運び、通常のコンピューターでの「ビット」の役割を果たします。こうした原子を「量子ビット」または「qubit」と呼びます。

量子演算はデリケートで、量子システムの中で何らかの値が確定すると、演算は破綻してしまいます。その場合システム全体が、たとえば配列された原子も、量子でない古典的状態になってしまうのです。

そんな量子システムのはかなさを示す例のひとつが、2012年に予測された状態「時間結晶」です。時間結晶は量子力学系のひとつで、2017年に実現されたときはほんの一瞬しか観測できませんでした。2024年最新の研究では40分間維持できたそうで、この時間をもっと長くできれば、いつかコンピューターにも使えるかも…と言われています。量子電池とはちょっと違う話ですが、どちらも実用化するには、その繊細さをなんとかする必要があります。

では、そんな量子の法則は、多分この記事が読まれているデバイスにも役立っているであろう、再充電可能電池にはどうあてはまるんでしょうか?

いま考えられてる量子電池

通常の電池と同じように、量子電池はエネルギーを貯蔵します。でも共通点は、そこまでです。従来の電池は、化学反応によってエネルギーを貯めたり、使ったりするのに対し、量子電池のエネルギー源は量子もつれ、または電池とエネルギー源をより緊密に結びつけるようなふるまいです。

量子電池は、多くの量子セルが集まったもので、それがひとつの大きな量子電池のようにふるまいます。

韓国のソウル国立大学の量子研究者、Ju-Yeon Gyhm氏は米Gizmodoへのメールで書いています。

問題は、量子の特性をいかに長時間維持できるかということです。

量子電池も量子コンピューターも、研究段階を脱するためには共通の課題があります。つまり、デリケートな量子システムを、慎重に管理された研究環境とは違うリアルな環境で、いかに維持するかということです。常温超伝導がその解決策になりえますが、現状では常温超伝導を実現したと主張する研究者がいても、数カ月後には否定されるパターンが続いています。

平衡状態での熱力学は、エネルギーが熱と仕事に変換される速度に限度を設けない。

arXivのプレプリントサーバー上にある、2023年に5名の研究チームが発表した論文にはあります。

したがって、熱力学上の量子の優位性を、平衡状態から引き出された量子系に求めるのは自然であるように見える。

このチームはさらに、量子多体系にエネルギーが保存される速度は量子もつれに関連していると主張しています。この発見により、量子電池の研究はさらに活発化しています。

2018年には全固体電池としてDickeのモデルを使った量子電池が提案されたり、2022年には的と鏡、レーザー光を使った、量子電池の基本的フレームワーク実験が行なわれたりしています。

ただ量子ってだけじゃない

さらに2023年、東京大学の研究チームが、「不確定因果順序(ICO)」という新たな構造を使った量子電池の充電の仕組みを提案しました。Physical Review Lettersに掲載された論文では、彼らの手法により、従来の量子電池の充電手法よりさらに効率を高められると言っています。

東京大学の研究者でこの論文の主著者であるYuanbo Chen氏は、米Gizmodoへのメールで説明してくれました。

大ざっぱに言ってICOは、因果順序が確定・固定されていた従来の量子理論では不可能な量子プロセスを構築するために使われます。

この柔軟性が、より幅広い量子プロセスを可能にし、中には有利で興味深い性質を示すものも見られるのです。

システムに保存されたエネルギーも、熱効率も、大きく向上しました。やや直感に反しますが、予想とは逆の相互作用の影響も発見しています。

つまり、より低力の充電装置が、より大きな力で同じ仕組みの充電装置より、高いエネルギーをより高い効率で提供できるのです。

とChen氏は言います。

量子電池に関してさまざまな仕組みが提案されているということは、この技術革新には複数の道があることを示しています。

先日はポーランドのグダニスク大学とカナダのカルガリー大学の共同研究チームが、電池に保存されたエネルギーの量を最大化しつつ、充電過程で放電するエネルギー量を最小化する量子電池充電システムを提案しました。

このチームの設計では、量子電池とその充電装置を同じ貯蔵部にひもづけることで抵抗のようなパターンを生み出し、それによってエネルギーの移動効率を改善していました。この手法により、電池に保存できるエネルギーは4倍になると推定されています。

オーストラリアのアデレード大学の量子研究者、James Quach氏は言います。

量子電池は波のようにふるまい、そこでは分子や原子が協調して動きます。一方従来のバッテリーでは、分子や原子は個々の粒子としてふるまいます。

この集合的ふるまいこそ、量子電池の超大な充電特性を裏付けるものです。そこでは、大容量の量子電池をより短時間で充電できるのです。

2022年、Quach氏が率いるチームが、Lumogen-Fオレンジと呼ばれる分子染料をマイクロキャビティ(細かい空洞)に収めた環境を構築し、量子電池の基本的なフレームワーク実験を行ないました。彼らはそのマイクロキャビティに光をあて、光子により伝わるエネルギーの保存状況を測定したのです。すると、このシステムでの充電が非常に高速であり、より大きなシステムの方がより速く充電できることがわかりました。

現在、1マイクロジュールのエネルギーをナノからミリ秒保存できる量子電池を充電するには、フェムトからピコ秒かかります。

これはそんなに長い時間のように感じられませんが、保存できる時間は、充電にかかる時間より数百万倍も長いのです。これは従来の電池だったら、充電するのに数分しかかからず、それを数百年保存できるようなものです。

とQuach氏。

New Scientistにあるように、量子電池の充電時間はシステム内のqubitの数に反比例するという仮説を持つ研究者もいます。つまり、バッテリーが大きければ大きいほど、速く充電できるということです。

で、いつ使えそう?

このように加速する量子電池の研究ですが、今はまだまだ黎明期の真っ最中です。期待はふくらむばかりですが、量子電池の最終形はまだ見えないままだし、商用化なんて、最高にビジネス寄りの物理学者でもまだひらめき程度にしか見えていません。

大きな問題は、規模を拡大したときに量子システムが量子状態を維持できるかということです。Quach氏は、量子電池はスマホや車のエネルギー源として使えると考えていますが、多くの量子システムには非常に低温でノイズのない状態が必要ですが、2022年のQuach氏の実験環境は普通の室温でした。ガッカリさせるつもりじゃないんですが、多分量子電池よりも、核融合のほうが実現が近いくらいです。

とはいえ、量子電池には我々がエネルギーを取り入れ、届け、コントロールする方法を革命的に変化させるポテンシャルがあります。いつかは使える日が来ると信じて、引き続き注目していきましょう。

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