サイト内
ウェブ

「ノイズキャンセル機能は脳に悪影響」って本当ですか?

  • 2024年4月19日
  • Gizmodo Japan

「ノイズキャンセル機能は脳に悪影響」って本当ですか?
Image: Shutterstock.AI

現代人の三種の神器ってなんでしょう。スマートフォン・スマートウォッチ・イヤフォン/ ヘッドフォンかな?

イヤフォン/ ヘッドフォンはアクティブノイズキャンセリング機能(ANC)がついてるとなおいいですよね。通勤・通学の電車の中、オフィスや家の中で、不要な喧騒をシャットダウンして、自分の聞きたい音に集中させてくれますから。ANCがあることで、音量を過度に上げる必要がないので耳に優しいです。…耳には優しいです。…え、耳以外には?

ANCヘッドフォンを装着していると、頭痛がする、気持ちが悪くなる、耳がいたい。ネットで見かけるANCは体に悪い説。ANCヘッドフォンは鼓膜に圧をかけすぎて有害であるという人もいます。

あれは本当なのでしょうか。専門家に話をききました。

米Gizmodoが話をきいたのは、オーストラリアのマッコーリー大学聴覚研究所のDavid McAlpine氏。先に結論から言っちゃうとこうです。

周辺の音が聞こえないのは人間にとって自然な状態ではない。

音を聞こうとする脳の力

ノイキャンを利用することで、ヘッドフォンの音>周辺音にしようと過度に音量をあげる必要がなくなるのが、聴覚にとっては利点です。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)いわく、大きな音を長期的に聞いていると、聴覚障害を引き起こす可能性がありますから。

一方で、McAlpine氏はノイキャンが効きすぎるのも問題だと指摘します。意識を調整し、脳がANCオンの状態に反応しようとてしまうからです。聞こうと感覚を研ぎ澄ますことで、神経経路に影響を与えかねません。McAlpine氏はこれを「隠し難聴」と呼んでおり、2011年に論文も発表。論文では、耳自体の聴覚ではなく、脳が音を処理する能力による聞く力に焦点が当てられています。ANCオンという特殊な感覚状態に脳が慣れることで、一般的な普通の状況で脳が音を聞こうとする力が弱まるかもしれないのです。

「このタイプの聴覚問題は、脳の暗号化のルールが変わってしまうようなもの。聞き方を戻しても、脳の状態は以前のようには戻りません。不可逆的な現象なのです」

McAlpine氏は、大学研究室にある無響室に人がはいるとどうなるかを解説。人いわく、方向感覚を失い、耳や頭に圧を感じるといいます。この無響室内での感覚は、ANCオン状態にとても近いもの。人間の体は無音状態を想定してつくられてはいないため、周辺音なしでは感覚が鈍り、聞こえるものと実際の体験に断絶が生まれます。

「大きな音は耳に悪影響となります。なので、ヘッドフォンのノイキャン機能は適宜使うべきでしょう。一方で、周辺音は人が環境に存在し方向を判断するのに必要不可欠な情報でもあるのです」

2012年、McAlpine氏のチームによる実験では、17人の被験者に1週間イヤフォンを装着して暮らしてもらう試みを実施。内11人からは耳鳴りが報告されました。研究は、音がない状態は脳の音の処理方法そのものに影響を与えることを示唆。これは、耳の聴覚自体に問題がなくても起こりえます。ちなみに、被験者のみなさんは、イヤフォンを外すと症状が回復したので、ノイキャンヘッドフォンの利用そのものがダメという話ではありません。

ノイズキャンセリングの誤解

ノイキャンヘッドフォンに関して、少々誤解があるようです。ノイキャンは、周辺のノイズを抑え聞きたい音に集中するための解決策です。が、McAlpine氏は、解決策でありつつ別の問題の原因ともなっており、なんにでも有効な魔法のソリューションではないと警告しています。

レビューメディアThe Wirecutterのテストによれば、AppleのAirpodsをはじめとした昨今人気のイヤフォン/ ヘッドフォン機種のノイキャン機能は、約10デシベルほどノイズを抑えてくれます。

ANCの仕組みは、周辺音(ノイズ)とまったく逆の音波をイヤフォン/ ヘッドフォンが出し、周辺音とイヤフォンの発する音波が相殺することで人工的な静寂を作りだします。もし、ANC使用時に違和感があれば、それは人工的静寂を生み出す技術が、脳が周辺を認知しようとする能力の邪魔をし、不快感を呼んでいる可能性があります。

メリットとデメリット

聴覚にはいいが、脳の認知力には悪影響も考えられる。ノイキャンはメリットとデメリットがあるのです。

ノイキャンが、現代社会でこんなにも普及し支持されているのは、社会にノイズが多いから。うるさいからです。昔々と比べると、車や電車、飛行機の音、工事現場、電子機器と多くのノイズに囲まれて、我々は暮らしています。ノイズが増えるのに比例して、聴覚問題は悪化しています。

ノイキャンヘッドフォンが目指す静かな世界とは、実は、非常に深刻な問題とも関係しています。騒音問題は、心筋後続などの心血管疾患の発生率とも結びついており、人類にとって空気汚染、光害と同じく、非常に有害な問題なのです。また、ノイキャンヘッドフォンを利用することによって、集中力がアップするという研究もあります。

人工的な静けさで手に入るかもしれない集中力、心血管の健康、そして聴力保護。その代わりに、差し出すのは脳の聞く力が弱まるリスク。

理想は、必要なときだけノイキャンヘッドフォンを使うこと。電車や飛行機の中など大きな周辺音がある場所では頼る。一方で、騒音とは言えないレベル、気にならない場所では使用しない。

テクノロジーの力を借りて、常に最大限の静けさを求めてしまうのは危険なのです。

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
copyright 2024 (C) mediagene, Inc. All Rights Reserved.