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全人類がお肉を食べるのをやめたら起こる、意外なデメリット

  • 2023年12月11日
  • Gizmodo Japan

全人類がお肉を食べるのをやめたら起こる、意外なデメリット
Image: shutterstock

お肉好きですか? 唐揚げ、とんかつ、焼肉、しゃぶしゃぶ、ステーキ…、お肉が好きな人は少なくないはず。人間が毎年消費するお肉の量はなんと8000億トンっ…! ダンプカー2800万台分だそう。

アメリカのような牛肉大量消費国では、肉食が地球温暖化の一因になっています。まず畜産業には、家畜のために広大な土地が必要ですが、それは畜産に使用しなければ炭素を吸収することに使えるかもしれない土地とも言えます。また、牛、羊、ヤギは、二酸化炭素に次いで地球温暖化に及ぼす影響が大きいと言われるメタンガスを大量に放出します。

加えて、家畜の餌となるコーン、大豆などを作るため、農家は亜酸化窒素を排出する化学肥料を撒き、これも地球温暖化に影響しています。

畜産業界と地球温暖化

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つまり、畜産業が地球温暖化に影響するところは大きく、一部の活動家が肉食反対を訴える理由もそこにあります。昨年エジプトで開催されたCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)では、「菜食主義者になろう!自由になろう!」というスローガンを掲げた講義運動もありました。

今年のCOP28は、11月30日から今月12日まで、ただいまアラブで開催中。世界のリーダーたちが、今頃、地球の温室効果ガス15%にあたる畜産による気候汚染を低下させるための植物性食品へのシフトなどを話し合っている頃でしょうか。

実際にお肉を食べるのをやめるのは地球温暖化に対して効果的な手段であり、7月にNature誌に掲載された論文によれば、菜食主義者が排出する温室効果ガスの量は、お肉好きに比べて4分の1ほどだといいます。

では、もし、明日突然、全人類がお肉を食べるのをやめたらどうなるのでしょう?

全人類菜食化

Image: shutterstick

それは大きな変化になるでしょうね。でも、その多くは予想もしてないものかもしれませんよ。

国際食料政策研究所(IFPRI)の上級研究員Keith Wiebe氏はそう話します。

お肉をやめても、全人類が化石燃料の使用を止めるのと比べたら混乱は少ないでしょう。とはいえ、混乱がゼロなんてこともありません。例えば、経済はひっくり返るでしょうし、失業者も増えるでしょう。栄養のある代替食物がない地域ではそもそも食の安全が脅かされる可能性もあるでしょう。

国連食糧農業機関(FAO)によれば、農業全体で畜産が占める割合は、豊かな国で約40%、低所得国で20%で、経済的にも栄養的にも世界人口13億の命に必要な存在といえます。また、世界の人々が摂取するタンパク質の3分の1、カロリーの5分の1は、動物から得られています。

経済に打撃

突然、お肉を食べるのを止める。つまり畜産が消えてしまうと、ニジェール共和国やケニアのような、特に畜産を主な収入源においている低所得国にとっては、非常にアンバランスなダメージがふりかかることになります。なんせ、アメリカにおける農業全体の国内総生産がたった5%なのに対し、ニジェールの畜産業界は国内総生産の13%ですからね。

人類完全菜食化におけるグローバル規模での経済的ショックを、正確に予測するのは非常に難しいこと。お肉から植物性食材へのシフトが世界の雇用にどれほど影響を与えるかの研究は比較的少ない(ほぼない)そうで、Wiebe氏は「もっと注目されれるべき問題だ」と語っています。

菜食化によって何百万人という人が失業するかもしれません。一方で、カロリーやタンパク質を摂取する別の方法が浮上し、そこで失われた職の一部は相殺できるかもしれません。豆などの作物を今まで以上の規模で栽培するため農家に人が集まるかもしれません。それでも、利益率の高い産業(畜産)から人を引き離すことで、こういった労働のシフトは経済成長を減速させるという、一部研究員の仮説もあります。

お肉を食べるのをやめる。文化、経済、政治体制と分野によって、その影響は異なるでしょうが、何がどれほど影響するかは牛のメタンガス排出量ほどハッキリはしていないのです。プラット・インスティテュートの政治経済学者Jan Dutkiewicz氏はこう語っています。

家畜の種類にもよるでしょう。地理的特徴にもよるでしょう。こういった問題に関して普遍的に語るのは、不可能でないにしても、とても難しいのです。

お肉の代替品を簡単に手にできるか

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お肉を止めることの問題には、経済影響以外にも明らかな問題があります。それは栄養です。

ある日突然お肉をやめてしまうのは、必要な栄養素を奪うことになるかもしれません。特に南アジアやサブサハラ・アフリカなど澱粉を多く摂取する食生活では、口にするお肉の量は少ないながらも非常に重要な役割があるからです。動物性食品には、ビタミンB12、ビタミンA、カルシウム、鉄分が多く含まれています。それこそ、お肉、乳製品、卵が手に入る環境を維持することが、低所得から中所得国に住む人々の健康の鍵だと考えられる理由です。栄養価の高い植物性食品は手にするのが難しいのです。

食文化の問題もあります。ウェスタン・ミシガン大学の歴史学教授Wilson Warren氏は、お肉をやめることは、アメリカ人からホットドッグとハンバーガーを、イタリア人からサラミを奪うなんて単純な話ではないといいます。

肉食文化について記した著書『Meat Makes People Powerful』も持つWarren氏はこう語ります。

歴史的にみて、人間が動物を理解したのは、動物飼育や家畜など身近な触れ合いを通してでした。それがなくなれば、ある意味、人間と自然の触れ合いが減ることになると想像しています。

人類がお肉を食べるのをやめ完全菜食化になることが、気候変動の理想的な解決策だとは研究者も考えていません。念入りな計画をたてて消費を減少させる、アメリカのようなお肉大量消費国かつ代替品が手に入るやすい国にフォーカスして対策することで十分だといいます。

年間220ポンド(約100キロ)のお肉を摂取する平均的なアメリカ人が、毎日食べるハンバーガーをお豆のスープに変えることと、お肉消費量が10分の1のサブサハラ・アフリカの人々がたまにしか食べないお肉を諦め、栄養価の低い食事に変えることを横並びで考えてはいけないということです。また、牛肉を大量に消費するアメリカは、赤身のお肉の消費を減らすことで、心臓病やガンなど食指絵活に関連する病を減らせるかもしれない利点も考えられます。

現実的な肉消費量減少目安とは

Dutkiewicz氏は、EAT-ランセットコミッション(健康かつサステナブルな食生活を考えるグローバルな科学者グループ)のガイドラインを利用するべきだといいます。

このガイドラインは、年間35ポンド(約16キロ)のお肉消費量を目指しています。この食生活を採用するには、アメリカ、オーストラリア、中国、ブラジル、アルゼンチンでは肉消費量を減らし、アフリカ、アジアの一部地域では逆に少し増やす必要があります。

Dutkiewicz氏は、少しずつお肉を植物性食品に代えていくのは地球にとって大きな利益があるとも言います。ある予想では、15年間全人類がお肉をいっさいやめれば、メタンガス排出量を3分の1、亜酸化窒素排出量を3分の2減少させることができるといいます。水の使用量も劇的に減少し、生物多様性減少のスピードも緩みます。動物愛護団体は、狭い舎に押し込まれ自らの糞尿にまみれ、ただ殺されることを待つ動物を見ることもなくなり大喜びするでしょう。放置された広大な牧草地・放牧地が、550ギガトンもの炭素を吸収するかもしれません。そして、破壊的気候変動を防ぐことができるかもしれません。

が、それは現実的ではないですよね。そこで、研究者、菜食主義活動家が現実的なゴールとして考えているのが、お肉の生産量を半分に減らすこと。これ(植物性食品への置き換え)によって、2050年までに畜産業の排出量を31%下げることができるとする研究もあります。

世界資源研究所の食物と気候の関係を研究するRaychel Santo氏はこう語りかけています。「0か100かのアプローチである必要はないんです」と。

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