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気候災害から逃れる避難地「気候ヘイブン」はどこに?

  • 2023年11月27日
  • Gizmodo Japan

気候災害から逃れる避難地「気候ヘイブン」はどこに?
Image: Shutterstock.com

地球上に気候変動から逃げられる場所なんてあるの?

ただでもたいへんなお引っ越し。温暖化時代ではさらにたいへんなイベントです。仕事や、手頃な価格や家賃の住宅が見つけやすい場所がいい、家族や友人の近くに住みたいといったごく普通の条件のほかに、海面上昇、山火事の煙、熱波の影響まで心配しなきゃいけなくなってきました。最近の調査によると、アメリカ人の3分の1が気候変動を引っ越しの理由にあげているそうですよ。

気候ヘイブンを求めて

温暖化が進行するなかでもまだ比較的住みやすい安息地という意味で、専門家が「気候ヘイブン(Climate Haven)」とよぶ地域に人々が引っ越すようになってきています。ミネソタ州ダルースやミシガン州アナーバー、バーモント州バーリントンなどが代表例です。

中西部の五大湖周辺でも、特にミシガン州は、ハリケーンなどのストームに見舞われやすい南東部や、干ばつに陥りがちな南西部の人々が目指す場所になっているといいます。ハリケーンや山火事が少なく、水辺が豊富で夏が涼しい中西部は魅力的に映るのでしょう。

とはいえ、米連邦政府による第5次全米気候評価が述べているように、気候変動から完全に隠れられる場所なんてどこにもありません。

今年の夏には、カナダの歴史的な山火事から立ち上った煙が中西部や北東部まで到達し、ミネソタ州ミネアポリスからニューヨーク州バッファローにかけて、いわゆる「気候ヘイブン」の空を終末的なオレンジ色に染めました。

ProPublicaによる3年前の分析で、アメリカで最も安全と評価された郡を持ち「気候ヘイブン」とされるバーモント州でも、7月の豪雨によって壊滅的な洪水が発生しています。

そんなこともあって、ニュースメディアのHeatmapはこの夏、「気候変動に安全な休息地があると考えるのをやめましょう」と宣言しました。

気候ヘイブンはつくるもの

それでも、第5次全米気候評価は、相対的に安全な場所はあると示しています。より危険な地域からより危険が小さい地域への移動は、アメリカで比較的安全と考えられる地域内でもすでに始まっているようです。

また、地域の脆弱(ぜいじゃく)性は自治体の計画によって決まるのだとか。気候ヘイブンが、なにもしなくても与えられるわけではなく、自分たちの手でつくっていくべきものなのだとしたら、地域ぐるみで計画を立てて準備を整えれば、国を縦横に移動しなくても、もっと近くに増やしていけるのかもしれませんね。

第5次全米気候評価で北西部を担当した、ポートランド州立大学で都市の気候変動に対する適応について研究しているVivek Shandas教授は、変わりゆく気候に、人類が種、社会、個人としてどう対応するかによって、地域を気候ヘイブンにできるかどうかが決まるといいます。人々のリスクを大きくするか、安全をもたらすかは、政策や都市計画の決定にかかっているといえそうです。

評価書によると、オクラホマ州タルサはかつて国内で最も頻繁に洪水が発生した都市でしたが、家屋7,000軒が水没、14人が死亡した1984年の洪水後に、積極的な治水対策を実施するために結束します。

市は排水システムをネットワーク化し、雨水を吸収するための緑地を造成、新築住宅建設地に厳しい規制を設けました。過去30年間で、洪水が発生しやすい地域にある約1,000棟の建物を買い上げた措置は、数億円の節約につながったそうです。FEMA(米連邦緊急事態管理局)は昨年、タルサを最もリスクを軽減させた都市と評価しています。

中西部では、どの都市も住民の安全を守るために困難な対応を迫られています。ダムの決壊や、下水と雨水の氾濫は珍しくありませんし、現時点では地域に流入する水量を処理する備えができていません。

ミシガン大学で環境正義を研究しているJulie Arbit氏は、洪水対策のみを行なっても「気候ヘイブン」にはなりえないと指摘します。ミネアポリスやダルース(ともにミネソタ州)、ミシガン州アナーバー、ウィスコンシン州マディソンなどの「気候ヘイブン」とされる地域は、今後数十年で最も気温が上昇する地域のひとつにあたります。

そのうちミシガン州とウィスコンシン州は、国内で最も停電時間が長くなっています。洪水に強くても頻繁に停電されたら酷暑と激寒に耐えられませんよね。

「気候ヘイブン」の起源と普及

「気候ヘイブン」の概念はどこからやってきたのでしょうか? どんな都市でも「気候ヘイブン」になれると提唱したのは、テュレーン大学で都市計画を研究するJesse Keenan教授だとされています。

しかし、教授は「気候に強いダルース(climate-proof Duluth)」は思いついたとしながらも、

気候ヘイブンの概念をつくったのは私だと考えられているみたいですが、講演や執筆物で私がその言葉を使った記憶はありません。

と話し、ジャーナリストによる造語だと指摘します。

2018年に、ジャーナリストのOliver Milman氏が気候変動の悲惨な影響を受けにくいアメリカ国内の地域に関する考察記事をThe Guardianに寄稿した際に、ダルースとバッファローを「安全な避難地(safe havens)」と呼んだのがきっかけになり、翌年にはロイターやYale Climate Connection、Bloombergの見出しを飾りました。

Keenan氏は、「気候ヘイブン」という言葉を使っていないものの、基本的なアイデアは自分が提唱したといい、次のように話してくれました。

一般的な考えとして、気候ヘイブンは、私たちが好むかどうか、計画を立てるかどうかに関係なく、人々が移動する先にある場所です。私たちは、気候ヘイブンになりうる地域を支援し、準備が整うよう働きかける必要があります。

「気候ヘイブン」という概念は、経済が停滞していた中西部にあたる五大湖周辺の工業都市に希望を与えるメッセージとして広がり、住宅市場の活性化と経済回復の可能性を高めました。しかし、過去20年間で40万人以上が中西部を離れて他の地域へ移動する結果に。

バッファローの市長は、2019年に同市を「気候の避難所」とよび、現在も都市計画立案者はその表現を使用しています。オハイオ州シンシナティは、2023年に発表したGreen Cincinnati Planで同市を「気候ヘイブン」とよんでいます。

薄れる「気候ヘイブン」の魅力

気候変動の現実によって「気候ヘイブン」の魅力は薄れてきています。Shandas氏は、気候変動が移住パターンに与える影響を調査する計画に連邦政府が十分な資金を投資していないのも、気候ヘイブンへの熱が冷める原因になっているといいます。

その影響もあって、全米気候評価では、気候変動が中西部への移住促進にどう影響するかについて「強いメッセージを発信」するための十分なデータがまだそろっていないと指摘しています。

評価書で中西部の著者を務め、コンサルティンググループのFarallon Strategiesでレジリエンス部門を率いるBeth Gibbons氏は、より穏やかな気候を求めて五大湖地域に移住する人々の話をよく耳にするそうです。

しかし、気候変動によって中西部に移住する人たちの動きに熱狂する政治家と、多くの地元住民との温度差は大きいようです。Gibbons氏によると、ミシガン州、ウィスコンシン州、ミネソタ州、ニューヨーク西部の聞き取り調査で、住民はこの見通しについて神経質になっているとのこと。

Gibbons氏は、これらの地域の人たちは現状でも多くの問題を抱えており、この動きが地域社会によい影響を与えないばかりか、負担になるかもしれないと考えているのではないかと述べています。

環境正義を訴える人たちも、気候ヘイブンという概念によって、以前からの住民に対する配慮がおろそかになると懸念しています。

他地域にも「気候ヘイブン」はあるのか?

これまで中西部を中心に展開されてきた「気候ヘイブン」の議論ですが、新たな研究によって、それ以外の地域を見落としていた可能性が示唆されています。

環境防衛基金とテキサスA&M大学が、所得水準や医療サービスへのアクセスなど、危機対応を困難にする要因を加えて脆弱性を算出、地図化したClimate Vulnerability Index(気候脆弱性指数)によると、気候変動への脆弱性が小さい(気候変動に強い)郡は主に農村部に広がっており、中西部で気候変動に強い郡トップ10に入ったのは、ウィスコンシン州のオナイダ郡のみ。人口が多い(60万人以上)都市を含む郡も、ポートランド東部を有するオレゴン州ワシントン郡だけでした。やっぱり都市部は気候変動に弱いんですね。

気候ヘイブン候補、ポートランドの悲劇

ポートランドは以前、気候ヘイブン候補にあがっていたんです。でも、2021年6月に太平洋岸北西部を襲った記録的な熱波のあとに状況が一変。ポートランドでは気温が47度に達し、路面電車の電力ケーブルがとけ、道路が変形するなどの被害にあいました。もう気候ヘイブンどころじゃないですよね。

涼しい気候のため、ほとんどの家庭にエアコンがないオレゴン州、ワシントン州、カナダのブリティッシュコロンビア州では、約1,000人が暑さによって亡くなりました。

当時のThe Guardianには「安全な場所はどこにもない。太平洋岸北西部は気候避難所というイメージを暑さが打ち砕く」との見出しが躍ることに。

あれから2年。ポートランドとシアトルは、暑さへの準備を続けてきました。Shandas氏によれば、北西部はあちこちでヒートポンプやエアコンの普及に熱心に取り組んできたそうです。

一度の自然災害で「気候ヘイブン」候補から外れるわけではありません。北西部の都市のように、過去の災害から学んだことを、次の災害を生き延びるために生かせばいいんですよね。

「気候ヘイブン」を近所につくっちゃえ

気候変動の影響を避けるために移住するといっても、みんながみんな遠くの「気候ヘイブン」を目指すとは考えにくく、ほとんどの人は比較的近い地域に引っ越すとKeenan氏は言います。

地元レベルでの気候移住は、気候変動に適応するための正しい都市開発を行なうチャンスになるそうです。郊外型で大量に炭素を排出する無秩序な都市づくりをするのか、それとも正しい方法で低炭素コミュニティーを目指すのか。やり方次第では、思っているよりも近くで都市が進化を遂げて気候ヘイブン的な存在になるかもしれません。

「ローカル型の気候避難所」という考え方は、気候変動の最悪の影響から逃れる方法を議論するためのよりよい枠組みになるかもしれないとShandas氏は話します。

ここでいう「避難所」は、生態学的な観点で、周囲の変化に関係なく、比較的安全な気候条件を長期間維持できる場所を指します。それは、熱波中の冷房が効いた公民館かもしれないし、山火事が発生しやすい地域、あるいは洪水が頻繁に起こる地域からの引っ越しを意味するかもしれません。

Shandas氏はこのアイデアについて、次のように述べました。

素晴らしい考え方です。なぜなら、人間をどこに行っても気候変動に打ちのめされる被害者と捉えるのではなく、自分たちにもできることがあると考えられるようになりますから。

「気候ヘイブン」が仮にあったとしても、そこへ移住できるのはほんの一部の恵まれた人だけで、多くの人はリスクを承知のうえで今いる場所にとどまる選択を強いられます。

だったら、できるだけ近くに、できる限り多くの地域住民が気候変動から避難できる場所をつくるのは、これからの時代を生き残るために必要なんじゃないでしょうか。

リミットまであと少し。平均気温が1.2℃上昇した地球で起こっていること CO2排出を減らして、地球温暖化を食い止めなくては。「産業革命前からの地球の平均気温上昇を1.5℃以内に抑えるために、許されるCO2排出量枠」は、今まで想定されていたものより少ないことが、新たな研究で明らかになりました。今週『Nature Climate Change』誌に掲載された研究結果によると、この10年以内に地球の平均気温が摂氏1.5℃(華氏2.7℃)に達する可能性が50%となり、地球は https://www.gizmodo.jp/2023/11/study-reveals-shrinking-timeframe-to-contain-global-war-jpn.html

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