何もかも値上げ続きで生活もアップアップです。
最近の心配事といえば、なんといってもインフレ。いろんなものの値段を同時に心配しなきゃいけない昨今ですが、昨年は消費者物価指数が平均7.1%上昇。自動車からコーヒー、ガソリン、食料品に至るまで、何もかも高くなりました。インフレは米中間選挙の争点にもなり、連邦準備制度理事会(FRB)に一連の積極的な利上げを促すなど、押し寄せる不況に対する懸念が広がりました。
ロシアによるウクライナ侵攻からパンデミック後の経済回復まで、その原因は多岐に渡りますが、多くの分野におけるコスト上昇の背景には気候変動の影響もありました。気温や降水量の極端な変動によって、電気、ガス、水などの生活に必要不可欠なライフラインの供給が不安定になり、価格の高騰を引き起こしました。相次ぐ壊滅的な気候災害によって、野菜や穀物のサプライチェーンが危機に陥りました。
気候変動の直接的な影響はまだ私たちの生活に及んでいないと考えがちですが、気づいていなかったり意識していなかったりするだけで、実はもう私たちの生活を直撃しているんです。地球温暖化の影響がどのように家計に影響しているのか、食料品、水道料金、住宅保険、冷暖房費、電気料金について、順番に見ていきましょう。
2022年は食料品価格が10%上昇し、ここ数十年で上昇幅が最も大きい年になりました。新型コロナウイルスのサプライチェーンへの影響や、ロシアによるウクライナ侵攻によって、さらに拍車がかかりましたが、多くの人が思っている以上に気候変動が果たした役割は大きかったようです。焼けつくような暑さをはじめとする異常気象によって、世界中で農作物や家畜に被害が出るなど、暑さが原因の「ヒートフレーション」と呼ばれる現象が食料品価格を押し上げています。
昨年夏、未曾有の猛暑によってブタの飼料となるトウモロコシや大豆が不作に陥った中国では、豚肉の価格が高騰しているそうです。スペインとイタリアでは気温38度を超える日が続いたため、干ばつでオリーブの生産量が減少。世界最大のオリーブ油生産国であるスペインでは、11月にエキストラバージンオリーブ油の価格が前年比で45%も上昇しました。また、アメリカではハリケーンの影響でフロリダ州で柑橘類に、プエルトリコではバナナに深刻な被害が出ているのに加え、西部でも干ばつが続いていることもあって、食料品価格の上昇は今後数年続くかもしれません。
ある分析結果によると、世界48カ国における季節ごとの気温と価格指標を調査したところ、暑い夏は食料品価格に「圧倒的に大きく長期的な影響」を及ぼし、その影響はほぼ1年続くそうです。専門家は、洪水や干ばつ、山火事、その他の気候変動の影響を受けた気候災害によって、今後数年間は食料品の高騰が続くだろうと警告しています。支出ばかり増えていきますね…。
家庭や企業への水の供給には、高いコストがかかります。自治体や公益事業会社は、川や貯水池から汲み上げた水を浄水処理し、数百kmもの長距離をパイプや運河を通して輸送する必要があります。また、老朽化したインフラの修理とアップグレードを常に行なわなければいけません。供給システムの維持コストはほぼ横ばいですが、サービス事業体が得る利益は、顧客に供給する水の量によって決まります。
近年のアメリカ西部のように干ばつが続く地域や乾期には、取水量制限によって供給できる水量が減るため、水道料金は上昇します。井戸の枯渇が深刻なカリフォルニア州セントラルバレーでは、住民の12%が水道料金を滞納するなど厳しい状況に陥りました。滞納額は総額10億ドル(約1300億円)にもなるそうです。水不足で自治体からの供給量が減少した2022年は、農業用水の取引価格が上昇し、農家が大きな打撃を受けました。Nasdaq Veles California Waterの水価格指数は、1月から6月にかけて56%も上昇して、史上最高値を記録しました。
気候変動が寄与する水道料金高騰の要因は、水不足だけではありません。集中豪雨によって前例のない被害を受けた水道インフラの高額な復旧費用は、サービスを受ける顧客が負担することになります。つまり、水道料金に上乗せして請求されるんですね。また、熱波も水道料金上昇の原因になっています。五大湖周辺の農業地帯では、肥料が流れ込んだ水域で暑さによって有害な藻類が大量発生する傾向が見られるのだとか。例えばオハイオ州トレドでは、藻類を除去するために住民1人あたり年間20ドル(約2,600円)の浄水コストが水道料金に上乗せされているそうです。
自然災害後の復旧に必要な住宅保険ですが、洪水、山火事や野火による火災、ハリケーンの激化とともに保険料は高くなっており、契約を結ぶのが困難になっています。昨年のアメリカはそれが顕著になりました。保険ブローカーのPolicygeniusによると、2021年5月から22年5月にかけて、住宅所有者の90%が保険料の値上がりを経験、上昇幅は年平均134ドル(約1万7400円)だったそうです。
洪水被害を受けやすい地域では、直近数カ月における保険料の上昇幅がさらに大きかったそうです。500万件以上の物件を保証している全米洪水保険制度(NFIP)は、現時点での洪水リスクを保険料に反映させるための新制度を多くの地域で導入中とのこと。NFIPを統括している米連邦緊急事態管理局(FEMA)は、新制度下のリスク評価を適用した場合、契約者の66%が月額で最大10ドル(約1,300円)、7%が最大20ドル(約2,600円)、4%が20ドル超の保険料値上げになると試算しています。生活が苦しい保険契約者にとって値上げは厳しく、何十万人もの契約者がNFIPの保険を解約しました。
また、甚大なハリケーン被害を受けたフロリダ州では、リスクへの懸念が高まったことから、保険会社6社が経営破綻しました。その影響はハリケーン「イアン」通過後の保険料値上げに現れています。一方、カリフォルニア州では、全国規模の保険会社大手数社が山火事リスクの高い地域における将来的リスクを低く見積もることで契約者を減らそうとしたそうです。保険に入らせなければ費用は発生しないということですね。こうなると、地域住民は他の保険会社が勧める火災保険に加入して高騰し続ける保険料を払うか、保険未加入で運を天に任せるかという究極の選択を迫られることになってしまいます。
近年、気候変動によって極端な暑さと極端な寒さの激しさや頻度が増すとともに、冷暖房費もどんどん高くなっています。アメリカでは6世帯に1世帯が光熱費を滞納しているそうです。
まずは冬から。現在、アメリカでは90%の家庭が天然ガスか電力で暖をとっています。昨年1月、家庭用電気料金は前年比で平均8%上昇しました。これは、過去10年間で最大の値上げ幅だったそうです。北極の温暖化によって寒帯ジェット気流が不安定になり、南に伸びて大きく蛇行して南下したため、北極の寒気が流れ込んだ地域で厳しい寒さが続いたことが原因でした。アメリカエネルギー情報局(EIA)によると、今年の冬は平年よりも寒くなることが予想されているため、天然ガスを使用している家庭の暖房費は去年よりも28%高くなりそうとのことです。
続いて夏。全米のあちこちが猛暑に見舞われた昨夏は、電力網が逼迫し、家庭の電気代が情け容赦なく値上がりしました。National Energy Assistance Directors Association(NAEDA)の推計では、熱波によって電気代が平均540ドル(約7万5000円)と、昨年同時期から20%上昇したそうです。
最も深刻な影響を受けたのは、都市部でも郊外でも非白人の低所得層でした。黒人、ラテン系、先住民家庭では、白人家庭よりも光熱費の滞納によって電力供給を停止される確率が高くなっています。北カリフォルニアのHoopa Valley Tribe(フパ族)公益事業区を統括管理するLinnea Jackson氏は、コストの急激な上昇による影響は大きく、住民がすべての光熱費を払って通常のホリデーシーズンを過ごすか、一部の支払いを先延ばしにするかの選択を迫られていると言います。
Jackson氏はまた、夏の暑さと冬の寒さが極端化した天候不順に加え、気候変動が寄与する山火事や干ばつ、暴風雨などの気象災害によって上昇の一途をたどる光熱費の捻出に人々が苦労していると述べています。
アラスカ州ベセルで暮らすユピク族の環境活動家であるSophie Swopeさんは、永久凍土の融解による家屋の傾きやひび割れの影響ですきま風が入ってくるようになったため、暖房にかかる費用が増えたと話します。また、燃料費の高騰は、生活必需品を長距離輸送する必要があるユピクのようなコミュニティーには重くのしかかります。何もかもが高くなったそうです。
光熱費との区別がややこしい気はしますが、最後は電気料金です。ここ1年半くらい、熱波や寒波などの影響なんて関係なく、全米で電気料金が高騰しています。最も大きな要因は、ロシアによるウクライナ侵攻で天然ガスが世界規模で不足したこと。先述したように、家庭用電気料金は2021年比で8%上昇しました。
それでもやっぱり気候変動の影響を受けた暴風雨や干ばつ、山火事などの気象災害も、一部地域で電気料金高騰の要因になっています。昨年6月には、2021年に発生したハリケーン「ローラ」「デルタ」「ゼータ」「アイダ」の被害、そして同年2月の大寒波による損失を回収するために、電力会社エンタジーが6月にルイジアナ州の顧客100万人に対して最大25ドル(約3,250円)を上乗せ請求したそうです。これ、テキサス州でも同じ大寒波でエネルギー会社が被った損失を電気代に上乗せされた人が続出して、問題になったんですよね。
ところ変わってカリフォルニア州では、同州最大の電力会社Pacific Gas & Electric(PG&G)が、山火事防止の費用を理由のひとつに電気料金値上げに踏み切りました。が、それからわずか2カ月後に、今度は天然ガス高騰によるコスト上昇を言い訳に再値上げ。長引く干ばつで水力発電の出力制限が行なわれた2021年の夏に想定外の天然ガスを消費したため、買い足さざるを得なくなったことが原因でした。庶民にとっては踏んだり蹴ったりです。
連邦政府所有の水力発電ダムによる電力をアメリカ西部全域の電力会社に販売する連邦機関であるWestern Area Power Administration(西部地域電力事業団)は、メガ干ばつによる水力発電量の減少が西部の一部地域で電気料金を押し上げたとGristに語っています。
気候変動の影響を受けた気象災害の直接的な被害に遭っていない人でも、こんな風に日常生活レベルでお財布が直撃を受けているんですよね。僕は電気代でも食費でも大打撃を受けまくっています…。
サニーレタスが800円。アメリカ、異常気象で野菜が4割ほど値上がり中。 マジ野菜が高すぎて口内炎ができそう。温暖化で野菜の価格が急上昇アメリカの野菜が今年40%も値上がりしちゃったそうなんですけど、やっぱり温暖化が主犯でした。Bloomberg(ブルームバーグ)によると、毎年11月から3月にかけて全米における緑葉野菜の90%がアリゾナ州で収穫されているのですが、今年は干ばつによるコロラド川の水量減少が農作物の生産に大打撃を加えてしまったとのことです。長期の干ばつが影 https://www.gizmodo.jp/2022/12/food-prices-climate-change-inflation-drought.html