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ソニーが面白いのは技術オタクが面白いから。テックのお祭り「STEF2022」行ってきました

  • 2023年1月20日
  • Gizmodo Japan

ソニーが面白いのは技術オタクが面白いから。テックのお祭り「STEF2022」行ってきました
Photo: ヤマダユウス型

「そんなアイデアがあったか!」なプロダクトは、こういうマインドから生まれてくるんだろなぁ。

皆さんご存知のテックカンパニー・ソニー。テレビにイヤホン、スマホにカメラにゲームに音楽に映画に金融に…数え上げればキリがないほどの事業をもつ超ビッグな企業なのですが、ソニー社員だけが参加できる祭典があるのですよ。

その祭典の名は、STEF(Sony Technology Exchange Fair)。STEFはソニーの技術者が自分たちの新技術をお披露目しつつ、それぞれの業種を飛び越えた交流が可能となる場。明確な成果物の展示だけではなく、何に使えるかはまだ未知数な技術も展示しているのが特徴です。

ソニーほどの大企業ともなれば、すべての部署とまんべんなくつながりを持つのは難しいもの。でも、普段は関わりがない部署の技術を知るチャンスがあれば「この技術、ウチの○○と組み合わせれば…!」のような化学反応が起きる可能性もあるわけです。このインディーズ的マインド、ソニーらしい感じがしませんか?

2022年12月5日〜10日にかけて開催されたSTEFは今回で50回目を迎えます。もともとはソニー内部での催しだったのですが、50回の節目を祝しメディア向けに一部内容が公開されました。ソニー流技術フェスともいえる会場の模様を、早速ご紹介しましょう!

あの魔改造ネコちゃんがいた!

魔改造ネコちゃんの試作機。

このネコのぬいぐるみ、見覚えがある人もいるのでは?

2022年8月20日と27日に、NHK BS プレミアムにて「魔改造の夜」という番組が放送されました。技術開発をエンタメとしたこの番組に、ソニーは「Sニー」として参加(名前、隠せてます…?)。お題に沿ったマシンを作り上げたのですが、その試作機のひとつがこのネコちゃんなのです。

すぐ横に開発者の方がいるので、「ここどうしてこんな形なんです?」な疑問も聞けばすぐ教えてもらえました。たのしい...!

マシンの技術解説や開発者のクロストークはソニーのサイトにも掲載されています(面白いですよ!)。

STEFでは番組に登場した魔改造ネコちゃんの実物や、完成にいたるまでの試作機が展示されていました。実際に開発に関わった社員さんの話を聞くこともできましたが、ネコのおもちゃを、高さ6mの足場から飛び降りさせてから合計25mを走りきらせるのは簡単ではなかったそうな。

サイズと材料費という制限の中でソニーの技術者が導き出した答えがこのマシン。

ネコちゃんの横には、こちらも「魔改造の夜」にて登場した電気ケトル綱引きマシンの実物が展示されていました。

電気ケトルのお湯を沸かす機能を活用して綱引きをするというお題に対して、ソニーが考え出したのは蒸気と大気圧を使ったエネルギーの徹底的な有効活用。にしても、装置がデカイ!

実際に蒸気を入れるとパワフルすぎる! ので、代わりに動きを再現するデモ用のモーターなどが追加されています。

仕組みとしては、上部にある電気ケトル内にある自作の高効率ボイラーでお湯を沸かす→発生した水蒸気をシリンダーに充満させる→シリンダーに水を入れて水蒸気を冷却して水に戻す(水蒸気の体積が約1700分の1に!)→大気圧による強力な負圧でピストンを稼働させ綱を引く、というもの。

実際はこの流れに加えてさらに複雑な二次工程があったりと、技術者マインドが随所に見られるアイデアマシンでした。ソニーが得意そうな電気エネルギーならまだしも、蒸気エネルギーまでも徹底的に使いこなそうとするこの発想、たまんないねぇ。

「におい」のエンタメ化はもうそこまで来てました

なにこれ?

こちらはTensor Valve™(テンソルバルブ)」テクノロジーなる、においを制御する新規技術を搭載した新製品。『NOS-DX1000』といい、主にメディカル研究用途の嗅覚測定やにおいにまつわる研究や測定を目的とした、嗅覚にアプローチしたプロダクトです。

今回の展示においては、この製品を活用した、新しいにおい遊びを展開。製品内に32種類の香りのもと(嗅素)が入っており、 紅茶やレモン、トースター、火打ち石等、それぞれ特徴を捉えたにおいを体験。できます。 さらにソムリエが監修した8種類のワインも実際に入っており各銘柄ごとのかおりの違いまでも体験できました。ほら、ワインの香りで「ジャスミンの香りの中にバターのニュアンスが...」みたいな表現ってあるじゃないですか。アレを体験できるわけ。

こちらは技術デモではなく、すでに製品として2022年10月に発表されており、来年春には発売予定。

上部の穴に鼻をあてて、タブレットで匂いを選ぶと...たしかに匂いがする!

使い方は、鼻をフィットさせてタブレットから香りをチョイスします。香りモノのデバイスは残り香があると正確に香りを表現できないのが課題でしたが、「Tensor Valve™」は独自の制御技術にてこれをクリア。詳細な方法はこちらで解説されていますが、実際に嗅いでみても残り香はわかりませんでした。本当にシナモンやピーマンの香りがしましたよ!

ディスプレイの前に立った時だけ香りがするのに、離れると香りは感じられなくなるふしぎ体験。

『NOS-DX1000』の隣のスペースには、空間演出に関する新たな展示もありました。目の前のディスプレイから流れる映像と音に合わせて香りが次々と変わっていくのです。しかも、3つ並んでいるディスプレイのそれぞれで香りが異なります。手が届くほど近い距離にいるのに、となりの香りが混じらないのがスゴい。

これは、Tensor Valve™をモジュール化したものを空間に設置することで、クリエイターが「映像」や「音楽」と同じように「匂い」も制御し、空間の演出に利用できるようになるという「Grid Scent™」という空間演出の構想。これから頑張って研究開発を進めていくそうです。

食べ物の映像と組み合わせれば「あれ、なんかいい匂いがしたな」みたいな使い方もできそうじゃない? 広告に使ったら効果ヤバそう。

超小粒サイズのレーザーが、地球を見守ります

これ、なんだと思いますか?

宝石の原石のようにも見えますが、実はこのサイズでは考えられないほど高出力(キロワットを超えるピーク出力)の新型レーザー光源なんです。え、小さすぎて見えない?

塩の結晶くらいのサイズ感。このレーザーの論文は、まったく新しい構造のレーザーとして、2022年10月に有名な英科学誌nature communicationsに掲載されています。また、「特に注目すべきハイライト論文」にも選出。

さらに拡大。こんなに小さいのに、たとえば数キロ先まで届くような強烈なレーザーを発射(発振)できるんです。

スゴさがイメージしにくいかもしれませんが、従来の同様の高出力レーザーと比べて1000分の1の体積という、画期的にコンパクトなレーザーの開発に成功したと思ってください。いままではたくさんの部品で作られていたレーザー光源が、このレーザーでは小さなチップの内部にすべてが集積されています。

このレーザーを使ってセンサーを組み立てれば、スマホサイズの機器でも周囲数キロの大気をモニタリングできる。そんな可能性を秘めているのです。

なので、例えばこのレーザーを数km間隔で町中や山に配置すると、周囲の気象状況や大気の不純物などのリアルタイムセンシングできちゃいます。

カメラの付け根の小さな基盤でAI処理をしてしまう

センシングとセットで活用したいのが、分析。

例えばGoogleのスマホ「Pixel」の最新モデルは、カメラの映像をクラウドにアップロードすることなく、スマホだけでAI処理できるのが特徴です。そこから一歩進んで、カメラに内蔵されたイメージセンサーだけでAI処理を可能としたのが、ソニーのエッジAI技術。

上の写真には小さなカメラが見えていますが、カメラの直下にあるソニーロゴが描かれた黒い基板、ここに搭載されたイメージセンサー内でAI処理ができるんです。つまり極論、このカメラさえあれば撮影した映像や画像を分析できちゃうわけですね。

さらに、ソニーはこれらの技術を「地球みまもりプラットフォーム」なるプロジェクトで活用していこうと考えているそうです。地球のあらゆる場所をセンシングし、集めたデータから異変の予兆を捉え、それを人々に伝え、行動変容を促すこと事で持続可能な地球や社会に貢献することを目指す、壮大な計画です。

あと、展示に使ってるテーブルが「オリジナルブレンドマテリアル」という、これまたソニーが独自開発したリサイクル可能な素材だったのも興味深かった。環境にもいいし軽いし、コレも素敵なアイデアだねぇ。そういやソニーのイヤホン、最近のパッケージは紙でできていましたね。

デジタルツインへの近道は、地理データのマッシュアップにアリ

最後はMapray(マップレイ)というオープンプラットフォームをご紹介。近年は現実の都市や環境をウェブ上に再現するデジタルツインが注目されていますが、例えば渋谷区ほどの大きさは再現できても関東全域をビルのレベルまで再現するのは困難。これを簡単&スピーディにやってしまおうという計画です。お手元のブラウザで実際のデモが動かせるのでぜひお試しを。

手法としては、政府やさまざまな企業が提供している地図データをクラウド上に集約させ、独自技術にてこれを最適化。ドック時開発のグラフィックレンダリングエンジンと協調して、美しく、高速に表示します。

いままでの3D地図は近くの表現はできても、遠景の表現は省略して表示をぼかしてしまったり、あるいはビルのテクスチャー表示に時間がかかったりしましたが、互いのデータの良いところを用いることで高速かつ高精度な地図の表示が可能になりました。開発者いわく、地理データのマッシュアップだそうな。

宇宙から地上までズーム! 映画なんかで見る表現ですが、これをwebブラウザ上でリアルタイムに操作できる。

これは衛星写真レベルから東京タワーの鉄骨の網目がわかるくらいまで拡大していく様子。似た動きは一般的な地図アプリでもできますが、Maprayはアプリではなくオープンソースであることや、ユーザーが自由に都市データなどをアップロードして利用できること、都市圏の見え方などがよりリアル(簡略化させてない)な点が違いです。

地理データは時が経つほど蓄積されていくものですから、すなわちMapray自身も進化し続けているわけです。

ソニーの技術見本市は、可能性の獣でした

我々のような消費者が開発現場の人とお話しする機会は、あまりないでしょう。でも、STEFで色んなブースを訪れてわかったのが、どのエンジニアも熱意がすごいってこと。聞けば聞くほど答えてくれる、1を聞けば10が返ってくるその姿勢に、アツい開発魂をひしひしと感じました。

この人は本当にテクノロジーが好きなんだな、この技術を面白いと思っているんだな。中の人が全力で楽しみながら仕事をしている姿勢こそ、面白いプロダクトが生まれる土壌なのだと思います。部署間を飛び越えた熱意は、やがて思いも寄らないプロダクトに結実するかもしれませんね。

空飛ぶネコちゃんから地球のセンシングまでこなす企業、それがソニー。やっぱり、ソニーって面白い!

Source: Sony

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