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セックス・ピストルズが記念コイン及びNFTを発売。そしてジョン・ライドンは意外なNFT発行

  • 2022年6月28日
  • Gizmodo Japan

Image: Twitter

70年代後半、ロックシーンを席巻したパンクロックの代表格セックス・ピストルズが、エリザベス女王即位70周年を祝し、1977年の女王の即位25周年を記念してリリースした「God Save the Queen』の記念コイン、それに付随するNFTを発売する。

トラブルメーカーの真骨頂、セックス・ピストルズが、またしても英連邦の女王に矛先を向けるのか?その真意はいかに?

文:米田智彦

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— Sex Pistols Official (@sexpistols) May 30, 2022

セックス・ピストルズ独自のPistol Mint記念コインとNFT

セックス・ピストルズのオフィシャルサイトの公式コメントは以下である。

「1977年の代表的なシングル『God Save The Queen』の再リリースを記念し、セックス・ピストルズ独自のPistol Mint記念コインが発売されます。ニッケルメッキを施したこのコインにはジェイミー・リードのアイコニックなアートワーク、エナメルのカラーインフィル、スタンプされた刻印鉄が施されています。このコインは、シルバーのエンボス入りクッション敷きのサファイア・ベルベットのプレゼンテーション・ボックスに収まっています。

この記念コインにはNFTのデジタル版が付属しています。NFTコレクションはミント(NFTの鋳造)時にランダムに割り当てられた数多くのデザインを特徴としています。NFTは一部の地域では入手できませんので下記の販売条件をご覧ください。これらのNFTは、NFTのためのスケーラブルで持続可能なエコシステムであるPalmネットワーク上でミントされます。Palmは(従来のブロックチェーンで採用されてきた)PoWシステムと比較して99.9%のエネルギー消費削減を実現しており、各NFTの二酸化炭素排出量はほぼゼロとなっています。NFTは、後日、専用のウェブサイト(The Pistol Mint)からアクセスし、ミントできます」

女王の祝典に一石を投じるべく、NFTには女王陛下の表情をモチーフにした、さまざまなデザインがランダムに登場する予定だ。裏面には象徴的な「セックス・ピストルズ」のロゴとユニオンフラッグの変形版が描かれている。

この記念コインは、6月中に数量限定で発売され、所有者は「The Pistol Mint」を通じて換金可能なNFTをミントする必要がある。その後、実在のコインとデジタルコインの両方が7月に到着する。彼らのアンセム(賛美歌)である「God Save the Queen」の再発行も含む、ピストルズの活動の慌ただしさを示すことになるやもしれない。

冒頭にもあるように、このピストルズのコレクションに含まれるすべてのNFTは、エネルギー効率が高く、地球に優しいPoS(Proof of Stake)プロトコルを採用したPalm Networkの提供によるものだという。なぜなら、2022年の現在、かつてのパンクスもアナーキストも市民も環境保護主義と手を取り合って人類の未来のために購買行動をするようになったからだ。

しかしである。ピストルズはその女王即位25周年の77年にシングルをリリースした後、即位式典の日にテームズ川のボートでゲリラライブを敢行し逮捕されているのだ。いかにもパンクの代表的アティチュード然としているが、本当のところのピストルズの王室に対しての本心というのは単純明快な反逆、というより、つかみどころのないものでもあるように筆者は感じてきた。

76年にアルバム『アナーキー・イン・ザ・UK』でデビューしたピストルズは反体制主義が強調され、ロックに新時代と革命をもたらしたバンドだった。60年代、若者のカウンターとしてビートルズをはじめとして世界を席巻したロックンロールだったが、70年代には巨大な産業になっており、そこには英国の労働階級の共感する部分はなかった。

「俺たちは大企業の金儲けの音楽になんかには絶対迎合しないぜ!」という意識が蔓延したところで、76年にパンクロックが登場し、ピストルズはその代表格とみなされていた。

産業ロックを批判したパンクという産業

しかし、そのパンクロックもマルコム・マクラーレンという一人の錬金術師によって産業として仕掛けられたものだったことは当時の若者たちが知る由もない。

71年、ファッションデザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッドとともにマクラーレンはブティック「Let It Rock」を開店。さらにマクラーレンは74年に渡米し、ニューヨーク・ドールズに惚れ込み、マネージャーを務めるまでになるが、バンドは解散してしまう。しかし、ただでは転ばない男、マクラーレンはニューヨークのアンダーグラウンドで勢いづいていたニューヨーク・パンクに影響を受け、そのアイデアを英国で具現化しようと目論む。

今の音楽ファンの多くはパンク発祥と言えば英国と思うはずだが、ところがどっこい、パンクはニューヨークベースのムーブメントだったのだ。

マクラーレンは英国に帰国後、「SEX」というボンテージファッションの店を経営。さらにストランドというバンドをパンクスタイルで売り出そうとする。そこに新たなボーカリストとしてジョニー・ロットンを加入させる。後のジョン・ライドンの誕生である。

ライドンを加えたバンドはセックス・ピストルズと名乗り、76年、EMIと契約しデビュー。ピストルズは商業的に肥大化し若者のカウンターではなくなった既存のロックへのアンチテーゼとして日本も含む世界中のロックファンの注目を集めることになる。

さらにベースのシド・ヴィシャスのカリスマ性も若者たちの喝采を浴びた。元々ヴィシャスはピストルズの熱狂的なファンでピストルズのライブ中にジャーナリストが邪魔でステージングが見えないと言ってチェーンで殴るなど目立った存在であり、いわばグルーピーのようなものだった。遡ると、ヴィシャスとライドンはファッションの専門学校時代からの友人関係であり、初代ベーシストがピストルズを脱退すると、マクラーレンの誘いでヴィシャスは念願叶ってベーシストとしてバンドに加入した。

ちなみに79年、ヴィシャスはドラックの過剰摂取で死亡しており、『シド・アンド・ナンシー』の映画化もあって未だにパンクのレジェンドとして君臨している。

現在、ファクトから音楽史を見れば、ピストルズは反社会的なマクラーレンのイメージ戦略で商業的に大成功を収めるという、なんとも皮肉なアーキテクチャーのバンドであった。商業ロックに反逆するという商業ロックだったのだ。ピストルズは解散後も再結成ツアーを行ない荒稼ぎしている。今回のコインとNFT発行とともに、ライドンはどこまでも拝金主義であるように見えるが、そのアティチュードさえ、パンクロッカーとしてのしたたかさや反逆精神として、共感を覚えてしまうのがロックファンの心情なのかもしれない。

ジョン・ライドンはエリザベス女王を祝福していた!

ちなみに、ピストルズが再リリースしたアルバム『God Save the Queen』は当時の年号に因み、A&Mレコードのバージョンを1,977枚、ヴァージンのバージョンを4,000枚限定で再発。どちらのバージョンにもオリジナル・アートワークが再現されている。

くだんの王室に対しての姿勢についてライドンは「女王が生きていて元気であることは誇らしいと思っている」と語り、『God Save The Queen』については「反王政主義ではあるけど反人間的ではない」と説明している。

「世間に言っておく必要があるが、みんな、俺が王室に反対していると考えているけど、それは違うんだ。むしろ、おめでたいと思っている。素晴らしい偉業だよ」

90年代、『トレインスポッティング』で名をあげ、のちに2012年ロンドンオリンピック開会式の芸術監督に選ばれることになったダニー・ボイルはピストルズの伝記映画『ピストル』を製作したが、「ジョン・ライドンがやっていることは好きだが、彼にはこの映画を気に入ってほしいとも思わないね。むしろ彼には批判してもらいたい」というコメントを発している。1956年生まれで20歳前後にパンクを経験した世代であるボイルもやはり、ライドンにはいつまでも悪態をつくパンクスであってほ欲しいという願望があるのだろう。クレイグ・ピアースが脚本を手掛け、ボイルが監督を務めた『ピストル』はディズニープラスで5月31日に配信される。

ピストルズのコインとNFTは、公式ストアとレコード・ストア・UKの両方で予約受付中で、価格は25(約4,000円)、配送先によって2.29ポンドからの少額の配送料が発生する。NFTに関しては購入者は後日、別のウェブサイト(The Pistols Mint)からアクセスすることができ、NFTを受け取るにはバウチャーコードを入力する必要がある。興味のある方は2022年6月中の予約販売であることにくれぐれもご注意を。2022年7月末までに商品とNFTは届けられるとのことだ。

セックス・ピストルズ初のNFTには、またもやロックファンが殺到しあっという間に売れ切れるに違いない。ピストルズは、どこまでもパンクであり、2020年代であろうが、パンクの王様、ピストルズ然としたままなのだ。

ジョン・ライドン単独でもNFT発行し、病人や慈善団体へ寄付

Image: ジョン・ライドン公式サイト ジョン・ライドンは自身のアートを認知症やアルツハイマー病患者の支援のためにNFTを発行

ピストルズのコインとNFTの話題を伝えたが、実はピストルズのボーカル、ジョン・ライドンもNFTの世界に参入している。それは4月18日(イースターマンデー)の世界同時発売であった。このNFTは国内外の認知症やアルツハイマー病の患者を支援するために、ライドンが1枚のアートからわずか100個のNFTグッズを作ったという。

このアートワークには、「生意気な猿」「必死な人々」「裸の真実者」「眼魂」などが描かれており、コレクションのプレミアムナンバー入りアイテムとして別売されている。「Mr Rotten's No.1」のNFTは、オリジナルプロモーションビデオのNFTとサイン写真NFTをバンドルしてオークションに出品された。100枚のNFTはすべて、右下にMr Rottenのデジタルサインが入っている。高解像度のオリジナル画像は全員に配布されるが、No.1 NFTは1つしか存在しない。

そして、「スピッツ・チャリタブル・トラスト」は音楽を通じて、社会的・経済的な現実、年齢、民族、障害、文化、その他の不利な条件によって孤立している人々を結びつける2013年に設立された慈善団体であるが、ライドンのNFTアートの売上および再販の5%の収益はその「スピッツ・チャリタブル・トラスト」に直接寄付される。ノース・ロンドンを拠点とするスピッツは、プロのミュージシャンをケアホームやデイセンターに派遣し、参加型の音楽セッションを通じて、認知症の人々の健康状態や認知機能を改善するために音楽の力を使っている。

ライドンのNFTはすべてカーボンニュートラルで、北アイルランドの「パラミリツリー」団体であるThe Phantom Planterと協力し、NFTの制作で発生する全ての炭素をオフセットしている。

かつてのパンクロックの荒くれ者のライドンも、ピストルズ全盛期から約半世紀を経て、慈善団体への寄付を行なうようになったというわけだ。これを良しとするか、「パンクスなのに偽善者かよ」と煙たがるかはファンの間でも意見が分かれるかもしれないが、ライドンは、パンク時代から常にマイノリティの味方であり、マイノリティのヒーローであったことだけは確かなことである。

訂正[2022/06/29]シド・ヴィシャス死亡時の状況についての記述を修正しました。

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