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近い将来、光合成を“再設計”できるようになるのかも

  • 2019年11月24日
  • Gizmodo Japan

英国リッチフィールド近くのトウモロコシ畑 Image: Bs0u10e0/Flickr

人口爆発による食糧難に備えられるか。

生物学者たちが複雑なタンパク質の構造を解明したことで、植物の重要なメカニズムが明らかになりました。この発見は光合成の仕組みの改良、ひいては穀物生産量の増加につながるかもしれません。

光合成は自然界のすばらしい発明ですが、だからと言って科学者らがその改良を止めたことはありません。Natureに発表された最新の研究では、英国シェフィールド大学のチームが、植物の電子伝達反応がどのようにその成長に大きく影響を及ぼすのかという新たな洞察を解明した方法について説明しています。

研究者らはこのメカニズムを光合成の「脈打つ心臓」と呼んでいます。この反応は、光合成の際に二酸化炭素を炭水化物へと変換する植物の能力を駆動するシトクロムb6fというタンパク質複合体の中で発生します。今回のシトクロムb6fのモデルは、光合成の裏にある力を増大させて、米と小麦といったもっと丈夫な植物を生産するためにゆくゆくは植物生物学者に活用されるかもしれません。

シェフィールド大学の科学者たちは、低温電子顕微鏡法を用いてタンパク質複合体の高解像度構造モデルを作りました。シトクロムb6fの複雑なスパゲッティのような形状を理解することで、光化学系ⅠとⅡという、植物細胞内に存在し光のエネルギーを化学エネルギーに変換する2つのクロロフィルタンパク質の間の電子移動を視覚化できたのです。

シトクロムb6fタンパク質の構造 Image: University of Sheffield

この新しいモデルを組み立てることで、研究者らはシトクロムb6fが通過する電子の流れをどのように活用して、プロトン勾配を強化させているかを見ることができました。この過程は、充電式バッテリーをコンセントにつなぐことに似ています。この「プロトンバッテリー」に蓄積されたエネルギーは、植物が細胞のエネルギー通貨であるアデノシン三リン酸(ATP)を合成するために使われます。

プロトン勾配は「バッテリーのように機能する」ので、「二酸化炭素から炭水化物への変換に不可欠な代謝産物であるATPの合成」を可能にすると、共同執筆者Matt Johnson氏は米Gizmodoへのメールで説明しています。「低温電子顕微鏡法によって植物のシトクロムb6f複合体の構造を手に入れたが、それは膜を通過するプロトンの数を倍にする電子伝達(分子)をいかに処理するかを示している」とのこと。

Johnson氏は、光合成の過程の効率を調整する重大な役割から、それを「光合成の脈打つ心臓」と呼んでいます。

「最終的にこの反応は、植物が二酸化炭素を炭水化物に変えるために必要なエネルギーと、世界的な食物連鎖を支えるバイオマスを提供する」と、この論文の第一著者でシェフィールド大学分子生理・バイオテクノロジー学科の大学院生Lorna Malone氏は声明の中で語っています。

この新しい研究よりも前に、他の科学者らはシトクロムb6fのレベルを調整することで大きな植物を育てることは可能だと示してきました(こことここ)。実験室の条件下では、植物成長を30%ほど高めることが可能だったこともあります。最新の研究は、そのプロセスがどのように機能するかをさらに解明しており、やがては光合成自体を再設計と改良するために使用できるかも、という見解を示しています。

「シトクロムb6f複合体の成分のいくつかを増やすと、植物の増加につながることは分かっている」とイリノイ大学博士課程修了の研究者で、この研究には携わっていない、植物生理学者のAmanda Cavanagh氏は米Gizmodoへのメールに綴っています。「しかし、改良の対象となる成分を見分けるのは難しい。なぜなら、植物からタンパク質構造を得ていなかったから。これがなければ、複合体の中のどこで化学作用が起きているのか分からなかった」

彼女いわく、今回の研究はシトクロムb6fの構造をついに明らかにしていて、その作用が複合体内のどこで起きているのかを示しながら機能の仕方についての新たな発見があったとのこと。 「この情報を基に合成生物学のツールを使って、光合成のこの律速な段階の改良を狙い、重要な食用作物において収穫高を増やせるようになる」とCavanagh氏。

同氏は今年の初めに、植物が光呼吸の際に合成する有毒な副産物を取り除けるようにするための調整といった、特定の遺伝改変が光合成をさらに改良するかもしれないと説明する論文を共同執筆しています。ゆっくりですが確実に、私たちは母なる自然を改良する科学的な見識を得ています。光合成はすばらしいことですが、2050年には97億人に達すると予想されている世界人口を養いたいと思うのであれば、さらに改良していく必要があるのです。

Source: Nature (1, 2), Plant Physiology, World Resources Institute, United Nation

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