サイト内
ウェブ
緑のgoo 10th Anniversary 緑のgoo 10th Anniversary

2017年に起こったサイエンス事件簿

  • 2017年12月27日
  • Gizmodo Japan

Image: NASA/JPL-Caltech

サイエンスって、やっぱりすばらしい!

とうなずけるニュースが今年も盛りだくさんでした。宇宙の謎を解き明かす新しい天文学。人類のルーツ。ヘンテコなかたちの新生物たち。この世界のどこかでヘンテコなかたちの新生物がうごめいていると思うだけで、なんだか楽しくなります。

このような新発見はひとえに天文学者、生物学者、考古学者、素粒子物理学者にいたるまで、世界中の科学者のみなさんが探求し、分析し、論文をまとめ、科学者ではない私たちにもわかる言葉で知識を広めてくれたからこそでした。

以下は、米Gizmodoのサイエンスライター、Ryan F. Mandelbaum記者により厳選された2017年のサイエンスニュースです。最後にオマケもありますよ。

天文学史を大きくぬりかえた中性子星の衝突

2017年は「重力波天文学」の幕開けでした。

ぶつかり合うふたつの中性子星。 Image: National Science Foundation/LIGO/Sonoma State University/A. Simonnet

アインシュタインは、1915〜1916年にかけて発表した一般相対性理論とよばれる一連の学説のなかで、重力波というまったく新しい存在を予測しました。けれどもその後だれも重力波を直接検出できないまま、100年がたちました。

重力波とは宇宙を構成する物質の振動です。太陽より何倍、何十倍もの質量を持つ巨大な天体同士がぶつかり合った衝撃が重力波となり、時空をゆがめながら宇宙に広がっていきます。例えるならば、古池に蛙がとびこむ時に広がっていく波紋のような…。そしてまさに、重力波は「音」として検知されるのです。

それはそれは小さな音なのですが、ついに2016年、LIGO(Laser Interferometer Gravitational Wave Observatory、直訳:レーザー干渉計重力波観測所)での直接検出に成功しました。遠い昔、はるかかなたの銀河系でふたつのブラックホールがぶつかり合った重力波が地球に届いたとき、小さいけれどまぎれもない「ぷよっ」という音が観測されたんです。LIGOの研究者チームはその後も何度か重力波の観測に成功し、見事2017年のノーベル物理学賞を受賞しました。

さらに2017年10月。LIGOが新たにとらえた重力波は、1億3000万光年離れた銀河からやってきました。そして同時に可視光、X線、電波、ガンマ線などが地球にふりそそぎ、可視光さえも飲みこんでしまうブラックホールの衝突ではないことを告げていました。ふたつの中性子星が衝突した時の重力波が観測されたのは、これがはじめてのことでした。

重力波のもととなった中性子星を調べた結果、いろんなことがわかってきています。そのひとつに、宇宙を構成している金、プラチナ、ウランなどの重元素は、このような中性子星同士の衝突から由来しているのだとほぼ断定できたそうです。さらに宇宙がどのくらいの速さで拡張しているかを解き明かすカギも発見したとか。

いままでの「見える宇宙」に重力波天文学の「聞こえる宇宙」というレーダーが新たに加わり、今後も大発見が期待できそうです。

素粒子がギザのピラミッド内に新たな空間を発見

エジプト考古学と素粒子物理学?

珍しい組合わせですが、このふたつをミックスして斬新な実験が行なわれました。今年の11月、名古屋大などの国際研究チームが宇宙線をレントゲンのように使ってピラミッドを「透視」し、クフ王のピラミッドにいままで知られていなかった空間を発見したのです。

クフ王のピラミッドの断面図。最上部には未知の空間が広がっているらしい Image: ScanPyramids Mission/Vimeo

宇宙を飛び交っている宇宙線は、地球の大気と反応すると「ミュー粒子」を生みます。このミュー粒子は透過性が高いので、わたしたちの身体もピラミッドもすり抜けていってしまいます。同じ性質を持つX線のように使ったら、ピラミッドを破壊することなくその内部を写し出せるのではないか…こう考えた研究者たちが、ミュー粒子がどのようにクフ王のピラミッド内を通過していくかを観測した結果、なんと大回廊の真上に巨大な未知の空間が広がっていることがわかったそうです。

これはものすごい大発見かもしれません。なにせ、このピラミッドはクフ王の墓でありながらまだクフ王本人のミイラが見つかっていないんです。でも、発見した研究チームはまだなにも断定はできないといいます。王の間かもしれないし、たくさんの小さな空間がつながっているのかもしれません。はやく真実が知りたいところですが、実地調査にはエジプト当局の許可を得る必要があり、まだまだ時間がかかりそうだとか。

まったく新しい生物たち、でもどこかで見たことある…?

今年も多くの新種の生物が発見されました。

Image: GIPHY

一番インパクトがあったのは、やっぱりこれ。フィリピンの浅瀬の泥に深くもぐりこんで暮らすエントツガイです。船に使われている木材を食い荒らしてしまうフナクイムシの一種ですが木は食べず、かわりに泥の中の硫化水素を食べて、それを体内に寄生させている細菌に分解してもらい、エネルギー源にしているそうです。有毒なものをエネルギー源にしているからこそ、こんな妖しい黒い姿をしているんでしょうか。

所変わってフロリダのキーズ沖では、新種のオオヘビガイが発見されました。英語では「worm snail」というそうですが、ミミズにもカタツムリにも似ていません。エサを捕るために細長い体の根元から唾を吐き出すという、ちょっと残念なかんじの生き物です。もともとこの海域にはいなかった生物だそうで、外来種として生態系を壊しかねないからと発見当初からやっかい者扱いされているのも残念です。

そして、ラストはオーストラリアの海洋研究船「RV Investigator」が見つけた新種のホシムシです。さて、このみっつの生物のかたちに共通点があるとしたら、それはなんでしょうね?…あ、やっぱり?

巨大な氷の塊が南極大陸の氷棚から分離

だれが認めようが認めまいが、地球温暖化は確実に南極の氷を溶かしています。そのせいかどうかはまだはっきりしていませんが、今年前半には南極の「ラーセンC」とよばれる棚氷に巨大な亀裂が走りました。亀裂は次第に広がっていき、やがて巨大な氷のかたまりが南極から切り離されました。面積は約5,800平方キロメートルで、まるっと茨城県ぐらい。いままで記録に残っているかぎりで最大級の氷山だそうです。

NASA Earth/Facebook

大きさがわかりにくいですが、間近だともはや氷山というよりは氷島。ラーセンCの亀裂は1980年代から確認されていたのも事実ですし、棚氷の分離自体も珍しいことではありません。なので完全に地球温暖化のせいだとは言いきれないのですが、またいつ新たな氷島が分離してもおかしくない状況なんだそう。この氷島もいずれは海に溶けて小さな氷に分離していくだろうと言われています。なにしろ、温暖化が海を暖めていますから。

人工子宮で育つ羊

この袋のなかに入っているのが羊でなく、人間の赤ちゃんだったら…と思うと気味が悪いですが、2017年は羊の超未熟児を人工子宮内で育てることに成功した年でもありました。

人工子宮によって育まれる羊の胎児 top image: Figure 1(b)(c): UA/UV Biobag system design Nature Communications

人工子宮を使った動物実験は以前にも行われていますが、今回は胎児自身の心臓が血液を循環するポンプの役わりを担い、より本物の子宮に近づきました。中央に見えるのは胎児のへその緒で、酸素を供給する機械とつながっているのだそう。この中で4週間にわたって順調に成長した羊の赤ちゃんは、2017年4月時点ではまだ元気だったそうです。

出産というプロセスから母親をとり除くことが狙いではなく、むしろ早産で未熟児として生まれてきても安定した月齢まで成長できるようにと開発されたそうですが、まだまだ人間の赤ちゃんに使うにはほど遠いとか。とはいいつつ、将来もし人間にも適用されたとしたら、もうそれはまちがいなく『マトリックス』の世界ですね。

地球外生命体の可能性?

2016年はもっぱらプロキシマ・ケンタウリの惑星、プロキシマbの話題で持ちきりでした。生命が存在できるとされるハビタブルゾーンに位置しており、もし地球のような大気を持っていれば液体の水もあるかもしれないと考えられています。おもわず「宇宙人いるのでは?」と期待せずにはいられませんが、どうやらプロキシマ・ケンタウリが活発すぎて生命を維持できない可能性も出てきました。プロキシマbは地球から4.25光年しか離れていないので、探知機を飛ばして探ってくるというのもできなくはないそうですが、人類の移住先の候補としてはちょっと厳しいかも。

アーティストによるTRAPPIST-1fの風景 Image: NASA/JPL-Caltech

そんななか、今年も新たにいくつもの地球型惑星が発見されました。まず地球から40光年離れているTRAPPIST-1ですが、太陽みたいな赤色矮星のまわりに地球みたいな惑星がそろった太陽系、すなわち、私たちが住んでいるこの太陽系とよく似た環境のようです。同じく40光年離れている惑星、LHS1140bには、プロキシマbよりもずっと穏やかで安定した温度環境が整っていると考えられ、こちらにも生命の存在に期待がかかります。

もっと身近なところだと、くじら座τ星(12光年)やおとめ座のRoss 128(11光年)も太陽系と似ているそう。どちらの惑星もハビタブルゾーン内に位置する可能性大です。

いろいろな発見があった2017年のおさらいとしては、地球のような星を探すのであれば暗くてあまり目立たない赤色矮星の惑星がねらい目。そして、地球外生命体を探すのであれば、グッと身近なところで土星の衛星のひとつ、エンケラドゥスが穴場です。太陽からの距離は遠いにも関わらず、エンケラドゥスを覆う分厚い氷の下にはじつは暖かい海と、生命を生み出すのに必要な要素がすべてそろっていることが、最近の調査で明らかになりました。これだけたくさんの可能性を秘めた宇宙なのですから、どこかに宇宙人がいてもおかしくないです。というか、もうすでにいるかもしれない?

人類は人類が考えていたよりもずっと古いらしい

今年の1年で、人類史のふり幅が最大10万年も伸びました。

われわれホモサピエンスは約20万年前にアフリカで誕生した、というのが通説でしたが、今年新たに発見されたホモサピエンスとみられる骨の化石から推測するに、30万年前ぐらいにはすでにアフリカ大陸中に広がっていた可能性が高くなりました。

モロッコの洞窟で発見されたホモサピエンスの頭骨 Image: Philipp Gunz, MPI EVA Leipzig

進化生物学者、考古学者、人類学者などの研究チームが発掘調査を行ったモロッコの洞窟では、人類の発祥の地といわれているアフリカ西北部から離れているのにかかわらず、最古のホモサピエンスよりも約10万年さかのぼるホモサピエンスの化石化した骨が5体見つかったそうです。

そしてこの発見を裏付けるかのように、別の研究チームはホモサピエンスが27万年前にはすでにアフリカから旅立っていたと発表しました。またさらに別の研究チームは、ホモサピエンスが現在の南カリフォルニアあたりに13万年前から住んでいると主張していますが、これには賛否両論あるようです。

いままで歴史の教科書にのっていた人類の進化の軌跡が、大きくゆさぶられた1年でした。歴史というのは石に刻まれているわけではないことを、石に刻まれた化石が証明したんですね。そして、また新しい発見があれば、歴史はどんどん古くなっていく可能性があるわけです。

琥珀のなかに恐竜の羽毛や鳥が丸ごと発見

古いものといえば、今年は貴重な琥珀がたくさん発見された年でもありました。

琥珀のほとんどはミャンマーから出土されたもので、なかには新種の虫、1億年前の羽根がフサフサ生えた恐竜のしっぽ、古代の鳥のヒナがまるまる一匹入っていたものもあったそうです。さらに『ジュラシック・パーク』並みの大発見だったのが、サルの血をおなかいっぱいに吸ったダニが閉じこめられたドミニカ共和国の琥珀でした。

琥珀のなかに閉じ込められた古代の不思議 Image: Science direct

残念ながら、琥珀は遺伝子情報をうまく保存できないので映画のようにはいかないそうですが、従来の化石とは違って大昔の生物の姿を3次元のままで見せてくれます。

これらの琥珀の多くはふつうに市場で売られていたらしいので、まだまだお宝が眠っている可能性大ですね。

太陽系外からの天体

いままで地球で観測された彗星は、すべて太陽系内で発生したものでした。しかし2017年10月、まったく異質なものが猛スピードで地球のそばをかすめていったんです。全長1キロメートル近く、弾丸のようなかたちをしたこの天体は「 Oumuamua(オウムアムア) 」と名づけられました。ハワイ語で「遠くからはじめて来たメッセンジャー」という意味だそうです。

アーティストによるオウムアムアのイメージ画 Image: ESO

ふしぎなことに、オウムアムアを構成している物質は金属と炭素で彗星と同じだったのにも関わらず、彗星のいわゆる「ほうき星」のような尾っぽは見当たらず、輪郭もふわふわしていませんでした。オウムアムアの出現により、じつはこのような天体が太陽系の外にはたくさん存在しているのではないかと憶測されるように。

正直、こんなものが地球に体当たりしてきたらひとたまりもありません。太陽系内で発生する隕石にぶつかるよりもずっと危険です。

でももしこんなものが太陽系の外にうようよしているとしたら、見る機会はまたあるかもしれません。ぜひとも安全な距離で観察したいものです。

量子コンピューターがより身近に

量子コンピューターが実用化にいたるまで、まだまだ時間がかかりそうです。それでも2017年は量子コンピューターの黎明期といえるかもしれない多くの進歩がありました。

量子ビットプロセッサー Image: D-Wave/Wikimedia commons

「量子コンピューターって、なんだっけ?」という方がもしいたら、こちらの記事も見てみてください。たぶんこういうことなんだと思うんですが、量子コンピューターはいままでのコンピューターとは計算の仕方そのものが違うんですね。今わたしたちがこれを読むのに使っているコンピューターは、データが「0」と「1」で表現されるバイナリー(2進法)方式です。ところが、量子コンピューターというのは「0」と「1」に加えて「0と1のどちらでもある」重ね合わせの状態があるそうで、演算中は「0と1のどちらでもある」んですが、演算が終わって答えが出たら「0」と「1」のどちらかになる。この「どっちも状態」をうまく使うことにより、計算がケタ違いに速くなるそうなんです。そのスピードは現在のコンピューターの一億倍とか、それ以上とか言われています。

今年、IBMは22量子ビットプロセッサーをクライアント向けに開発しました。50量子ビットのシステムも開発中だという噂です。他にも51量子ビットと53量子ビットプロセッサーを搭載したマシンが物理学の分野での発見に貢献したそうですが、こちらはいずれも汎用ではないとのこと。そしてGoogle(グーグル)も負けてはいられないとばかりに、現在50量子ビットプロセッサーをテスト中だそうです。

今後量子コンピューターがメジャーになってきたら、「それってなんだっけ?」とは聞けなくなりそうなので、今のうちに理解しておいたほうがいいですね。来年までにもうちょっと勉強しておきます。

そして近い将来、複雑な交通パターンのシミュレーションや、分子の動き、安全なデータの保管法など、あらゆる分野で量子コンピューターの恩恵をうけることになるのかもしれません。

おまけ:天王星はおならのニオイがするはずなんだ

Image: Ryan F Mandelbaum/NASA/Walter Baxter

これは科学者の研究の賜物ではなく、米GizのMandelbaum記者のタワゴト(趣味?)なんですけどね…。天王星はおならのニオイがするはずなんです。たぶん。

それはさておき、2018年もサイエンスにとって濃厚な年となりますように!

Image: Gizmodo US via NASA/JPL-Caltech
Source: KAGRA 大型低温重力波望遠鏡, BBC News, Facebook, GIPHY

Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US[原文]

(山田ちとら)

あわせて読みたい

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
copyright 2018 (C) mediagene, Inc. All Rights Reserved.