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秋の行楽にオススメ! 建築と庭の交響曲「三溪園」を10倍楽しむための『三溪園の建築と原三溪』

  • 2022年10月14日
  • GetNavi web

横浜の本牧に「三溪園」という庭園があるのをご存じでしょうか? 広大な敷地に、見事な庭や建物が配された場所です。「三溪園」という命名は、創設者である原富太郎の号「三溪」にちなんだものだといいます。一個人がここまで立派な庭を有していたとは、にわかには信じられないほどです。かつての日本には、イギリスの荘園領主のような存在があったのだと、驚かないではいられません。『三溪園の建築と原三溪』(西和夫・著/有隣堂・刊)は、こうした希有な存在である「三溪園」について、丁寧に解説し、導いてくれる書です。

 

原三溪が作った広大な庭園

原三溪こと、原富太郎は、 絹の貿易によって、豊かな富を蓄えた実業家です。ただし、お金儲けだけに奔走した人ではありません。美術品の収集家としても有名で、個人所蔵とは思えないほど見事な美術品を集めました。「三溪園」はそんな三溪が、自邸として住むために作られたものです。ただし、原三溪はこの庭を独占しませんでした。1906年に、市民に公開し、一般の人が楽しむことができるようにしたのです。

 

私もこの夏、出かけました。緑まぶしい丘に抱かれるように大きな蓮池があり、心を潤してくれます。庭園には四季折々、美しい花が咲き乱れますので、一年を通じて、様々に面影を変える庭を楽しむことができます。春には桜が咲き、夏には蓮の花を楽しむことができます。さらに、秋は見事な紅葉にうっとりし、冬は冬で趣のある庭に静寂な時を感じることができるなど、工夫が凝らされています。

 

「三溪園」の見事さは、庭だけに限ったことではありません。庭を歩いていると、様々な建物に出会うことができます。出会うと言うより、出くわすと言いたくなるほどです。樹木の間から、住宅や茶室、お寺の本堂などが、ふと姿を現すのです。「まるで建築博物館のようだ」と言われるのはもっともなことだと、納得します。こうした多種多様な建物が、周囲の花や木々と呼応しあうかのように、その美しさを競うのですから、その魅力の多面性にため息が出ます。

 

「三溪園」の建物には、大きな特徴があります。それは、建物が新しく建てられたものではなく、あちらこちらから移築されたものだということです。乱暴な言い方をすれば中古なわけですが、ただの中古ではありません。今にも朽ち果てそうな建物をわざわざ移築し、気が遠くなるような煩雑さに耐え、手をかけてなおし、新しく再生させるのです。移築する前には、今にも崩壊しそうな建物もあったといいます。新しく建てたほうが、手間もかからず、経費も輸送費も不要で、経済的であったはずです。しかし、原三溪はそれをしませんでした。一気に引き倒す代わりに、崩壊しかけた建物を新しく蘇らせることに専念したのです。実業家でありながら、同時に、優れた美術家であることを感じさせるエピソードだと思います。

 

建築と庭の交響曲

三溪園の見所は? と問われると、あまりにもたくさんあり、どれから紹介したらいいのか迷います。『三溪園の建築と原三溪』には、最初に建物の配置が掲載されていますので、それを参考にしながら、見て歩いてはいかがでしょう。おすすめのコースは以下のようになります。

 

まず正門を入り、左に大池、右に蓮池を見ながら進みます。大池の水際に藤棚があり、蓮池の奥が睡蓮池になっています。睡蓮池の右には、三溪が自邸として建てた茅葺きの大きな建物があります。後に鶴翔閣と名付けられたものです。

 

さらに進むと、管理事務所と三溪記念館があり、事務所の右手に御門と呼ばれる立派な門があります。記念館は三溪を理解するために、是非、立ち寄って頂きたい場所です。御門の右手には白雲邸と呼ばれる建物があります。三溪が隠居所として建てたものだそうです。

 

白雲邸の塀に沿って行くと、正面に臨春閣があり、さらに進むと旧天瑞寺寿塔覆堂があります。三溪園で最も早く移築された建物です。他にも、月華殿、春草蘆、旧燈明寺三重塔などなど、様々な建築が考え抜かれた配置で建てられています。

 

こうした建物を取り囲む庭が四季折々、違う姿を見せるので、行く度に違う景色を楽しむことができます。もし、順列組み合わせをしたなら、その数は無限大となるでしょう。

 

『三溪園の建築と原三溪』はこうした三溪園の姿を「建築と庭の交響曲」と、表現しています。まさにぴったりの言葉だと思います。交響曲を構成する一つ一つの建物に、大変、詳しい説明があるので、それを参考にしながら、三溪園を堪能していただきたいと思います。

 

コロナ禍のもと、どこかギスギスしてしまう心と運動不足の体に息を吹き込むことができるに違いありません。そして、改めて思うのではないでしょうか。日本人に生まれて良かった、と。私はそう思いました。また出かけてみるつもりです。

 

【書籍紹介】

三溪園の建築と原三溪

著者:西和夫
発行:有隣堂

横浜市中区本牧にある三溪園は、生糸貿易で財を成した原三溪(富太郎)が、自邸を開放した庭園である。園内には、各地から移築された多種多様な建築物が散りばめられ、「建築の博物館」とも評されている。原三溪は、古美術の収集や近代日本画家の育成に重要な役割を果たしたことはよく知られているが、建築に対しても高い見識をもっていた。本書は、明治三十九年(一九〇六)の開園以来一〇〇年を過ぎた今、忘れかけられた三溪園の建築物の、歴史と価値や移築の経緯などを紹介し、園内を散策しながら、それぞれの建築の鑑賞へと誘う。
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