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【西田宗千佳連載】急速に進化する「絵を描くAI」の衝撃

  • 2022年10月7日
  • GetNavi web

Vol.119-1

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、キーワードを入れるだけで高精細なイラストが描けるAIサービス。画家やイラストレーターの仕事を奪ってしまうのだろうか。

↑デビッド・ホルツ氏が開発した画像生成AIサービス「Midjourney」。Discord上でAIにどのような絵を描いてほしいかをキーワード、または文章で指示すると数分で非常に高精度な絵を生成することができる。トライアル版は25枚までの画像生成が無料で、有料版は月額10ドルから利用が可能

 

絵を描く概念が変わる2つのAIサービス

2022年の夏は「精緻な絵を描くAI」の話題が急速に盛り上がった。

 

火付け役となったのが、7月にベータ版が公開された「Midjourney」であるのは間違いない。Midjourneyは、英語で命令を与えて絵を描かせる。日本人から見れば、英語で命令を与えるのは少々大変ではある。だが、結果を見れば、その出来映えが劇的なものであるのは明白だった。映画やゲームのコンセプトアートのように印象的な絵が、ほんの数十秒で完成してしまうのだ。

 

Midjourneyは本来有料(月額10ドル〜)のサービスである。しかし、20枚ほどの絵を“お試し”として無料で描くことができ、これにより絵を描く命令を工夫していくことの楽しさが拡散され、世界中で一気に盛り上がった。

 

そして、“絵を描くAI”の動きは、8月末になってさらに加速する。Midjourneyに勝るとも劣らない能力を持つ「Stable Diffusion」が公開されたからだ。しかもこちらは、オープンソースの形をとっていたので、無料で使うこともできるし、別の形に作り変えることもできる。Web上でなく、GPU搭載のゲーミングPCなどにインストールして使うバージョンが生まれたかと思うと、命令を英文でなく、ラフな絵や定められたキーワードの選択で描く機能を追加したモノまで用意されている。

 

さらに、Stable Diffusionを基にしたと思われる「お絵描きAI」は日々増えており、いまやその数を把握するのも難しい。

 

Midjourneyも、8月末にはさらに機能がアップデートされ、Stable DiffusionやほかのAIと競うように絵の質を上げている。

 

単に絵を描くことと絵で表現することは異なる

これらのAIが作り出す絵は完全なものではない。腕や指などのディテールがおかしい場合もあるし、命令を正確に認識できず、妙な内容を描くこともある。絵が得意な人から見れば、特に不自然なものに感じられるだろう。

 

だが、絵を描くのが苦手な人から見れば、みるみるうちにリアルな絵ができあがっていく様はまるで魔法のように感じられるに違いない。

 

8月26日には、ひとつの衝撃的な出来事も起きた。ジェイソン・アレンという人物が、米コロラド州で開催された品評会にMidjourneyによって描かれた絵を出したところ、デジタルアート部門で1位を獲ってしまったのである。このことから「AIはイラストレーターの仕事を奪う」「AIが画風を奪う」といった反発が起き始めているのも事実だ。

 

だが、筆者の考えは違う。

 

AIはクリップアート集やフォトストックの活用シーンを奪うかもしれないが、イラストレーターや画家の仕事は奪わない。彼らの本当の力は、どんな絵を描くべきか、どう表現すべきかの詳細を発想し、判断できることにあるからだ。それはAIの仕事ではなく、人間が行うもの。だから、絵を描くAIも、絵が描ける人ほど活用できる、ということになるのだ。

 

一方で、この種のAIはなぜここまで急速に進化したのか? 法律や権利上の問題はどうなるのか? その点は次回以降で解説する。

 

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