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「こだわり」は「固執」を生み人生を束縛する–自分の心を自由にするための指南書『なにものにもこだわらない』

  • 2022年10月4日
  • GetNavi web

昔からネットでものを買うのは大好きだったんだけれど、コロナ禍の2年半でネット購買欲がさらにパワーアップしてしまった。そんななか気づいたのは、「こだわりの」というキャッチフレーズのグッズを買っていることが多いという事実だ。

 

こだわりって何だろう?

筆者は、何に関しても何のこだわりもないつもりで生きている。それなのに、なんで? 深層心理的なところでこだわりの品々にこだわり続けているから、こういうことになるのだろうか。

 

「こだわり」という言葉に明確な基準はない。それに、シチュエーションによっては良い意味にも悪い意味にもなる。ポジティブなかかわり方をしている限りは問題ないのだろうが、一度関係をこじらせてしまうと、さまざまなことがうまく回らなくなっていくみたいだ。ネガティブな意味でのこだわりとは何なのか。

 

自分で自分に縛りをかけるのはやめよう

『なにものにもこだわらない』(森博嗣・著/株式会社PHP研究所・刊)は、ごく端的に言うなら、ネガティブな意味でのこだわりとの関係の断ち方を教えてくれる本だ。常識とかその場の空気、前例、他人の目。自宅でも学校でも職場でも、一人でいても集団の中にあっても、人間は何らかにこだわり、とらわれているのかもしれない。こうしたものはしがらみとか規範とか、場合によってはコモンセンスという言葉で表されることもあるだろう。

 

森氏は言う。何か一つに拘るよりも、あらゆることを試した結果成功を手に入れた人のほうが多いはずだ。だから、臨機応変に考えて自由に生きよう。ネガティブな意味でのこだわりとは、必要以上に固執することにほかならない。自分の手で自分から自由を奪ってしまうことだ。森氏は、こういう方向性の思考は、次のような言葉で綴られている。

 

なにものにも拘らないから、仕事や家庭にも拘りはない。こうしなければならない、というものを全部取り払って、僕は以前に比べてますます自由になった。そう、拘らないことで目指すものは、「自由」なのだ。

『なにものにもこだわらない』より引用

 

こだわりという言葉で自分に不必要な縛りをかけてしまっている人があまりに多い。森氏の眼には、そんな世界が映っているのかもしれない。

 

死生観まで含む哲学書的な内容

章立てを見てみよう。

 

第1章 「拘り」は悪い意味だった。

第2章 「拘る」のは感情であり、理性ではない。

第3章 「拘らない」なら、その場で考えるしかない。

第4章 生きるとは、生に拘っている状態のことだ。

第5章 新しい思いつきにブレーキをかけない。

第6章 自由を維持するためにはエネルギィが必要だ。

第7章 死ぬとは、死に拘るのをやめることだ。

第8章 拘らなければ、他者を許容することができる。

第9章 優しさとは、拘らないことである。

第10章 拘らなければ、臨機応変になる。

 

日々の生活での思いから死生観まで網羅した内容は、哲学書のような印象を受ける。目次を見ただけで、何かに拘ることは自分に縛りをかけ、自らの手で可能性を奪ってしまうことなのかもしれないという思いが強まる。

 

ルールを決めない

ただ、森氏は何にもこだわらないという姿勢にそこまで固執しているわけではない。そのあたりのスタンスがまた心地よいのだ。

 

「ルールを決めない」という方針は、それ自体がルールになりかねない。「なんでも」とか「絶対に」というものを排除する方針なのだから、すべてに例外なく当てはめる姿勢が間違っている、と考える。「だいたい、こうありたい」という方向性を維持していく。そんな姿勢というか生き方が、僕が望んでいることだ。

『なにものにもこだわらない』

 

そう。一番大切なのは「だいたい、こうありたい」というくらいの方向性なのかもしれない。確かに、こだわらないことを意識しすぎるあまり、それにとらわれてしまう人もいるはずだ。それでは意味がないし、少なくとも自由な状態ではなくなってしまう。

 

“だいたい”という感覚で生きる

筆者は、作家という職業とこだわりの関係を記した次の文章にさまざまな意味での本質を感じ取ることができた気がした。

 

拘らないことについて書くのは、けっこう難しい。何故かをいうと、そもそも拘るから文章が書ける。作家は、なにかに注目し、じっと見据えて考える。その対象に感情移入して、言葉を絞り出す。その一時は、つまり、書いている最中は、それに拘りつくすことになる。

『なにものにもこだわらない』より引用

 

だからこそ、文章を書くことを仕事にしている人間は特に「だいたい、こうありたい」というくらいの意識が大切なのだと強く思う。コモンセンスと呼ばれるものと自分とのバランスを取り、距離感を保っていく上でも、不可欠な感覚に違いない。だからこそ、何事に対してもフレキシブルでいたい。あ、それも拘っていることになっちゃうから、だいたいのことに対してだいたいフレキシブルでありたい、と言わせていただいておくことにする。

 

【書籍紹介】

 

なにものにもこだわらない

著者:森博嗣
発行:PHP研究所

「拘る」とは「自分はこれだと決め込む」「一度決めたことに固執する」という意味である。趣味、健康、社会のしがらみ、生き甲斐など、人間は生きているとさまざまなものに拘りたがる。否、拘らないと生きていけないと思い込んでいる。しかし、拘ることは生を不自由にし、新しい発想を妨げる要因になる。座右の銘を「なにものにも拘らない」と決めてから20年以上経つ人気小説家・工学博士の珠玉の名作、待望の文庫化!

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