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親子4人それぞれに「濃厚」で「密」な夏を過ごした映画監督の日常

  • 2022年9月11日
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「足立 紳 後ろ向きで進む」第29回

 

結婚20年。妻には殴られ罵られ、ふたりの子どもたちに翻弄され、他人の成功に嫉妬する日々——それでも、夫として父として男として生きていかねばならない!

 

『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞、『喜劇 愛妻物語』で東京国際映画祭最優秀脚本賞を受賞。2023年のNHKの連続テレビ小説『ブギウギ』の脚本も担当。いま、監督・脚本家として大注目の足立 紳の哀しくもおかしい日常。

 

【過去の日記はコチラ】

 

8月1日(月)

昨日、キャンプから帰宅した息子の熱は下がったものの、住んでいる練馬は気温38度超えで息子はまだぐったり。この暑さの中、外に出ると息苦しいが9時に教育支援センターへ。息子のプレイセラピーのフィードバックを妻と共に受ける。

 

「不全感がある、友達に相手にされていないことを感じている様子、テンションが高くなると社会的なルールが守れなくなる(相応しくない大きな声を出しはしゃぐ、ハナクソをほじる、トランプなどで負けると泣いてしまう)などが課題」とのこと。

 

なんとなくだが、かすかに息子の成長を感じていたので、もう少し前向きな言葉を聞けると思っていた私と妻は少々落ち込む。が、カウンセラーの方もウソを言うわけにいかないだろう。こちらとしても気休めみたいな言葉は聞きたくないが、でも、ついつい耳触りのいい言葉を期待してしまう。分かっちゃるけどなかなかに難しい。

 

8月2日(火)

今日は娘の高校説明会に私が付き添うはずだったが、塾の先生に「その学校、口コミヤバいよ」と言われたとかで、ドタキャン。塾の先生が本当に「やばいよ」と言ったか言ってないかは分からないが、とりあえずは行ってみないと分からないだろうに。しかし、ここで無理やり連れて行っても大ゲンカになるだけなのでグッと我慢して仕事をするも、イライラして捗らず。受験生の娘もなかなか机に向かえない。親子で机に向かえずイライラしているのみ。

 

熱の下がった息子がゲームをしたいとぐずりさらにイライラがつのる。夏休み中は、家に一日中いるときはゲームは3時間以内と普段の倍以上の時間にしているのだが、「みんなもっとやっている!」とうるさい。妻のパソコンでホラー映画(『ミスト』(2008年公開・監督フランク・ダラボン)を見せてどうにか黙らせる。

 

8月5日(金)

早朝から仕事。通っているファミレスの空調が調子悪く、汗だくになるが、冷たいスイーツを爆食いしながら仕事はとても捗った。

 

夜、出版社の方と妻と慰労会。考えてみると、今回の担当編集者の方とお酒を一緒に飲むのは初めてだし、これまで打ち合わせで話すだけだったので、ほとんど仕事の話しかしていなかった。だからこうして仕事以外のいろんな話ができた今晩はとても楽しい時間だった。

 

22時ごろ、息子を預けていたママ友の家に迎えに行くと「今日は泊まりたい! 泊まらせて!」と主張。ママ友が「うちは全然いいよ〜」と言ってくれたので、お言葉に甘えて息子を泊まらせる。ポッと夜の時間が空き、せっかくだからもう一軒行こうかと思い妻を誘うも、もう眠いとつれないので、ひとりで近所のサウナに行った。金曜夜は激混みであり、しかも入れ墨兄ちゃんたちの大集合で少し萎えた。

 

8月7日(日)

息子を工作教室へ送り、Zoom打ち合わせ。

 

本日は妻が娘と学校見学に行く日だったが、母娘大ゲンカのために今日も見学はドタキャンだ。娘は暑さがこたえて体調も悪い。息子も娘も汗をかきにくい体質だから、毎年夏はすぐ顔を真っ赤にしてふうふう言っている。それにしても高校受験はどうなることやら……。受験が終われば娘のギスギスも終わるのかよく分からない。

 

そういえば、中学受験させていた何人かのママ友たちが、「思春期と受験が重なるなんて、最悪な状況になるのは目に見えているから中学受験させるのさ」なんて言っていたのを思い出す。私自身は高校受験のときにイライラした記憶がほとんどないから(ド田舎育ちだから3校くらいの選択肢しかなかったし、学校見学などというものもなかった。どの高校に対しても地元の中学生たちは明確なイメージを持っており、それはだいたいその通りだった。勉強ができる。勉強は普通だけど運動が強い。勉強ができない。の3校だ)。受験生の心の持ちようというのをなめていたのかもしれない。

 

夕方、息子を工作教室に迎えに行く。レザーフェイスのチェーンソーを作ると張り切っていたが、よくできていると思った。

 

8月8日(月)

『雑魚どもよ、大志を抱け!』の初号試写。初号試写を観るのはほとんどスタッフキャストたちだがそれでも緊張する。今回は7人の少年たちの話だが、キャストの少年たちも忙しいのか7人中3人しか来られず。喜んでくれたかどうか彼らの表情からは分からない。だが彼らのご両親たちは喜んでくれているようでホッとした。公開は来年の3月だからまだ先だがぜひとも多くの方に観ていただきたい。

 

ようやく初号試写を迎えられました。これから宣伝活動に頑張ります!(by妻)

 

8月9日(火)

朝から仕事。妻も打ち合わせで外出。息子の保育園友達T君のパパが、息子とT君、ほかふたりの友達をプールに連れて行ってくれた。大変助かる。ありがたい。が、息子は沈めあいの遊びで友達とケンカになってしまったとのこと……。

 

8月10日(水)

朝から仕事。息子は昨日、プールで友達とケンカになってしまったとはいえ、久しぶりに友達と遊べたことがうれしかったようで、「今日も遊びたい遊びたい」と連呼。だが、15時というハンパな時間から療育がある。「今日は遊べたとしても少ししか遊べないよ」と言っても聞き入れられず、妻があちこちに連絡を取り、友達のひとりがウチに3時間だけゲームしに来てくれる。が、せっかく友達が来てくれたのに、息子は延々と自分の興味のある話をし続ける。見ていて苦しくなるが仕方がない。

 

その後に療育に行く。帰りにいつも通るドン・キホーテで物欲が大発生。こういう時、こちらの気分の問題で、買ってあげることもあれば買わないこともある。その中途半端さもよくないのだろうとは思うのだが、自分の中途半端さというのもなかなか直らない。

 

8月11日(木・山の日)

練馬38度。暑い。もうそれしか言えないし言いたくない。

 

8月13日(土)

久しぶりにワークショップをする。1日だけ私が書いた台本を読んで演じていただくという形。1日しかないと、もうこの形以外に思いつかないのだが、もしも今後ワークショップをさせてもらう機会があれば、なにか別の形を考えたい。

 

8月14日(日)

早朝から仕事。昼過ぎ、息子と焼き肉を食べ、『トップガン マーヴェリック』(監督:ジョセフ・コシンスキー)鑑賞。

 

大ヒットした前作を私は公開時に劇場で観ているが、中学生の私でも「これ、面白いかな……?」という感じだったから、今回の作品も評判がいいとはいえ不安だったのだが、どういうわけかこの続編はとても面白く観た。息子と一緒に観たからかもしれない。息子に限らず子どもは反応がいいから、よく笑い、よく驚き、よく泣く。そういう人と映画を観ているとそのマインドが移ってくるのか、こちらも面白くなってくることがよくある。そのおかげだったのかもしれないし、そうでないのかもしれないが、考える体力はなかった。

 

8月17日(水)

娘が本日から福島県双葉市で行われる中高生の映画作りキャンプに参加する。勉強もしたくなく、家でアニメを見ているかスマホを見ているかの時間を過ごしているので「映画キャンプ、行くか?」と聞いたら「行く」と言ったので、行かせることにした。

 

とりあえず娘を上野駅まで送ったのだが、おそらくは緊張と不安からだろうがめちゃくちゃ不機嫌。こちらも不機嫌モードになってしまったが、駅で娘の好物のフルーツサンドとサバの押し寿司を買ってやると少しだけ笑顔を見せて電車に乗って行った。

 

この間に、妻は息子を歯の矯正に無理やり連れて行く。現在矯正中の息子は、器具の味と感触が嫌ですぐに壊してしまうのだ。歯医者でも嫌がりまくったあげく、派手に嘔吐したとのこと。その後、妻と合流して息子を療育と同じところがやっているプログラミング教室に連れて行く。モグラ叩きのようなゲームを嬉々として作っている。なんでもいいから夢中になれることを見つけてほしいと切に思う。

 

夜は娘がいないせいか、息子が伸び伸びとしている。息子は姉が大好きなのだが、思春期&反抗期&受験&人間関係などでピリピリしている姉の機嫌に左右され、「姉ちゃん、大丈夫?」などと気を遣うのだが、その気遣いが失敗し、余計に姉の逆鱗に触れ怒られるということも多々ある。そんなプレッシャーから解放されて息子ものびのびとしているのだろう。

 

8月19日(金)

入管から仮放免されている難民申請中のSさんの「現状を語る会」に参加するため、近所の教会に行く。Sさんは現在、労働ができないから寄付で暮らしていくしかない。日中もなにもすることがなく、使えるお金もないから一日中部屋にいるらしい。精神的にも鬱状態のようにみえる。当たり前だ。異国の地で(しかも日本に憧れて来たとかいう理由ではない、母国に居たら身の危険を感じたから逃げたかっただけ)こんなことになれば、私なら生きているのが嫌になり死を選ぶかもしれない。人として扱われていないのだ。ただただ、息をしているだけだ。

 

私と妻にできることは、編集室に使っていた2階の空き部屋に9月からひとまず来ていただくことくらいだが、勉強不足でなにからはじめていいのかよく分からない。Sさんがボランティアなど日中にできることがあったら是非ご連絡いただきたいです。

 

夜、息子と『IT』(2017年公開:監督アンディ・ムスキエティ)を見る。ホラー映画とはいえ、子どもたちが主人公の青春映画でもあるこの作品がなぜにR15なのか理解できない。手を食いちぎられるシーンがあるからか?

 

子どもたちは、いまやネットでエログロなんでもありのひどい映像を浴びるように見ている。だからこそ厳しくしていかなきゃ! というのも理解できるのだが、今の世の中は見せたくないものに透明な蓋を何重にもしまくっているだけの世の中な気もして、(一番見てはならない大人のシャレになっていないみっともない部分というものが、インターネットの世の中になってモロバレになってしまった)とても虚しい。

 

娘から映画合宿が楽しいとLINEが来る。それだけでうれしくて鼻の奥がツンとする。

 

なかなか素直になれずいつも怒っているけれど、誰一人知っている人がいない環境に飛び込める勇気は凄いと思います(by妻)

 

8月20日(土)

早朝から仕事。昼から近所の銭湯でサウナ。帰って来て仕事の続き……はできずに爆睡。夜、息子の友達が泊りにくる。

 

8月21日(日)

妻が6時出発で双葉に向かう。娘の映画合宿の発表会があるのだが、どうせ双葉に行くならその前の犬童一心監督と本広克行監督の講演会も見たいということで朝一番で出て行った。

 

息子たちに朝ごはんを作ってやるも、朝からゲームに夢中な息子と友達はロクに食べてくれず。その後、息子はレンタル先生をぐずぐずでこなし、午後はプログラミング教室。教室に放り込むと、今日は見学をやめて近くのファミレスで仕事。

 

プログラミング教室の後、息子と『SABAKAN』(監督:金沢知樹)鑑賞。2人の小学生がとてもよかった。息子は映画を観ながらひたすら大笑い。だが中年男性のお客に「うるさい」と注意される。

 

確かに笑い声はでかすぎたかもしれないが、日本は映画館で爆笑するお客に冷たいと思う。「俺、この映画分かってるから」アピールをしていると捉えられることもある。劇場内で裸踊りをするわけでもないのだから、大声で笑うくらい許せと言いたい。

 

夜、娘が映画キャンプから帰ってくる。イケメン男子と知り合い仲良くなったとのことで、すこぶるご機嫌だった。こんな笑顔を浮かべるのも久しぶりのことなので、こちらも行かせてよかったと心底思った。

 

8月22日(月)

映画キャンプから戻った娘は、今日から祖父母と2泊3日の温泉旅行、息子はレンタル先生の塾チームとこれも2泊3日のサマーキャンプに出発した。

 

子どものいない2泊3日なんて大天国だから「ナインハーフ」は無理でも「ツーハーフ」みたいな時間を過ごそうと妻に提案するも、そのニタニタ笑いがまず圧倒的に気持ち悪すぎて不愉快と即却下される。それでも一緒に映画を観に行き、夜は火鍋を食いに行った。

 

『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』(監督:イルディコー・エニェデイ)を観たのだが、よく分からなかった私と楽しんだ妻とで意見が合わず、火鍋屋で一色触発となりかけたが、ここは大人になろうとすんでのところで踏みとどまり、夜は家で『喜劇愛妻物語』ごっこの悲劇編をして寝た。

 

※妻より

なんだよ、『喜劇愛妻物語〜悲劇編』って。余計な言動で私を怒らせて罵倒されただけだろうが。あ、その罵倒を喜ぶ体質だから罵倒の意味ないか。っていうか、気持ち悪いですね、こーいうの……。

 

8月23日(火)

早朝からファミレスで仕事。今日も娘と息子がいないので、仕事の合間に『キングメーカー 大統領を作った男』(監督:ビョン・ソンヒョン)と『みんなのバカンス』(監督:ギョーム・ブラック)を見る。これは両方とも分かりやすく面白くて、妻と意見が別れることもなかった。

 

夜は妻がずっと行きたがっていた高円寺の貝料理屋「あぶさん」に自転車で行った。私は暑さにやられて食欲がなかったのだが、店内に入って香ばしい貝の焼いた香りに俄然食欲が出てきて、貝刺身盛合せだの貝焼盛合せだの肝味噌のホイル焼き、煮貝、生カキなどを頼んで、これでもかというほど貝を食った。うまかった。いくらでも食べれそうだ。シメに貝のパスタや雑炊があるのだが、それはグッと我慢して近所の行きたかった寿司屋に移動し腹を固めた。なんだか妻が横で文句を言っていたような気もするが聞こえないふりをした。

 

8月24日(水)

朝から大阪で打ち合わせ。行きの新幹線の中で、仕事の予習をしようと資料を開くとスマホに電話がかかってくる。来年以降のために仕込んでいる仕事のことで聞きたくない報告を受けてしまい激しく凹むも、気力を振り絞って打ち合わせにのぞむ。打ち合わせは新幹線の最終間際まで続いたが前向きな時間で、なんとか気分を取り戻す。新大阪駅で缶ビールを買い新幹線内で一口飲むと新横浜まで気絶。クタクタになった一日だった。

 

8月25日(木)

妻と坂井プロデューサーが映画の製作費の精算をしているのを横で聞きながら仕事。何度も計算をやり直したり、監督である私の知らぬところにいろんな書類を提出すべく作っている。プロデューサーは企画の立ち上げのド頭から、最後の最後まで細かい仕事があるのだなあ……とものすごく他人事のように思いながら、シナリオを書く。

 

8月26日(金)

老猫が、ここ数日毎食後、激しくえずくので近所の動物病院へ連れて行く。特に問題はないとのことだが、はじめて行ったその動物病院は触診をたくさんしてくれて、色々と説明してくださる獣医さんでとても頼もしかった。その後、娘の勉強を今井雅子さんの娘さんが見てくれるというので今井さん宅へ。

 

今井さんご夫婦のご友人であり、凄まじい映画マニアであり(いつも私の作品にうれしい感想を丁寧にくださる!)地上げ屋でもあるTさんが買って来てくれたインド料理「デリー」のテイクアウトのカレーに感激する。なんでもTさんはかなりの「デリー」好きらしく、週に2回このテイクアウトを食べるために、その日以外のランチは抜いているという。恐るべしデリー愛だ。でも、それぐらい美味しかった。満腹。気温も暑いが、新陳代謝が爆上がりし、帰りに家の近所のサウナにも寄る。毛穴から香辛料の香ばしい香りが出てしまい、サウナがデリー臭になるようだった。

 

このテイクアウトのカリー、大変美味しゅうございました(by妻)

 

今井さんの夫の杉田さんは「みんなの選挙」という番組にも出演しており、選挙のバリアフリーを考え、私と妻のような政治音痴に大変分かりやすく解説してくださる。今回は自民党がなぜ地方で強いのかとか投票率がなぜ上がらないのか、などの話を短い時間ではあるが分かりやすく話して下さってためになった。それにしてもなぜに政治ってこんなに分かりづらいのだろうか? それは私がこの国でちゃんと生きていないからなのだろうか? 知ったこっちゃねえやと思っているから分からないのだろうか? それとも単に言葉が難しすぎるのか。

 

それと無知な人間として一番言いたいのは、「勉強不足の者は黙ってろ」という雰囲気だ。これは政治に限らずどの分野でも感じられるが、なにかを言ったら、「まずは勉強してきてください」と言われそうで怖いという思いから発言を控えてしまい、どんどん分からなくなるというのもある。

 

8月28日(日)

娘、模擬試験。朝、友達と最寄りの駅で待ち合わせしていたようだが、家でのんびりしているのでまだ出る時間ではないのだろうと思っていると、友達から電話があり慌てて出て行った。かと思うとその10分後に「受験票忘れた!」と電話がかかってきたので、私は寝巻のまま慌てて届ける。そして模試から帰宅後、「定規とコンパス忘れた! 数学半分だめ! 終わった!」とのこと。

 

この物忘れの多い特性は私も一緒だが、自分で自分のトリセツを把握しないと今後の人生において、他人からかなり怒られやすくなってしまう。物忘れで怒られて落ち込むよりは、自分でどうにか対処できたほうが楽だ。私はというと「すべて持っていく」という方針だ。だから下っ端の助監督をしていたとき、私は多くの物をガチ袋に入れていた。そのおかげで多くの物を現場に取り残してきた。意味がない…こともなく、とりあえず最初の現場への忘れ物はない。一度小道具のライフルを忘れてから私はこの方針になったのだ。

 

夜、娘息子と『NOPE』(監督:ジョーダン・ピエール)を観に近所の映画へ行く。自転車で10分のところに映画館があると思い立ってすぐに行けるのがいい。娘はこの映画をとても楽しんでいた。息子は思ったのと違ったと言っていた。私はめちゃくちゃ面白かった。

 

8月29日(月)

夏休みが終わるのを肌でビシビシと感じ始めたのか、息子のメンタルが不安定になってきている。朝から「学校嫌だ」の連呼が始まり、不安や緊張と戦っているのが見てとれる。解消してあげたいが、どんな声掛けをしても届かないことは分かっているので、ひたすら「嫌だよなあ。あ、ホラー映画でも観るか」などと学校から気を逸らせようと試みるがうまくいかない。ふと気を許すと「学校行きたくない、俺はついてない、友達なんかいないんだ」とネガティブ・ループに入ってしまう。このループを浅めで止めないと、とことん落ちてしまうので要注意だ。仕方なく、とことん落ちるよりはマシだとゲームをさせるとピタッとその間だけ不安がとまり機嫌もよくなる。まるで麻薬のようでそれを見ているのも正直嫌だが、今はほかに上手い手だてを考えられない。

 

8月31日(水)

9時から教育支援センターへ。息子はプレイセラピー。妻と私は明日からの不安をカウンセラーに聞いてもらう。

 

その後、昼からオンライン打合せをして、夕方から息子の療育へ。いつもの挨拶「今日は何日ですか?」の質問に頑なに応えない息子。先生が「8月31日って言いたくないの?」と聞くと、涙目で「うん」と答えていた。明日が嫌で嫌でたまらないのだろう。気持ちの切り替えができないのは仕方ないとして、その嫌さというのがどの程度のものなのかうまく想像できない。書きたくもないシナリオを書かなければならないくらいだろうか? 私も以前、ノイローゼになるんじゃないかと思うほど不向きな企画と向き合う羽目になったことがあるが、きっとあんなものではないだろう。なにより年を取れば手を抜くことを覚えられる。

 

帰宅後、息子の不安感を少しでも和らげるために、お腹に息子を抱っこしながら息子の大好きな『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年・監督:ロバート・ゼメキス)を観る。

 

息子はその特性から、小学4年になってもすぐに人の膝にいく。療育でもレンタル先生でも、なんなら私のお客さんの膝に行くこともある。幼いころはかわいいですんだが、小学4年ともなればでかいし、かなり重いから近ごろは膝に来てもすぐにおろしていたが、今日は耐えて映画が終わるまで座らせた。明日、無事に行けるといいのだが……。

 

※妻より

今年の夏は、例年以上に家の人口密度が高かった。部活を引退、野球を退団した受験生娘も、外遊びが苦手になった息子も、常に仕事でパニックになっている夫も、基本的に一日中家にいる。このクソ狭い2DKに。そして4人が4人ともイライラしている。異常に暑いし……。なんか記憶にないくらい疲れた夏だった……。事件が起きなくてよかった……。

 

 

【妻の1枚】

 

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【プロフィール】

足立 紳(あだち・しん)

1972年鳥取県生まれ。日本映画学校卒業後、相米慎二監督に師事。助監督、演劇活動を経てシナリオを書き始め、第1回「松田優作賞」受賞作「百円の恋」が2014年映画化される。同作にて、第17回シナリオ作家協会「菊島隆三賞」、第39回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。ほか脚本担当作品として第38回創作テレビドラマ大賞受賞作品「佐知とマユ」(第4回「市川森一脚本賞」受賞)「嘘八百」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」「こどもしょくどう」など多数。『14の夜』で映画監督デビューも果たす。監督、原作、脚本を手がける『喜劇 愛妻物語』が東京国際映画祭最優秀脚本賞。現在、新作の準備中。著書に『喜劇 愛妻物語』『14の夜』『弱虫日記』などがある。最新刊は『したいとか、したくないとかの話じゃない』(双葉社・刊)。

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