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世界で大注目! 海を航行するだけで「マイクロプラスチックごみ」を回収するスズキの船外機の仕組みが素晴らしすぎた

  • 2022年7月18日
  • GetNavi web

海洋プラスチックごみ問題――。中でも直径5mm以下のマイクロプラスチックは、海流に乗って世界中に拡散し、海の生態系に甚大な影響を及ぼすと懸念されています。この問題に対してスズキ株式会社が開発するのが、世界初の船外機用マイクロプラスチック回収装置。海を航行するだけでマイクロプラスチックを回収できることで、いま世界中から注目を集めています。

 

戻り水の通り道にフィルターを設置

自動車やバイクメーカーという印象が強いスズキですが、実は船外機(ボート用のエンジン)を取り扱うなど、陸から海まで事業を展開する世界でも珍しい企業です。そんな同社が開発したマイクロプラスチック回収装置とはいかなるものなのか? マリン営業部の小川陽平係長に説明していただきました。

 

「小型船舶に搭載する船外機には、自動車のようなラジエーターはなく、ウォーターポンプで汲み上げた大量の海水でエンジンを冷却しています。冷却に使った海水(戻り水)は、そのまま海中へ戻すため、戻り水の通り道にフィルターを付け、マイクロプラスチックを回収する構造を考えました。

↑マイクロプラスチック回収装置(右)を取り付けた船外機

 

戻り水の通り道にフィルターを付けただけと仕組みは至ってシンプル。しかもエンジンの性能には影響しません。また、フィルターにマイクロプラスチックが詰まった場合も、別の通り道に水が流れる仕組みなので、冷却水路が詰まってしまう心配も無用。溜まったゴミはフィルターを取り外して処分するだけです。当社では、航行100時間ごとにエンジンの定期点検を推奨していますが、その時にフィルターのゴミも処分するので、ゴミ処理をお客様自身が行うケースはほとんどありません。もちろん穴など開いていなければ、フィルターは長く使用できます」(小川さん)

↑マイクロプラスチック回収装置の仕組み。万が一フィルターが詰まった際に備えて、バイパスルート(赤丸で囲んだ部分)も想定されている

 

既存もモデルにも搭載可能

至極、シンプルな構造ながら、今までどの企業も思い付かなかったというから、まさに目からウロコ。アイデアの勝利と言えるでしょう。ただ実用化に至るまでには、やはり試行錯誤を繰り返したそうです。

 

「まず、マイクロプラスチックの定義を確認したり、実態調査を行ったりする作業からスタートしました。当初は、漁網のような装置や、浄水器のようにエンジン冷却水の出口にフィルターを付ける案も出ましたが、それでは走行スピードに影響が出ます。開発にあたり、お客様には普段通りご利用いただけるということを大前提としていたので、エンジン性能や走行性能に影響しないシステムを考え出すのに苦労しました。そして装置の開発後、国内をはじめアジア各国でモニタリングテストを実施。世界中の代理店から問い合わせが多数寄せられるなど、その反響の大きさに手ごたえを感じました。

↑新型船外機「DF140B」をはじめ5機種に標準装備される

 

こちらの装置は、「DF140B」をはじめ、今年7月の生産分以降、5機種の船外機に標準搭載予定です。装置自体は、冷却水が通るホースをフィルター付きのホースに交換するだけなので、構造的には既存モデルの船外機にも設置可能です。つまり、船外機を買い替える必要はありません。ちなみに、現時点での対象機種は100〜140馬力の船外機。より大型の船外機にも対応してほしいという要望は多いのですが、設置スペースや他の装置への干渉など、馬力の大きい船外機の場合、まだいくつか課題があるのが現状です。今後はできるだけ早く、より高馬力の船外機にも対応できるようにしていきたいです。

↑海上を航行しているだけでマイクロプラスチックを自動的に回収する

 

もちろん、この装置によってすべてのマイクロプラスチックを回収できるわけではありませんが、お客様自身が環境問題に興味を持っていただくきっかけになったり、知らず知らずのうちに社会貢献活動に参加していることになったりするのではと考えています。世界中のお客様と一緒になってマイクロプラスチックを回収できる今回の装置は、環境保全の観点からもすごく意義があると自負しております」(小川さん)

 

事実、この装置の発表後、10社以上の国内メディア、100社以上の海外メディアから問い合わせを受けているそう。マイクロプラスチック回収装置への関心度の高さや期待の大きさが窺えます。

 

海への感謝を示す「スズキクリーンオーシャンプロジェクト」

「マイクロプラスチック回収装置が誕生した背景には、“海への感謝を忘れない”という当社の想いがあります」と話すのはマリン営業部の原木理恵さんです。同社はその想いを具現化するために、2010年より、海や河川、湖を中心に清掃活動を行ってきました。さらに近年の社会課題の変化を踏まえ、活動のあり方を見直し、2020年に新たな取り組みとして「スズキクリーンオーシャンプロジェクト」を立ち上げました。

 

「このプロジェクトは、①水辺の清掃活動 ②製造及び補給部品梱包におけるプラスチックの削減 ③海洋マイクロプラスチックの回収 という3つの活動から成り立っています。原点であるについては、いまや全世界に活動が広がっていて、2021年12月までの参加者数は延べ約1万人に達しました。近年は社員だけでなく、一般のお客様にもご参加いただいています。

↑清掃活動は本社のある静岡県浜松市から始まり、今では世界27代理店で実施

 

②の製品及び補給部品梱包におけるプラスチックの削減に関しては、2020年10月より補給部品梱包、2021年9月より製品梱包に、環境に配慮した梱包材を採用するなど、プラスチックの削減に積極的に取り組んでおり、これまでに11.2トンのプラスチックを削減しました。そしてマイクロプラスチック回収装置の開発が③に該当します」(原木さん)

 

このように「スズキクリーンオーシャンプロジェクト」のもと、実現に向けて着実に歩みを進める同社。最後に、SDGsが同社に与えた影響について、コーポレート戦略部サステナビリティ推進グループの渋谷俊介さんにうかがいました。

 

スズキらしいアイデアをカタチに

「一般的にCSR活動という言葉が使われ始めた2000年代の社会貢献活動は、ボランティアや寄付が主体でしたが、SDGsが登場すると、企業は“本業を通じて社会課題に貢献していかなければならない”という考え方に変化していきました。これを機に、当社のこれまでの事業を振り返りますと、環境に配慮した小型車を開発・普及させてきたことや、当社のシェアが高い新興国で製造活動を行って雇用を創出していることなど、事業自体を通じてSDGsの目標に貢献できていると認識できたのです。“お客様の立場になって価値ある製品を作ろう”という創業時からの企業理念に沿って続けてきた事業活動に間違いはなかったと改めて自信を持つことができました」(渋谷さん)

↑写真左から、マリン事業本部 マリン営業部 米州・大洋州・企画グループ 係長・小川陽平さん、同グループ・原木理恵さん、コーポレート戦略部 サステナビリティ推進グループグループ長・渋谷俊介さん

 

「現在は、四輪、二輪、マリンなど、あらゆる事業を通じて私たちがどう社会に貢献できるのかを、改めて見つめ直しながら取り組んでいるところですが、マイクロプラスチック回収装置のように、スズキらしい課題解決の仕方やアイデアを活かすことができればと思います。“当社の船外機を使っていただければ、どんどん海が綺麗になる――”。こうした製品やサービスをこれからもどんどん創出していけるよう、全社一丸となって努力していきたいです」(渋谷さん)

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