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アフリカビジネスの大きなきっかけに!「ABEイニシアティブ」卒業生がこれからの日本企業に欠かせない理由とは?

  • 2022年8月16日
  • GetNavi web

アフリカにおける産業人材育成と日本企業のアフリカビジネスをサポートする「水先案内人」の育成を目的として、日本の大学での修士号取得と日本企業でのインターンシップの機会を提供するプログラム「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(African Business Education Initiative for Youth)」、通称:ABEイニシアティブをご存知でしょうか? 2014年から現在までで、ABEイニシアティブを通じて1286人ものアフリカ出身の留学生が来日。留学生のなかには、プログラム終了後の進路として、日本企業へ就職する人がいます。

 

本記事では、2019年より仙台を拠点とするラネックス社で活躍するセネガル出身のABEイニシアティブ卒業生、ブバカール ソウさんにABEイニシアティブでどのようなことが学んだのか、また日本企業で3年以上働いてみてどんな感想を抱いているのかを聞きました。

 

●ブバカール ソウ/セネガル出身。2012年には、JICA横浜で開催された短期研修に参加するために訪日した経験がある。日本の支援で設立されたセネガル日本職業訓練センター(Technical and Vocational Training Center Senegal-Japan)を卒業後、職業訓練・手工業省職員となり職業訓練センター・ジガンショール校にてコンピューター科学の教師をしていた。在職中にABEイニシアティブの選考を受け、宮城大学の事業構想学研究科の修士号を取得。卒業後2019年3月〜10月のインターンを経て同年11月より仙台に本社のあるラネックス社に勤めている。

 

「ABEイニシアティブ」で学べることとは?

まずは「ABEイニシアティブ」がどういったプロジェクトなのか、その背景を紹介しましょう。

 

2013年6月に横浜市で開催された第5回アフリカ開発会議(TICAD Ⅴ)で発表されたABEイニシアティブ。当初の計画は、2014年からの5年間で、1000人のアフリカの青年を招聘し、日本各地の大学院で専門教育と、日本企業でのインターン研修の機会を設け、日本とアフリカの架け橋となる産業人材の育成を目的としていました。そのインターンでは、日本の企業文化、勤労精神まで学んでもらおうという狙いもあります。

 

2016年の第6回アフリカ開発会議(TICAD Ⅵ)で、2019年以降も継続して取り組んでいくことが表明されています。

 

2014年9月に初めてABEイニシアティブの研修員156人が8か国から来日し、2019年4月までにアフリカ54か国すべての国から1219人が来日しました。そのうち775人がプログラムを終えて帰国し、さまざまな分野で活躍しています。

 

ABEイニシアティブでは、JICAと、日本の大学がおよそ半年間かけて留学生の選考を行います。来日後は1年〜2年6か月間、大学院の修士課程で専門知識を習得し、夏季休暇や春季休暇で日本企業でのインターンが行われます。プログラム終了後は帰国する人もいれば、日本企業でインターンや就職をする人もいるといった感じです。

 

 

留学生が学ぶのは工学や農学、経済・経営、ICTなど多岐にわたります。彼らが学んだ後のインターン受入登録企業数は、2015年は217社だったのに対し、2019年には584社にまで増えました。しかし、帰国後の進路として日本企業に就職する人は前途多難となっており、全体の17%に留まっています。

 

【参考資料】

アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)「修士課程およびインターンシップ」プログラム

 

超難関の試験をクリアして来日できる狭き門

今回、お話を聞いたソウさんは、もともとはジガンショール州の職業訓練センターでコンピューター科学の教師として働いていました。2012年には、JICA横浜で開催された短期研修に参加するために訪日し、日本の魅力に気付いたといいます。

 

ABEイニシアティブ当時、東京でインターンシップをしたときの送別会でのソウさん

 

「初めて来日したとき、日本はなんてきれいで安全な国なんだろうと思いました。JICAの研修では製造プロセスについて学んだのですが、そのときは日本ならではの“ものづくり”や“カイゼン”活動を知りました。また、私自身は大学でもITの勉強をしていたので、日本はIT化が進んでいて興味が湧きました」(ソウさん)

 

ABEイニシアティブの存在を知ったのは、セネガルで日本大使館のイベントに参加した際だといいます。このとき、セネガルにおける応募者は200〜300名ほどで、最終合格者はわずか15名ほどでした。それだけ狭き門を突破した人だけが、ABEイニシアティブのプログラムで日本に来ることが許されるのです。

 

「私はセネガルの現地語と母国語であるフランス語に加え、英語を勉強していました。日本語は来日してから覚えたので、まだまだうまくありません。今は仙台のラネックスという会社でシステムエンジニアとして働いています。働き始めて3年が経つので、既に5年半日本で暮らしていることになりますが、日本は差別も少ないので他の国よりも暮らしやすいと感じています。来日当初は大学の先生に買い物をする場所を教えてもらうなど、日常生活でも分からないことだらけでしたが、2か月ほどで日本の暮らしには慣れましたね」(ソウさん)

 

国際会議で発表するソウさん

 

ソウさん自身はすっかり日本での生活にも慣れ、あまり困った経験はないと話します。しかし、ABEイニシアティブの研修を経て、日本で就職をして長く定着する人はまだまだ少ない印象だとか。大きな壁となるのは言語の問題だけでなく、日本ならではの文化やルールの違いも大きいようです。

 

「一番大切なのは、日本語を勉強することです。あと日本の文化を理解して、ルールを守ることも日本での就職を目指す人にとっては欠かせません。日本で働きたいのであれば、日本の働き方に合わせるべきだというのが私の考えです。これは難しいことではありますが、決して不可能ではありません。私は他のどの国で働くよりも、日本で働くことが最も経験値が上がることだと思っています」(ソウさん)

 

日本で働く上で重要なのは「チームワーク」です。これはアフリカの企業にはなかなかない文化で、海外では個人主義な側面が多くなっています。もちろん、海外でもチームワークが求められる場面はありますが、日本のほうが求められることをソウさんは実感しているそうです。

 

「日本はチームワークを重視しながらも、1人ひとりを尊重している印象があります。また、問題が起こると“報連相”をする文化があり、これは私にとってプラスの経験になっています。イスラム教徒のため、豚肉を食べないので、同僚との飲み会の店選びのときには、異文化で生活していることを実感することもありますが(笑)、私は今の会社で働けていることにすごく満足しています」(ソウさん)

 

アフリカとの関係性を築きたい企業に有利

ソウさんはアプリやウェブシステムの開発をするのが主な仕事で、開発チームとの打ち合わせなどでは英語を話すそうです。日本語でなくて不便はないのかと気になりましたが、最近は日本語のシステムだけでなく、英語のシステムを構築してほしいという依頼も多く、ECサイトがその代表例なのだとか。

 

「私の勤め先には海外から来た人が私以外にも2人います。仙台の本社オフィスには18名のスタッフがいます。フィリピンにも支社があり、会社全体としては、アメリカ、オーストラリア、セネガルなど多様な国の出身者が働いています」(ソウさん)

 

そんなグローバルな企業で働くソウさんですが、日本だけでなくセネガルとの架け橋になるような仕事も手掛けているといいます。それは、セネガルにおける電子母子手帳アプリです。

 

「セネガルの病院では、産前・産後の検診でお母さんが長く待たされます。そこで、診察の予約、医師によるデータ入力、チャットによるオンライン診療のできる電子母子手帳アプリを開発しました。そのときに、セネガルの保健省の人に向けて私がプレゼンをしたんです。このアプリはJICAの民間連携事業を通じて1年間のトライアル期間を経て、今後リリースされる予定です」(ソウさん)

 

アストラゼネカで母子保健申請に関するスピーチをするソウさん

 

ソウさんはいずれはセネガルに帰国したいと考えており、帰国後は日本企業とアフリカをつなぐお手伝いがしたいと考えているそうです。まさにABEイニシアティブが目標に掲げる「アフリカの産業人材育成と日本企業のアフリカビジネスをサポートする水先案内人の育成」が成功していると言えるでしょう。

 

「ケニア、ルワンダなどの南アフリカには既にいろいろな日本企業が進出していますが、セネガルのある西アフリカにはまだ少ないのが現状です。その問題は言語だと思います。南アフリカは公用語が英語ですが、西アフリカの多くはフランス語。フランス語圏への進出は日本企業にとっては難しいのかもしれません。私はフランス語も得意なので、日本企業とセネガルの架け橋になれるといいなと思います」(ソウさん)

 

海外の人材を雇うことにハードルを感じる日本企業はまだまだ多いですが、現地とのコネクションがある人材を採用するのは大きなメリットになることを、今回ソウさんを取材して強く感じました。また、ABEイニシアティブというプロジェクトが言語能力の高さだけでなく、社会人としても優秀な人材を日本に多く送り込んでいるというのは心強い話題。また、JICAではABEイニシアティブだけでなく、開発途上国の人材を日本に招聘する本邦研修という事業で多くの開発途上国の人材を日本に招聘しています。本邦研修では毎年約1万人の研修員を受け入れており、研修が始まった1954年から2019年までで、38万8406人もの受け入れ実績があります。

 

ソウさんのように日本の組織文化を理解している人材は、世界中に多く存在し、それらの人材の中には日本での就職を希望する人もいます。このような人材の活用と、日本の企業で安心して働ける環境づくりがこれからの日本企業の課題になりそうです。

 

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