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「どちらに転んでもリスクがあるから不安はない」50代編集者が見た、女優 yukinoの覚悟と渋好みな暮らし

  • 2022年2月13日
  • GetNavi web

著書『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』がベストセラーとなった、編集者の一田憲子さん。「たとえズボラでも、いかに自分らしくこだわって、毎日を愛しんで暮らすか」を考え続け、自身のサイトでも発信している一田さんが、自身とは世代がまったく異なる20代の若い女性と出会ったら? 彼女たちなりの「自分らしい暮らし」へのこだわりと奮闘を、一田さんがレポートします。

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最近の20代は、半径2メートルのことしか興味がないらしい。無理して頑張らないで、自分ができること、できないことを整理して、堅実に歩んでいくらしい。努力はするけれど、1か月経って結果が出なかったら諦めるんだとか!

「サイキンノワカイコ」について、こんな話を聞いて、私の時代とはずいぶん違うものだ、と驚きました。バブル世代の私たちは、とにかく「ガンバル」ことがよし、とされていました。自分の能力以上のことを抱えていれば、伸び代を伸ばすことができる。そう信じていた気がします。そして、遊ぶことにも貪欲だったけれど、「1か月後に休むために、今ガンバル」といった具合に、「味わい楽しむ」よりも「獲得する喜び」を重視する世代だなあと、振り返って思います。

時代が変わり、景気は後退し、「頑張っても」どうにも打破できない状況が目の前に広がったとき、「サイキンノワカイコ」は、未来のために「今」を犠牲にすることをやめ、「今日」「たった今」を楽しむようになったのでしょうか?

「今から」「ここから」という若い子たちが、何を考えているのか? それを知りたくてたまらなくなりました。新たな思考のプロセスを知ることは、50代の私たちが、当たり前だと思ってきたあれこれを、もう一度見直すきっかけになるかもしれません。

さらに、迷い、悩み、焦っている若者に、何かを伝えられるかもしれません。20代と50代。普段は会うこともないこの組み合わせの中で、何かしら面白い化学変化が起こればいいなと、この連載を始めてみることにしました。

第1回「シンデレラガール、雪七美の17㎡堅実暮らし」
第2回「清楚とロック、モデルとミュージシャン…タカハシマイの2つの顔」
第3回「女優・辻千恵が過ごす、ひとりの時間と戦いの時間」
第4回「モデル・宮崎葉の“歯車”が回り始めた理由」

 

どちらに転んでもリスクがあるから、不安はない———yukinoさん

昨年より放送されていた東京ガスのテレビコマーシャルをご存知でしょうか?「未来が見える女の子が、少し先回りしてトラブルを避ける」という映像は、自転車置き場で倒れる自転車を足でエイッと支えたり、プールに落としかけたスマホを、横っ飛びにしてキャッチしたり。「え〜!」「ほ〜っ!」と思わず見入ってしまうものでした。

 

この女の子を演じていたのが、yukinoさん。「あれ、合成などはなく、ぜんぶガチでやったものなんですよ! 演じる余裕もなくて、真顔だったんです」と笑います。実は、2021年の3月に上京したばかり。女優&モデルとしての初仕事が、あのCMだったと言いますから驚きです。

 


東京ガス「先まわりする女性」篇。2021年第74回広告電通賞 フィルム広告 企業公共部門で金賞を受賞。

 

宮崎県出身、長崎の大学では教育学部で音楽を専攻。3歳からピアノを続けていたのだとか。「ピアニストになる……というわけではなく、ただ趣味で続けていければと思っていました」と語ります。だったら、その頃将来はなにをやりたいって思っていたの? と聞いてみると……

 

「カフェをやりたいと思っていました」とyukinoさん。「自分が働く空間を自分で作りたいと思ったんです」と語ります。しかも、大学時代からその夢を現実のものにしようと、SNSなどで自分の思いを発信していたといいますから、えらい!

 

このあたりが、私が若かった頃とは大きく違うなあと思います。今から20年ぐらい前は、もしカフェをやりたいと考えても、それが「自分の手が届くところにある」と感じることはなかなか難しかった……。どうやってカフェをオープンさせるのか情報も手に入らなかったし、大きな資本がないとできないという「常識」がまだまだはびこっていたし、学生をはじめ若者が持つ力はごくごくちっぽけでした。

 

つまり、自分が考えていることと、社会との間に大きな溝があったということです。でも今は、SNSが発達し、誰でもがより広い世界にアクセスしやすくなり、小さな一歩が大きな波を引き起こす可能性がぐんと増したような気がします。その夢への風通しのよさが、とてもうらやましいなあと思います。

 

編集者の一田憲子さん。

 

「これ、私が作ったんですよ」とyukinoさんが見せてくれたのが、細い金や銀の糸で編んだアクセサリーでした。「えっ? なに? これ金属でできているの?」と不思議に思っていると、「これ、糸で編んだものなんです。軽いし、金属アレルギーの人も身につけられるんですよ」と教えてくれました。

 

昔から手を動かして何かを作ることが大好きだったそうです。アンティークレースやヴィンテージのスパンコールなどを組み合わせてアクセサリーを作り始めたのが大学生の頃。「tokage(トカゲ)」というブランド名でネットショップを立ち上げました。

 

どうして「トカゲ?」と名前の由来を聞いてみると……。「目立つアクセサリーもかわいいと思うんですけど、身につけたときに自分に馴染むものがいいなあと思って。影や木漏れ日ってきれいでしょう? ああいう風に『さりげないけどきれい』っていうものを作りたいなと思って。『〇〇と影』っていう意味で『tokage』にしました」。なるほど、爬虫類の「トカゲ」ではなく「と、影」という意味だったんだ! と納得しました。カフェにしろ、アクセサリーにしろ、なんて目指す方向がしっかりしていることでしょう!

 

yukinoさん。

 

おどろくほど繊細な糸で編んだイヤリングは、yukinoさんが自分で立ち上げたウェブショップ「tokage」で販売しています。

 

レース糸や、アンティークビーズでアクセサリー作りを。手を動かしているうちに、自然に形が生まれてくるそう。

 

アクセサリーはオリジナルのボックスに入れて、自分で押し花をして作ったカードを添えて発送。隅々まで心を込めて。

 

大学時代に、ミスコンテストに誘われて出場。同時期に今の所属事務所から声をかけられました。「私で、大丈夫ですか? って思わず聞きました(笑)。当時SNSで応援してくださる方も増えていて、やってみようかなと思って……。東京に行くワンステップを踏んでから、カフェを開くのもありかなとも考えたんです」とyukinoさん。ミスコンが終わってから「一度東京に来て、実際にお仕事をちょっと経験してみませんか?」と提案されたそう。「ずっと田舎にいたから、東京は刺激も多いし、行きたいお茶屋さんにも行けるかもと思いました」。

 

東京で行きたかったお茶屋さんはどこだったの? と聞くと、「HIGASHIYA GINZAさんですね」とyukinoさん。なんと、びっくり!「HIGASHIYA」といえば、和菓子をモダンにアレンジし、急須でお煎茶を出されるお店。若い人が「好き」というには、ずいぶん渋いセレクトです。「お茶が好きなんです。落ち着きがあって、ちょっと静かな環境ですね」。

 

そういえば、自宅で愛用していると、インスタグラムにアップされていた器も、ずいぶん渋いものでした。

 

「雑貨屋さんでティーポットを買うときに、7000円だったんですが、店員さんに『その若さで、この金額のものを即決するのは珍しいですね』って言われました」と笑います。

 

お気に入りのティーポットやカップでお茶を飲むひとときが幸せ。作家ものの器は、どれも渋めのセレクト。

 

左は東京表参道にあるお気に入りのお茶屋さん「櫻井焙茶研究所」で買った茶葉。右は、大好きというオードリー・ヘップバーンのカレンダー。「映画『ローマの休日』などは、何度も見ました。品があって、純粋な感じや、ファッションセンス、そして演技がかわいいところが大好きです」。

 

こうして「一度お試しで」と事務所の提案で上京。その際初めての仕事が「ニューバランス」のプロモーションビデオでした。

 

「事務所の車でロケに行って、ニューバランスを履いて走る……というものでした。走るのは大丈夫だったんですけど、しゃべるのが全然ダメでしたね」と笑います。その後に続いた仕事が、あの「東京ガス」のCMだったというわけです。卒業後、上京。女優さんになることを目指して東京で暮らし始めます。それが、新型コロナウイルス感染症が猛威を振っていた昨年3月のこと。

 

不安はなかったのですか? と聞いてみました。

 

「もともと私は、普通の会社員ではなく、カフェをオープンすることを目指していました。もし女優の道を目指していなかったら、カフェの店員さんをしながら修行をしていたと思うんです。どちらに転んでもリスクがあるので、そういう意味では不安はなかったですね」

 

どうやら、yukinoさんの中で「カフェ」という優先順位は揺るぎないもののよう。人は「これ」というものを1本持つと、若くてもこんなにも強くなれるものなんだ、と感心してしまいました。もしかしたら、「強い」から未来を決められるのではなく、「決めれば」、強くなれるのかもしれません。

 

友人からもらったマトリョーシカや、雑貨屋さんで買ったラッコや犬など木の置物を持参してくれました。かわいいけれど、ちょっとシンプルなものが好き。

 

上京するときに物件を決める条件が「キッチンにコンロがふたつあること」。なるべく自炊をして食べているそう。

 

お母様はずいぶん厳しい方だったそうです。よく上京を許してくれましたね? と言うと……

 

「『ちゃんと就職しなさい。教育学部に行ったんだから教師になりなさい』と言われていました。でも私が『自営でカフェをやりたい』と言い始めて、SNSでいろいろな発信をし、フォロワー数が伸びてきた様子を見た頃から『もう好きにしなさい』と言ってくれるようになりましたね。厳しく育てられたからこそ、その反動で『自由』が好きになったし、好きなものが明確になった気がします」。

 

順調にスタートを切ったかに見えたけれど、上京してから受けたオーディションでは、なかなか結果が出ない日々が続いたのだと言います。

 

「やっぱり、簡単にはいかないなって思いました。それで、今年の9月から演技のワークショップに行き始めたら、少しずつよくなってきた感じかな」。

 

ワークショップは「自分の中の衝動に気づく」という課題だったそうです。

 

「表現するのではなく、頭で考える前に行動するっていうことなんです。二人一組になって、相手から感じられる感情を伝えたり、自分の感情をぶちまける練習をするんです。たとえば『私、緊張している』っていうことを言葉や行動にのせる……。人によっては立ち上がってものを蹴ったりしながら言う人もいます。そういう自分の感情に気づく練習なんです。それを10人くらいの前でやるので、自分に自信がないと動けずに固まっちゃうんですよね。衝動じゃなく、自分自身を奮い立たせるために立ち上がっちゃったりする。そうすると先生にしかられます」

 

なんと、難しそう!「衝動」とは、自分の内側の回路と自分をつなぐことなのかも。「たとえばドラマの現場でも、その役だったらどうするか? が『衝動』であれば、『演技しています』っていうことにはならないと思うんですよね」とyukinoさん。

 

実はごく最近ドラマのお仕事が決まって、撮影が終わったばかり。ドラマをやってみてどうだったのでしょう?「楽しかったんですけど、私にとって、すごくやりにくい役で、いろいろ考えさせられました。女優って、自分に自信をつけないとできない職業だって思いました」。

 

それはどういう意味? と聞くと……。「『これを演じてください』言われて演じるわけですが、自分に自信がないと『こうしたらいいのかな? これはやりすぎかな?』と考えちゃうんですよね。余計なことを考えないためにも、自分に自信をつけることが、これからの課題だと思いました」。

 

あのワークショップ以来、どうやらyukinoさんの求めることの根っこはすべて「自信」につながっているよう。

 

「merモデルオーディション2020」で見事、グランプリを獲得。

 

真ん中に「自分」がいて、両方の手に「仕事」と「暮らし」をきちんと握っている

女優のお仕事は始まったばかり。今はまだ女優1本では“食べていけない”ので、アルバイトを2本掛け持ちしているそうです。その合間にアクセサリー作りを。もし、女優さんとして成功したとしても続けていきたいことなのだそう。そして、最終目的はやっぱりカフェを開くこと。

 

「一度東京でやってみるのもいいかなと思うし、大学時代を過ごした長崎の港町で開いてもいいなとも思います。そして、やっぱり宮崎の実家に戻って、田舎の山の中でオープンしてもいいなあ。もし、私が女優さんとして成功できたら、山の中でもお客さんを呼び寄せることができると思うんですよね。だから今は、女優としての仕事を頑張ろうと思っています」。

 

 

好きなカフェを巡ったり、お気に入りの器やポット、茶葉を手に入れて自宅でティータイムを過ごしたり。仕事から帰った夜には、糸やビーズを取り出します。若いころは、夢を追いかけるだけで精一杯で、自分が「楽しむ」といういちばん大事なことを後回しにしがちなのに、yukinoさんは、真ん中に「自分」がいて、両方の手に「仕事」と「暮らし」をきちんと握っていました。

 

最後に愛用のノートを見せてくれました。「パピエラボ」のものだそう。「私のストライクゾーンは、結構広いんです。これもかわいいし、あれもいい。でも、ひとつに絞った方がいいなあって思うんです。だから、道を迷わないために、時々ノートに書いて自分の考えをまとめています。『将来は、これとこれがやりたい。じゃあ、これはどんな世界観にしたい? じゃあ、今目の前にあるこれはどうすべきかな?』みたいな感じ。実現できているかどうかは別ですけど」。

 

右が「パピエラボ」で購入したノート。ラッコの絵のノートは「ロフト」で。「中がベルリンの紙が使われているんです。その質感が好き」とyukinoさん。

 

その着実さ、冷静さに驚いてしまいます。若い頃、私がものごとを決める「ものさし」は、「実現できるか、できないか」という「結果主義」だった気がします。でも、yukinoさんの一歩は「できるかどうかわからないけれど……」でした。カフェも女優という仕事も、自分にそれをやる力があるかどうかは不明です。でも、きっとできる気がする……。それだけで十分なんだ。そう教えてもらった気がします。

 

若い頃からずっと「これができる自信が持てたらやろう」と思ってきました。でも、それだといつまでたってもスタートできない。「よし」と自分に自信を持てる日なんて永遠にやってこない……。そのことに気づいた頃には、もうずいぶん歳をとってしまっていました。「自信」というものは走り続けながら育てるものなのかも。一生懸命走っていたら、いつの間にかラクに走れるようになっていた、みたいに。

 

何かを手に入れるために必要なのは、あれとこれとそれという「条件」ではなく、「これが欲しい」と、ただ思えばいい。そう考えれば、私は「若さ」という条件は手放してしまったけれど、これからでも、欲しいものが手に入れられるのかもしれないな、とちょっとうれしくなりました。

 

 

Column / 一田さんの暮らしの一手間

季節の果物を使ってジャムを作ります。冬ならりんごや文旦、春になったらいちご……。りんご2個や、いちご1パックなら、小さな鍋に入れてほんの20~30分でできちゃうのでおすすめ。

 

私は、どんな果物でも、全体量の70%の砂糖を加えて作ります。これさえ覚えておけば簡単! りんごは好きな大きさにカットして。ごろんと形が残った方がよければ大きめに。ペースト状の方が好きなら小さめに。いちごはヘタをとってそのまま。

 

このほか、無農薬の文旦や甘夏などが手に入れば、皮を刻んで実と一緒に煮れば、マーマレードができます。自分で作ったジャムは、市販のものと香りが違います! 好きな甘さに調節できるのもいいところ。いちごと黒胡椒、りんごとクローブなど、スパイスを加えても。季節ごとにジャム作り、楽しんでみてください。

 

【プロフィール】

編集者・ライター / 一田憲子

1964年京都府生まれ、兵庫県育ち。OLを経て編集プロダクションへ転職後、フリーランスとして女性誌、単行本の執筆などで活躍。企画から編集を手がける暮らしの情報誌『暮らしのおへそ』『大人になったら、着たい服』(ともに主婦と生活社刊)は、独自の切り口と温かみのあるインタビューで多くのファンを獲得。日々の気づきからビジネスピープルへのインタビューまで、生きるヒントを届ける自身のサイト「外の音、内の香(そとのね、うちのか)」も主宰。近著に『暮らしを変える 書く力』(KADOKAWA)
『外の音、内の香』https://ichidanoriko.com/

 

女優・モデル / yukino

1998年生まれ、宮崎県出身。長崎大学教育学部卒業。東京ガスをはじめ、ニューバランスやハタラクティブなどの広告のほか、優里「ベテルギウス」のMVにも出演。現在、ドラマ『まったり! 赤胴鈴之助』(テレビ大阪・BSテレ東)に出演中。
Instagram https://www.instagram.com/yk_____.jp/
Twiiter https://twitter.com/yk_____jp
「tokage」 https://enikaitayona.official.ec/

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

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