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反抗期としては満点の娘との付き合いに悩み、2年続けて妻の誕生日を忘れる映画監督の日常

  • 2021年8月9日
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「足立 紳 後ろ向きで進む」第16回

 

結婚19年。妻には殴られ罵られ、ふたりの子どもたちに翻弄され、他人の成功に嫉妬する日々——それでも、夫として父として男として生きていかねばならない!

 

『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞、『喜劇 愛妻物語』で東京国際映画祭最優秀脚本賞を受賞。いま、監督・脚本家として大注目の足立 紳の哀しくもおかしい日常。

 

【過去の日記はコチラ】

 

 

7月5日(月曜日)

朝、ボランティア。学校に送るXちゃんはかなりお転婆でなかなか言うことを聞いてくれない。いつも小学校に着くまでに、ガラスの看板を開けたり、食べ物屋さんの軒先に飾ってある人形と格闘したり、その辺に生えている花や草をちぎってなにかを作ったりと、とにかく忙しい。

 

今日も遅刻しそうになるが、私は裏技というか、たぶんルール違反になるのだろうが、あまりに動いてくれない時はスマホで音楽を聞かせてしまう。そうするとご機嫌でスムーズに歩いてくれる。星野 源のドラえもんを聞きながら、私にも歌えと言うので歌ったら笑われた。めちゃくちゃ下手なのだ。

 

戻ってからジョナサンで仕事。昼過ぎに近所のサウナへ。夏バテ気味なのだが、なぜか食欲だけは普段の3倍くらいあり、着実に太ってきている。その後、普段なら家に戻って昼寝をしてまた仕事を再開するのだが、今日はそのまま夕方まで寝てしまった。

 

7月7日(水曜日)

午前中、ジョナサンで仕事。午後から妻と一緒に高校教師。

 

高校教師の日だけの特別ランチは魚定食。町の魚屋さんという感じの鮮魚店が営んでいるお店。お刺身3点と焼き魚(妻は煮魚)とあおさのお味噌汁と副菜2種(切干大根と冷奴)、香の物もつくので品数は十分なのだが、そこに自家製塩辛といくらも追加した。おまけにご飯もお代わりし放題。大満足の昼ごはんだった。

 

歩きながら、抹茶小豆のかき氷を食す。

 

今日は短編の締め切り日。まだ書きあがっていない生徒さんもいれば、すでに2作目に入っている子もいる。来週は合評会。

 

夜「猿楽町で会いましょう」(監督:児山 隆)鑑賞。ヒロインがどんなにバレバレな状況でもウソをつきとおそうとするところが、若いころの私にそっくりで冷や汗が出た。近ごろの邦画では出色のキャラクターと思った。

 

7月8日(木曜日)

テレビ東京で「ただ離婚してないだけ」が絶賛放映中の本田優貴さんの最新作漫画である「あたらしい結婚生活」の解説を書かせて頂く。大変刺激的な漫画で、こちらも即座に映像化されそう。

 

夫婦が「互いにしたいことを提案しあって、それを協力しあって必ずやる」というところから始まるのだが、私などそのしたいことはめちゃくちゃに下世話なことで、妻に言うと反応もされなかった。

 

「じゃあ、なんかしたいことない?」と聞くと、「アンタとはない」とのこと。まさにただ離婚してないだけ状態だが、来年、妻と一緒に映画を作る予定はある。

 

7月9日(金曜日)

反抗期の娘に手を焼き、我々親とはまともな会話にならないならばと、児童心理カウンセリングの予約を取って本日一緒に行く予定だったのだが、直前で娘は「絶対行かない!!」と拒否しやがった。こうなるとテコでも動かない。

 

仕方がないので娘なしで、妻と私でカウンセリングを受ける。なんというかバットもグローブも忘れて野球に行くような無意味な感覚に、行く前から虚脱感たっぷりだ。

 

娘の状況を話すと、カウンセラーから「ものすごく真っ当に、全力で反抗期を歩んでいます。反抗期として満点です」とまったくうれしくない満点をもらう。せめて70点くらいの反抗期にしといてほしい。定期考査では私の中学生のときのような点数しか取ってこないくせに、こういうのだけ満点でも喜べない。

 

家に戻ると娘はハマっている「文豪ストレイドッグス」を読んでいた。そして「早く3巻読みなよ!」と漫画の話はニコニコとしてくるのだが、私はまだ2巻の途中だ。コミュニケーションのためには読むべきなのだが、いろいろとこちらは腹も立つしなかなか進まない。

 

夜、息子と映画「プレデター」(監督:ジョン・マクティアナン)鑑賞。近ごろの息子は「プレデター」「大福星」「五福星」をハードリピート。以前は5日連続で見ていれば飽きていたのだが、特性が悪化しているのか、いや悪化と呼ぶべきかどうかも分からぬが、たまには違うものを見ていてほしい。それだけでホッとするのだが。

 

7月12日(月曜日)

来年に監督する予定の作品を岐阜県飛騨市の都竹市長と坂井プロデューサーとともに発表した。来春あたりに、飛騨市で撮影させて頂く予定だ。

 

企画は2017年に発売した「弱虫日記」という私の書いた小説だ。もともとは映像化を目的にシナリオとして書いていて色々と営業をしてきたが、子どもものは興行的に苦戦を強いられることが多いとの事から、なかなか映像化の目途はたたなかった。だったら小説にしてみようと思い、そのシナリオを小説にして、とある児童文学のコンクールに応募したが、一次審査も通らなかった。ということは余程ダメなものなのかと思っていたが、原型となるシナリオは相米慎二監督が唯一誉めてくれたもので、そこが私のよりどころとなっていた。

 

4年前、講談社の方に一次審査も通らなかった原稿を恐る恐る見せたところ、出版は簡単に決まった。が、たいして売れもせず、出版をきっかけに即映像化! にはならなかった。もう無理かなと諦めていたが、坂井プロデューサーや都竹市長、他まだ発表はできないが協力してくださる方々がいてなんとか実現にこぎつけた。しかも、今回は妻もプロデューサーのひとりとして入ってくれる。シナリオや小説はいつもほとんど共同作業だが、一緒に映画を作ることも夢のひとつだったので、夫婦ゲンカにならないようにがんばりたい。

 

作品は昭和後期から平成前半あたりが舞台となるため、そういう場所を探していたのだが飛騨市にぴったりの場所があり、そこで撮らせて頂く。面白い作品を作り上げたい。

 

↑左から都竹市長、足立、坂井プロデューサー。美味しい米も肉も農産物も渓流魚も、そして地酒! も溢れている飛騨市に行くのが楽しみで仕方がない。(by妻)

 

7月13日(火曜日)

1月の終わりくらいから隣の家の解体が始まって新しい家が建つのだが、徐々にその家の全貌があらわれてきている。しゃれた感じのいい家だ。その家を見るたびに娘が「いいなぁ、いいなぁ。お金持ちはいいなあ」と私に嫌味を言うかのように羨ましがり、息子も怖い姉の機嫌を取るようにそれに同調している。うざいし、虫の居所が悪いと「やかましい!」と大きな声を出したくもなる。

 

隣の家には、おじいさんとそのおじいさんの従姉だというおばあさんが住んでいた。ちなみに逆隣りはおばあさんとその姪が住んでいる。親戚付き合いを怠ってきた私からすると両家ともに、信じられない人間関係で一緒に住んでいる。私くらいの親戚関係だったとして、それがどこかで再会して一緒に住むようなことになったのかもしれないなどと、妄想だけしている。

 

工事中の家は数年前におじいさんが亡くなり、おばあさんがひとりで住んでいたのだが、おじいさんが亡くなってほどなくすると、おばあさんはパジャマや下着のような格好で表に出てくるようになった。おしゃれな感じで可愛らしさのあるおばあさんだったし、私の娘や息子が幼いころは「かわいいわねえ」などと声をかけてくれていたが、いつしか目に入らない感じになり、おばあさんから表情もなくなっていった。そうなるまでのスピードがあまりに早くて驚いたら、いつの間に施設に入ってしまい、その家は空き家となり、数年間放置されて野良猫のたまり場になっていた。このまま朽ち果てるのかなと思っていたら、今年の1月に突如として工事が始まったのだ。

 

まずは外国人半数、日本人半数くらいで解体スタッフたちが来て、数日間で家をぶっ壊した。家の中が剝き出しとなり、解体スタッフたちが仕事を終えて帰る夕方以降、数日間だがそこは息子の恰好の遊び場となった。私も遊んだ。なにかおじいさんおばあさんの残したお宝のようなものが出てこないかとチラッと思ったりもしたが、なかった。

 

すぐに更地になると、今度は大工さんたちが来て家を建て始めた。気の良い大工さんたちと顔見知りになった。昼休みや10時、3時のおやつのときに、大工さんたちが椅子をならべて休憩しながらバカ話をしているのが、なんとも羨ましくなる。「ああ、映画を撮りたいなあ」という気持ちになる。

 

今はその家がほとんどできて、内装屋さんなのかなにか分からないが、今度は家の中をきれいにするような職人さんや業者さんたちが来てなにやらしている。よくYMOの音楽を流している。ひとつの家ができるのには、その前に図面を引く人も含めて当たり前だが多くの役割の人が関わっているのだなと思った。

 

どんな人たちが越してくるのか分からないが、ウチの大ゲンカを週に2、3度は聞くことになるだろう。

 

7月14日(水曜日)

朝からジョナサンで仕事。

 

午後の高校教師は夏休み前最後の授業ということで、特に疲れてもいないがお疲れ様会と称して奮発して四川料理のミニコース。前菜四種、薬膳スープ、豚肉と野菜の家常炒め、白身魚揚げと空心菜、海味獅子頭、四川和え麵、デザートのマンゴー大福までしっかり食す。妻がこんなに酒が飲めないことが辛くなる料理はないとずっとブチブチ言っていた。

 

しかし、なぜにこんなにも酒が好きなのだろうか。好きなものが多い方が人生は楽しいだろうから私も酒好きになりたい。というかなにか趣味がほしい。

 

料理はめちゃくちゃ美味しかった! のだが残念ながら腹が六分。いつもの学校近くの成城石井で30%オフのシナモン香るチーズケーキを買って飲みこんだ。

 

一学期最後の授業は生徒たちが書いた短編の合評会をした。各自が他の人の書いた作品を読んで感想を発表する形式だが、皆さんそれぞれに自分の言葉で感想を伝えていて素晴らしかった。へえ、こんな感想をいだくのかと感心する。

 

そして生徒たちが書いた作品は、これがなんというか、なにかを書いてこの場で読みあって感想を言い合えればそれですべて傑作じゃんという気持ちにさせてくれるもので、心が洗われるようだった。

 

「証言 橋本真也34歳 小川直也に負けたら即引退!の真実」(前田日明+藤波辰爾+大谷晋二郎+橋本大地 ほか・著) 読了。

 

7月15日(木曜日)

某所にて打ち合わせ。いろいろと難しい局面なのだが、とにかく前向きにやるしかない。

 

打ち合わせ後、酒のほとんど飲めない私でもビールを1杯だけ飲みたくなり、窪田将治監督の事務所に寄って1杯どころか何杯か飲んだ。

 

2時間ほど気持ちよく飲んでいると、妻から「あんた、映画見てるかサウナかどっかに寄ってるかしてないよね?」とLINEがきた。こんな状況だから打ち合わせも夜までしないことを妻も承知だ。それに加えて今、家では大反抗期の娘と発達グレーな息子が二大怪獣のように訳の分からぬ暴れ方をするので、ワンオペは地獄だ。だから親ふたりが家にいられるときは出来るだけふたりでいようと約束をしているのだ。それに加えて今日は妻に台本の打ち込みも頼んでいた。頼んだからには早めに帰るのでと約束もしていた。なのについつい楽しくて遅い時間までしゃべっていた。

 

続いて「お前、ウソだけはつくなよ。仕事終わってるくせに、仕事忙しいとウソつかれるのが一番ムカつくから」とLINEが来る。「あんた」が「お前」に変わるとヤバイのだが、正直に言ったところで、ものすごく強烈な嫌味が待っているのは分かっている。

 

この日記には下ネタは書かないと決めていると書きつつ、早くもその禁を破るが、続いてのLINEには「もしウソついてんのがバレたら一生セックスしないから。お前、根がウソつきなんだからな。ウソついて忙しい振りしてめんどくさい家から逃げるのは完全にアウトだからな」と来た。

 

数日前に観た「猿楽町で会いましょう」のような恋人時代を過ごした妻と私だからこそ、妻はまったく私のことを信じられないのはよく分かる。

 

妻は私のウソを95%の率で見破る。今回もこうして見破っている訳だが、私は嫌な汗が出てきてソッコーで家に戻った。妻はすでに寝ていたが、昔のようにウソをつきとおすことはせずに、翌朝、正直に言った。舌打ちされたが、大事には至らなかった。やはり正直が一番だ。

 

7月16日(金曜日)

朝からジョナサンで仕事。

 

昼帰宅して、新宿へ。「片袖の魚」でのアフタートークで監督の東海林毅さんと俳優の杉山ひこひこさんと話す。

 

トランスジェンダーの女性役をトランスジェンダーの女性であるイシヅカユウさんが演じているということでも話題だ。当事者と非当事者の会話から、非当事者にとっては当事者との関係が深ければ深いほど、再会したときに狼狽してしまうのも自然な反応のひとつなのだろうと思う。ただ、そのことからやはり当事者の方が生きてきた時間の重さを感じずにはいられなくなる。

 

自分の子どもたちにどう伝えるのかという話が出たが、私は子どもたちとそういう話をほとんどしたことがないということに、まずいという気持ちになった。

 

7月17日(土曜日)

娘、朝から野球。息子は朝から友達宅へ遊びに行く。昨日関東が梅雨明けしたが、気温が35度を超え、灼熱地獄だ。

 

夕方までジョナサンで仕事をして、息子を友人宅まで迎えに行く。お風呂まで入らせて頂き、かなり助かる。

 

帰宅すると、娘も野球から目を真っ赤にして帰宅。日焼けで眼球が血走っている。汗をうまくかくことのできない体質の娘は熱を体内にこもらせやすい。少し熱中症気味だった。

 

しかし今の子はスゴイ。この暑さの中でスポーツをしているのだ。我々が子どものころの夏なんて、今とくらべれば北極みたいに涼しかった。

 

娘は8〜18時まで練習だったのだが、グラウンドまで自転車で1時間半かかるから、実質13時間も外にいたわけだ。この暑さの中いかがなものかとも思うし、チームに入って半年以上たつが、馴染めずに悩んでいる娘が野球を辞めると言い出す口実にもしそうだ。野球自体は楽しいと言っているからなんとか続けてほしいとは思うが、チーム内の人間関係に関しては自分自身でもかなり悩んでいるように見受ける(そりゃ中1の1月に入部した野球素人なんだから当たり前なのだが)。練習後に家で晩飯を食いながらシクシクと泣いていることもある。楽しめる場を見つけてほしいとは思うが、なにか言っても聞く耳は持たないから互いに疲弊してしまう。

 

「小児性愛という病―それは愛ではない」(斉藤章佳・著) 読了。

 

7月20日(火曜日)

ある理由で仕事が遅々として進まない。先々のことを考えると早く進めなければならないから気は焦るが、どうしようもない。誰が悪い訳でもない。強いて言えば、私が「チョー」のつく売れっ子ならばこの問題は起きなかったかもしれないと思ったりはするが、とにかくしょうがない。

 

そして、オリンピックは遅々なのかなんなのかよく分からないが、もうクソみそ一緒な感じで進んでいる。小山田圭吾さんのこととか、ウガンダの選手が消えただとか、バッハ会長がグレーなウチの息子なみに空気が読めないだとか、もうなんか毎日バタバタとなにか起きている感じだ。

 

今回のオリンピックのボランティアをするべきだったと正直思う。このドタバタをしかと目に焼き付けておきたい。私のように鈍感な人間は無理やりにでもこの喧騒を目の当たりにしておかなければ、今年の冬くらいには「なんか今年の夏、大変だったよね」とのん気なことを言ってそうだ。

 

それにしても小山田圭吾さんの件では、90年代にはあんな言動を面白がる面もあったというような言葉を見受けるが、90年代のほとんどを友人とゴミ屋敷で、ゴミのように暮らしていた私には、そんな記憶はまったくない。どの年代でもドン引きレベルなんじゃないかと思うのだが。

 

ただ、このことで小山田圭吾さんが今後の人生をほとんどイジメられている状態で生きることになるのは、止めなければならないだろう。どんな人にでも救いの手を、真摯な姿勢で差し伸べる人がいるからそういう人と出会って、悔い改めながら音楽の才能は生かして生きてほしいと小山田圭吾さんの音楽はほとんど聴いたことはないが思う。

 

そしてこんなときに唯一と言っていいかもしれない明るい話題を爽やかな笑顔で振りまく大谷さーんのことは、やっぱりみんな大好きになるだろう。

 

「プロミシング・ヤング・ウーマン」(監督:エメラルド・フェネル)鑑賞

 

7月21日(水曜日)

今日から恐怖の夏休み。

 

息子は今年から学童がない。どう過ごす気か。娘も野球の練習が週に2日あるとはいえ、部活のほうは大幅に短縮され1日2時間、これも週に2日程度だ。外は36度越えの灼熱地獄。一体これからの40日間どう過ごすのか。恐ろしい。

 

私は逃げるように午前中から打ち合わせに出たが、一度中抜けして、息子の小学校の二者面談に行き、その後また打ち合わせに戻るという形。

 

グレー息子の相談はちょくちょく先生にしているのだが、とりあえず3年生の一学期は行き渋りが減ったので良かった。あとは夏休みにうまく友達と遊んでくれたらいいが、それはまだハードルが高いか。面談が終わり、打ち合わせに戻るときは、すでにかなり疲れていた。

 

以前、ユンケルを3本一気に飲んだら覚せい剤を打ったような気持になれると、覚せい剤をたぶん打ったことのない友人の言葉を思い出し、今こそ実行しようと思ったが値段が高いので2本にしたところ特に変化は感じられなかった。

 

「少年の君」(監督:デレク・ツアン)鑑賞。

 

7月23日(スポーツの日・金曜日)

スポーツの日というのをはじめて知った。

 

元ラーメンズの小林賢太郎さんも解任。このタイミングでこういう過去のことを掘り起こしてきてほくそ笑んでいる人がいるのだろう。気色悪いが、そういう人の気持ちは分かる。私を含めてそういう気色の悪い部分を抱えている人間は少なくないはずだ。しかし、問題はその気色の悪いことを行動に移せるかどうかだと思うのだ。以前は実際に行動に移す人が少なかったような気がするのだが、今はネットで簡単に行動に移せるだけにそのハードルはグッと下がってしまったような気がする。機械にうとくて本当に良かったと思う。これで私がパソコンなどを人並みに使いこなせる人間だったら、どれほど醜い本性を垂れ流していたのか分かったものではない。

 

ここ数日、小山田圭吾さんに関する記事やら書き込みやらコメントやらを貪るように読み、過去に自分のしてきたことやされたこと、表現してきたこと、そして今現在の行動や、こうしてネットにへばりついてこのことに関する文章を読んでいる自分など、さまざまな自分を見て疲弊した。疲弊以外にも少しはしたが、きっと今感じている疲弊以外はすぐに消えてしまうのだろう。それでいいわけがないということだけは分かっている。

 

「17歳の瞳に映る世界」(監督:エリザ・ヒットマン)鑑賞

 

7月24日(土曜日)

今日から娘が10日間サマーキャンプに行く。反抗期の娘が家にいないというのは、まるで怖い部活の顧問がしばらくいないかのような解放感がある。だが、わずか10日間のキャンプでも娘にとって楽しめて有意義なものになってほしいと心から思う。とりあえず母も父も、今は君とぶつかりまくっているが愛していると、将来なにかのきっかけで娘がこの日記を読むようなことがないとも限らないのでこういうことも書いておく。

 

行く寸前にほぼ用意ができていないことが発覚し、妻と娘が大ゲンカ。そのとばっちりが私にもくる。妻に「お前ら、全部私任せでなんで自分でなんにもしないんだよ!」と怒鳴られる。しないのではなく、できないのだが、妻もストレスはたまるだろう。

 

そして、今日は妻の誕生日でもあったのだが、2年連続で失念していた。夜の7時過ぎに「あー鮨食いたい、久々に食いたい」としつこくアピールしていたら「お前、私の誕生日完全に忘れてんだろ」と言われ、完全に忘れていたが「え、覚えてるよ。寝る前にカード渡そうと思ってたよ」と平然を装って言い(またウソをついてしまった)、トイレにこもって慌てて官製ハガキに「誕生日おめでとう。いつまでも一緒にいよう!」とかなんとか殴り書いて、「カードだけは昨日、書いてたんだよね」と言って渡したが、完全にウソだとバレていた。言い訳ではないが、私は妻だけでなく、家族全員の誕生日を覚えていない。

 

「不眠の森を駆け抜けて」(白坂依志夫・著)読了

 

7月26日(月曜日)

本日は息子と妻と妻の両親が日帰り温泉に行く予定で、私はその間にがんがん仕事を進めておく予定だったのだが、行く間際になってから息子が「行かない!」と言い出す。

 

学校に行きたくない!と言い出すときと同じで突発的だからこちらも困惑する。たぶん理由は、8時30分に出発予定だったものが8時20分と少し早めに出ることになり、それに気持ちが対応できなかったのだろうと、今は考えられる。だが、その時は泣き叫びが突然過ぎてこちらもパニックに陥る。息子にとってはよくある症状だが、やはりこの程度の柔軟さは身につけなければ今の社会では苦労するだろう。

 

結局息子は行かず、私と家に残った。息子も「なにかよくないことをしてしまった」という感情はあるのだが、こういうことを何度も繰り返している。友達と遊んでいても、みんながUNOをやりたいと言っても、どうしてもそこでUNOができなかったりするのだ。その理由が「勝てない」ということだったりする。UNOで負けるのなんかどうでもいいじゃないかと普通は思えるのだが、息子は思えない。負けず嫌いとはまったく違うのだが説明する言葉が私にはない(現にいろんなことで負けまくっているが全然平気だったりする)。

 

「協調性がない」ということで括られてしまうし、その特性に理解を持っているつもりの私ですら「イラッ!」としてしまうのだから、赤の他人は「イラッ!」ではすまないだろう。

 

夏休みも今のところ、妻がセッティングしてくれた約束以外では友達と遊べず、近所の区民館で朝から晩まで何百回と読んだドラえもんを読んでいる。そして帰ってくるなり、「のび太ってずるいんだよー」と、のび太のズルさを延々と話している。「みんなが分かるほかの話をしよう」などと言わずに、そんな話でも聞いてやることが大切なのだが、こちらも未熟でそれができないこともある。ああ、楽しく生きられる場所を見つけて欲しい。一応8月にはキャンプに放り出す予定でいるが、そこで楽しんでくれたらいいのだが。

 

夜、ソフトボールの決勝を見る。上野投手、すごいなあと思う。北京オリンピックからずっとエースだ。娘にソフトボールをやらせてみたいなあと見ながら思ったし、この試合を見せてやりたかったなあと、開催に反対の気持ちではあったが思った。

 

にしても今回のオリンピックに関して、子どもたちから「なんか大人たち、反対したり賛成したりケンカしてるよね」という雰囲気をひしひしと感じる。この東京五輪を子どもにどう説明するのか、しなくていいのか、その言葉も思考も私は持っていない。

 

7月31日(土曜日)

ワクチン1回目。昔から注射がとにかく嫌いだから(最後に打ったの小学生のときの予防接種だ)、数日前から嫌で嫌でたまらなかった。周囲も発熱やらなにやら副反応が出まくりでそれが猛烈に怖く、ひどい副反応の出るイメージが明確に湧いてしまっていた。

 

すると注射を打った直後から身体に力が入らず貧血のような状態になり、頭もぼんやりしてきた。だが夕方に息子を野球の練習に連れて行かねばならない。それまで横になって休んでいたのだが、練習を見ている間に、暑さでぼんやりしているのかと思ったら発熱してきた。おまけにコーチの「キャプテンをしたくない人!」という声に息子だけが「はい!」と大きな声で返事をして手をピッとあげた姿を見て熱があがった。

 

↑完全に脱力。やる気ゼロ(by妻)

 

帰宅後、私の具合が悪いと不機嫌になる妻が私の副反応に予想通り不機嫌になった。ぼんやりしながらも私は明日が締め切りの原稿を書いた。誰も褒めてくれないから「俺、スゴイ」と自分で自分をほめる。

 

【妻の1枚】

【過去の日記はコチラ】

 

【プロフィール】

足立 紳(あだち・しん)

1972年鳥取県生まれ。日本映画学校卒業後、相米慎二監督に師事。助監督、演劇活動を経てシナリオを書き始め、第1回「松田優作賞」受賞作「百円の恋」が2014年映画化される。同作にて、第17回シナリオ作家協会「菊島隆三賞」、第39回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。ほか脚本担当作品として第38回創作テレビドラマ大賞受賞作品「佐知とマユ」(第4回「市川森一脚本賞」受賞)「嘘八百」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」「こどもしょくどう」など多数。『14の夜』で映画監督デビューも果たす。監督、原作、脚本を手がける『喜劇 愛妻物語』が公開中。著書に『喜劇 愛妻物語』『14の夜』『弱虫日記』などがある。最新刊は『それでも俺は、妻としたい』(新潮社・刊)。

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