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コロナ禍で「魚食」が変わった? 「お魚かたりべ」が解説する最新の魚事情

  • 2021年9月2日
  • GetNavi web

コロナ禍により、巣ごもり需要による「お家ごはん」が進んでいます。その中で、出来合いの惣菜やお取り寄せは楽な調理方法ではあるけど、毎日となるとお金がかかりますよね。そんな”お家ごはん”の中で改めて注目したいのが「魚食」。お刺身であればスーパーで買って調理することなく、そのまま食べることができ、少し手間を加えればまた違った味を楽しむことができます。栄養豊富で、肉類よりもヘルシーなのもポイントの一つでしょう。

 

魚を食べるうえで、様々な知識を得ることができれば、今よりも魚の美味しさ・魅力を感じることができる――。そこで、一般社団法人大日本水産会・魚食普及推進センターの早武忠利さん(水産庁長官任命『お魚かたりべ』)に話しを聞き、魚の秘密などに迫りました。

↑一般社団法人大日本水産会・魚食普及推進センター・早武忠利さん。水産加工大手メーカー・マルハニチロから出向後、同会に転籍。「水産業界全体が元気になるためならなんでもやります!」とのことで、「お魚かたりべ」として保育園から小・中・高・大学などの出張授業のほか、テレビ番組に識者として出演も

 

世界的に魚食が増加傾向。一方で海に囲まれた国・日本では?

−−最近、近所のスーパーで「魚」が売られていることが多くなった印象があるのですが、実際はどうなのでしょうか。

 

早武忠利さん(以下、早武):外食産業の流通が著しく減ったこともあり、水産業全体でいえば大幅減になっています。また、これはコロナ禍以前からのことですが、マグロやサーモンといったメジャーな魚はすごく人気がある一方で、”名前を知られていない魚”はスルーされてしまう傾向が強いです。スーパーなど、お店によっては魚の販売が増えているところもあるようですが、こういったメジャーな魚ばかりが流通していて、あまり知られていない魚は「本当はおいしいのに、知られていないために安く売られている」ことも多いです。一方で、世界全体的には「魚食」の需要が増えているんですよ。

 

――日本は島国なのに減少傾向にあって、世界では需要が高まっている。少し変な感じがしますね。

 

早武:そうなんですよ。「ヘルシー志向」は欧米人のほうが意識が高いです。中国などのアジア地域を含めて、魚をメインとする「和食ブーム」が起こっています。他にもお金がある人が増えたこと、世界の人口が毎年1億人以上増えていることもあり、日本が魚を仕入れる際に「諸外国に買い負ける」事態になっています。

 

――どういうことでしょうか。

 

早武:以前、私が3年間の中国駐在中に、アメリカオオアカイカという人間くらいの重さのイカの値段が4倍に釣り上がりました。そうなると、一般の方が買うことができませんよね。こういったことから、日本国内では「魚離れ」も進んでいると考えられます。

 

今後は「骨があるから丸ごとはさばけない」と言っていると、ますます一般の人が魚を食べられなくなってしまうかもしれません。

 

「サメは臭い」は冷蔵庫がない頃の誤解が、いまだに伝わる

――先ほど”名前が知られていない魚”がスルーされる現状があるという話がありました。日本国内に流通しているうち、「実はおいしい」「実はこんな食べ方がある」といった魚を教えてください。

 

早武:個人的に食べていただきたいのがモウカザメ(ネズミザメ)。まず、モウカザメは、この名の通りサメの一種で、日本国内では「サメは臭い」「アンモニア臭がする」というイメージがあります。でも、これはしっかり冷やすことができなかった時代に言われていた話で、今はきちんと冷蔵されているので臭みを感じることなく、おいしく食べられます

 

――「サメが臭くない」のは意外です。

 

早武:逆に言うと、冷蔵庫がなかった時代、例えば江戸時代なんかはマグロの大トロは鮮度が保てないから、捨てられるか煮てから食べていました。それが現代までに冷蔵技術が進化し、生で食べるようになり人気部位になったのですが、なぜかサメは潤沢に冷やせなかった時代のままの情報が、現在まで続いてしまっているんです。

 

ちなみに、モウカザメは、ガーリックバターのソテーにするとふわふわのステーキを味わうことができます。モウカザメの切り身は売っているスーパーならたったの200円前後で買えるので、試していただきたいですね。あとは、サメの心臓であるモウカノホシもオススメ。レバ刺し好きの方なら絶対に好きになると思います。なかなか知られていませんが、ぜひ食べて欲しいですね。

 

「魚の旬」はどんな理由から「旬」とされるのか

――スタンダードな魚だと、日本には「旬の魚」というものがあります。これはどんな理由から「旬」と言えるのでしょうか。

 

早武:他の時期より良い鮮度で食べられるのが「旬」です。最低条件として「その時期に獲れる」ことが挙げられます。「今、シーラカンスが旬だ」と言われても、獲れなければ意味がないので(笑)。そのうえで、「餌を食べて太って、脂が乗る旬」「陸に近付く」「たくさん穫れる」といった「その魚をおいしくいただける時期」が「旬」ということになります。

 

ただし、「脂が乗っていないとおいしくないのか」と言われるとそうとも限りません。例えば、初夏は初ガツオの時期ですが、初ガツオは南の海で産卵します。要するに、暑い海域は産卵には良いけど、栄養は採りにくいということです。それで日本の三陸沖までどんどん北上していき、いろんな餌を食べてどんどん太っていくんですね。なので、初夏が「旬」とされている初ガツオはまだ痩せているものが多いですが、サッパリとしたおいしさがあります。逆に、寒くなった時期に出回る、いわゆる戻りガツオは、いろんな餌を食べた後なので、しっかり太って脂が乗っています。好みにもよりますが、それぞれのおいしさがありますね。

 

また秋鮭は、産卵のために陸に近づく際、栄養を卵や白子に渡して消費しているので脂も落ちてくるのですが、北海道や東北地方の郷土料理「ちゃんちゃん焼き」などは、脂が落ちた身だからこそ、野菜のエキスが染み込んでおいしくいただけます。このように脂が乗っていない時期でもおいしい魚はたくさんありますし、料理によっても味はずいぶん変わってくると考えていただければと思います。言い換えれば「旬=味」だけでなく「旬=その時期・季節を感じる食材」ということです。

↑春から夏にかけて旬とされるさっぱり系の初カツオですが、冬場の戻りガツオも脂が乗っておいしいそうです

 

魚食で避けられないアニサキス問題

――一方、魚を食べる上で、「絶対やっちゃダメ」ということがあれば教えてください。

 

早武:お刺身にして食べる際に、注意していただきたいのがアニサキスです。アニサキスは魚の寄生虫で、どうしても避けられないものです。

↑魚の寄生虫・アニキサス

 

早武:魚種にもよるので説明が難しいですが、おおまかには魚介類の内臓にいて、魚介類が死んだ後、時間の経過とともに、内臓から筋肉に移動します。このアニサキス幼虫を食べると、胃壁や腸壁に刺入して食中毒(アニサキス症)を引き起こしてしまいます実際に、流通している魚でもあり得ることなので、本当に注意していただきたいです。

 

自分で魚をさばくようになると、アニサキスがあるか分かるようになると思います。また、「お酢でアニサキスが死ぬ」と言われることもありますが、これは間違った情報です。お酢でアニサキスは死なないことを覚えていただいたいですね。不安な方は冷凍したり、加熱調理をすると良いでしょう。

 

――万が一、アニサキス症になったらどう対処すれば良いのでしょうか。

 

早武:すぐに病院へ行くことが一般的ですが、「病院まで数時間かかる」場合や漁師さんなどで一週間海上の漁に出ていて、すぐに病院に行けない場合などは、正露丸を飲んでしのぐこともあるようです。

 

――お刺身などの賞味期限についてですが、鮮度の良い魚だと、何日もおいしくいただけるものがあります。賞味期限の注意点はありますか?

 

早武:これは一概には言えません。それぞれ漁獲方法が違いますし、流通状態も分かりません。この点は魚の目利きでないと判断が難しいところでもありますが、魚を一尾ずつしっかり見てあげるしかないんです。ご自身で魚をさばく訓練をし、経験を積んで判断力を高めていくほうが良いと思います。

↑あらゆる方向から「魚食」を解説してくれた早武さん。手に持っているのはスルメイカのくちばし

 

魚を捌けるようになるためには!?

――魚を捌けるようになるためには、どのようなトレーニングをしたらいいでしょうか。

 

早武:養殖の鯛をお店で一尾予約すれば、2千円ほどでアニキサスがいない鮮度の良い魚が手に入ります。初心者はそこでお刺身が楽しめる「魚の鮮度」と「捌き方」を覚えていって欲しいです。そして、慣れたら様々な種類の天然魚にチャレンジして欲しいですね。

 

魚食普及推進センターのサイトで魚の捌き方のコツを動画で公開しています。簡単に家庭でできる方法なので、是非ご参考にしていただきたいですね。

 

−−結局は自分自身でやらないと魚の知識は身につかないということですね。

 

早武:そうですね。実際に自分でやってみることで「魚を食べる」だけでなく、魚に触れる楽しさをご家族や友人とも共有できるかもしれません。ぜひチャレンジしてみてください。

↑魚食普及推進センターのサイトでは「魚の内臓はキッチンバサミで取れる」「生ごみは牛乳パックにいれて冷凍すれば匂わず快適」「焼き魚はアルミホイルの上で焼いてそのまま皿の上にすれば水洗いが少なくなる」といった魚調理のコツが配信されています

 

↑本物のカジキの上くちばしと写真(右手のぬりえの右側のもの)と比べて、大きさも教えてくださいました

 

やはり魚は奥が深い世界だと痛感しましたが、それだけ複雑なことを、分かりやすく親身に解説してくださった早武さん。終始楽しい取材となり、今晩のおかずに、普段は手を出さなかった魚類にしてみたくなりました。意外な発見、意外なおいしさに出会える。それもまた、魚の魅力だと思いました。

 

写真/中田 悟

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