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楽器のチカラでSDGsを推進! ヤマハが取り組む「器楽教育普及」と「認証木材調達」

  • 2021年4月30日
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新興国の子どもたちに器楽演奏の楽しさを届ける〜ヤマハ株式会社

 

「Music can change the world.(音楽は世界を変えることができる)」とは、作曲家・ベートーベンの言葉です。これを体現しようとしているのが、総合楽器メーカーのヤマハ。お馴染みの「ヤマハ音楽教室」をはじめ、国内はもちろん、海外でも古くから音楽教育プログラムを展開してきましたが、2015年からは新興国を中心に「スクールプロジェクト」という活動を行っています。

 

楽器・教材の提供と指導者育成をワンセットに

「『スクールプロジェクト』とは、器楽教育を新興国の学校に導入するための活動です。音楽の授業が存在しない国や、音楽の授業で楽器の演奏を行わない国は珍しくありません。また、先生自身が楽器に触れた経験がなく、教えることが出来ない、というケースもあります。そうした国々に対して楽器演奏の楽しさを伝え、子どもたちの豊かな成長を支援するのが目的です」と話すのは、同プロジェクトを展開するAP営業統括部戦略推進グループ主事の清田章史さん。

↑AP営業統括部戦略推進グループのメンバー。左から清田章史さん、屏紗英子さん、爲澤浩史さん

 

具体的な内容としては、楽器と教材の提供、そして現地の学校の先生たちの養成など。現地政府や教育機関とも連携しながら、音楽授業や器楽クラブ活動の普及を行い、現地の公立校や私立校において、器楽教育の機会を提供することを目指しています。

 

教材の内容は国ごとにカスタマイズ

「2021年4月時点で活動を展開しているのは、マレーシア、インドネシア、ベトナム、インド、ブラジル、UAEの6か国。そして今年、エジプトでも器楽を用いたトライアル授業が開始される予定になっています。用いられる楽器は、展開国の状況に合わせて提案していますが、最も多いのはリコーダーです。初の器楽教育という場面においては、楽器自体が安価である点と、運指と吹奏の要素を兼ね備えている点を、メリットと感じていただけるようです。リコーダー以外では、ポータブルキーボードやピアニカなども展開しています。

 

また、教材は当社が独自で開発した“Music Time”という教材を提供しています。“Music Time”は、楽器演奏の経験がない先生でも教えることができる点が特徴です。現地の需要に応じて民族音楽を取り入れるなど、内容をカスタマイズするなどの工夫も施しています。ちなみに学校の先生方への研修は、カリキュラムやフィロソフィーを理解した現地の講師を採用・契約して実施しています。これは、日本からの支援が無くても持続的に活動できる体制を構築するためです」(清田さん)

↑2021年3月現在の活動展開国

 

↑「スクールプロジェクト」の活動内容

 

非認知能力の育成にも期待

音楽の楽しさは誰もが認めるものでしょう。楽器に触れたことのない子どもたちが、初めて楽器を手にし、曲を演奏できないまでも、音を出して笑顔になる姿も容易に想像できます。豊かな心が育まれる点も期待できますが、実は器楽教育の効果はそれだけではありません。

 

「演奏できるようになるまで一緒に練習したり、クラスメイトと協力しあって一つの曲を仕上げたり、クラス発表会で緊張しながら披露したりと、学校での楽器演奏にはいろいろな場面があります。こうした経験は単に楽器の演奏スキルの向上を促すだけではなく、協調性が育まれたり、自尊心が芽生えたり、ルールを守る大切さを知ったりするなど、いわゆる非認知能力の育成にも繋がると考えています。楽器の演奏を体験することで、子どもたちが幸せを感じ、将来に希望を持てるようになってほしいという想いを込めて活動しています」(清田さん)

↑オリジナル教材「Music Time」。挿入曲はワールドワイドな童謡や、現地の子どもや大人にとっても馴染みのある伝統曲などが使われている

 

スクールプロジェクトは、先生や保護者からの評価も高いそうです。新興国は、実学主義になりがちと言われていますが、子どもたちが「楽しいと感じる授業」を提供できることも貴重なのかもしれません。

 

ベトナムでは学習指導要領に追加

実際に各国のスクールプロジェクトはどのように導入されているのでしょうか。インドやマレーシアでは、私立校やクラブ活動が中心ですが、ベトナムでは、学習指導要領に器楽教育が新たに追加され、2020年9月から日本の小学1年生にあたる子どもを対象に授業がスタートしたそうです。

 

「2016年頃、ベトナム教育訓練省にて器楽教育の必要論が出ました。その情報を受け、文部科学省やJETRO(日本貿易振興機構)の協力のもと、プレゼンテーションを行ったのです。その後、セミナーなどを経て徐々に器楽教育の意義が関係者に理解され、まず学校のクラブ活動として認められ、活動がベトナムのテレビで取り上げられるなど話題となりました。

 

ベトナムに限らず新興国では、音楽は富裕層の趣味というイメージが強いため、当初はそんなイメージを払拭させ、みんなで一緒に楽しもうという雰囲気を作るのに苦労しました。そうした活動もあり、現在ベトナムでは器楽教育が学習指導要領に加えられ、約2500校で器楽教育が行われています」(清田さん)

↑ベトナムでのリコーダークラブ風景

 

↑ハノイ(ベトナム)で開催されたリコーダー・フェスティバル

 

現地で授業風景を見学した、AP営業統括部戦略推進グループ主事の爲澤浩史さんは、こう話します。

 

「日本では当たり前のリコーダーが、ベトナムの子どもたちにとっては、見たことがない楽器なんです。初めて手に取り、『何これ?』と言いながらも、目をキラキラさせながら楽しそうだったのが印象的でした。子どもたちから直接、ありがとうと言われたこともありますし、『リコーダーの授業のおかげで学校が楽しくなった』と聞いたときは、嬉しかったです」

 

新しいカリキュラムの導入は、先生にとって負担が増えることは否めません。実際、当初は不満の声も聞かれたそうです。しかし、器楽教育の重要性と効果が理解され、今では先生からも感謝の声が聞かれるそうです。

 

サステナビリティ重点課題の特定

「スクールプロジェクト」としては、2022年3月末までに7か国3000校、累計100万人への導入を目標に掲げていて、同社の中期経営計画目標にも含まれています。

 

「経営目標として、従来は財務的な目標だけだったのですが、初めて非財務目標が掲げられました」とは、経営企画部サステナビリティ推進グループ・リーダーの阿部裕康さん。「当社らしいサステナビリティの領域で、社会への貢献度が高い活動を、将来の事業成長へのつながりも見据えて取り組んでいます」と話します。

↑経営企画部サステナビリティ推進グループ リーダー・阿部裕康さん

 

「サステナビリティについて、当社は1970年代からいわゆる環境管理、汚染の防止を発端に取り組んでいます。フィランソロピー(ボランティア)的な取り組みも行っていますが、基本的には事業を主体としています。バリューチェーンも含め事業全体において、環境や社会の持続可能性にマイナス影響を与えるものを特定し、まずはそれに対応する。一方でプラス影響についても積極的に創造していくというのが、基本的な考え方です」(阿部さん)

 

同社では、事業活動における環境や社会への影響、ステークホルダーの期待や社会要請に鑑みて「サステナビリティ重点課題」を設定していますが、まずは、社会的責任に関する国際規程であるISO26000、およびSDGsに照らして、バリューチェーンにおけるサステナビリティ課題を抽出。その課題をステークホルダー視点で吟味し……と、段階を踏んで重点課題を特定しているのです。

↑サステナビリティ重点課題の設定

 

「当社がひとりよがりで決めるのではなく、社会からのさまざまな要請、ステークホルダーの声、そして事業のうえでの重要性を考慮し決めています。“サステナビリティ重点課題”“基本的なサステナビリティ活動”“経営基盤”と三段階に分けていますが、“サステナビリティ重点課題”以外が重要でないというわけではなく、とくに重視をして、しっかり経営レベルで議論しながら、推進している状況です」(阿部さん)

 

重点課題と木材資源への取り組み

例えば「スクールプロジェクト」のほかに同社が進めている事例の1つが木材調達における活動です。楽器などの製造には多種多様の木材を使用しますが、木材の調達時に違法木材が紛れ込んでしまうリスクがあります。そうしたリスクへの対応のためにトレーサビリティや合法性の厳格な確認を進めるとともに、持続可能な森林から産出される認証木材の利用拡大を進めています。認証木材の採用率は2019年度の28%から、2020年度は48%まで飛躍的に向上。2021年度の目標50% に向けて順調に推移しています。

 

「タンザニアでは、木材資源の持続性向上に向けた活動を現地で行っています。クラリネットなど木管楽器に欠かせない“アフリカン・ブラックウッド”という、準絶滅危惧種に指定されている樹木を取り巻く課題への取り組みです。元々アフリカの中でも限られた地域にしか分布しない樹種である上、伐採した樹木のほとんどが楽器材として使われます。近年は、楽器に適した良質材が減少しており、過剰に伐採しさらに資源量が減少するという悪循環に陥っています。そこで当社では、専門家の力を借りながら、楽器に使える良質な木材を育成し、現地の人たちにとって持続性のあるビジネスとして確立できるよう活動しています」(阿部さん)

↑タンザニアでの森林調査の様子

 

違法木材(違法伐採)の問題は、新国立競技場の建設でもニュースになりました。同社のこの活動は、木材資源の管理、維持というだけでなく、森林伐採による酸性雨や温暖化など地球規模での課題にも向き合っていると言えます。

 

SDGsの目標4番、12番、15番を重視

最後に、SDGsの目標のなかで何番を重視しているかうかがいました。

 

「環境へのマイナス影響の懸念から、やはり木材資源への取り組みに関係する12番と15番、そして社会・音楽文化への貢献と事業へのつながりからスクールプロジェクトにリンクする4番があげられると思います。その他にも多くのテーマに取り組んでいますが、しっかりと議論を深めながら当社らしい、当社ならではのSDGsやサステナビリティへの取り組みを推進していきたいと考えています。短期的にはコストが上がることもあるかもしれませんが、そこは常にイノベーションをもって、社会・環境課題への対応を企業価値の源泉にできるように知恵をしぼっていきたいと思います」(阿部さん)

 

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