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【街中華の名店】盛りも映えも愛情たっぷり。墨田区石原の「菜来軒」は陸の孤島のオアシスだ

  • 2020年1月25日
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人形町系大勝軒、代一元、生駒軒など、街中華には様々なのれん分けが存在するが、なかには親族のつながりから派生したケースもある。その一例が今回紹介する「菜来軒」だ。数店舗あるなかから今回訪れたのは、墨田区石原という住所に位置する下町の分家。

 

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↑「蔵前橋通り」沿いにたたずむ同店。ほかにも味のある飲食店が数多く並び、周辺には町工場なども数多い

 

最寄り駅は両国、錦糸町、本所吾妻橋のどこからも徒歩15分弱かかり、陸の孤島的な場所で、決してアクセス至便とはいえない。だがそこには、まさに“街の中華屋さん”と呼ぶにふさわしい、あたたかな空間と愛情いっぱいの料理が待っている。

 

 

とにかくチャーシューの存在感がスゴい

味を支えつつ心地よい雰囲気をつくるのは、街中華では珍しい女性店主の福澤和子さん。常連客から“おかあさん”と慕われる、愛されキャラだ。その人柄はメニューにもあらわれ、おいしさはもちろん量もたっぷりで盛り付けも丁寧。たとえば、酒のアテに最高な「メンマチャーシュー」は3〜4人前はあろうかという大ボリュームで、うれしいことにきゅうりもがっつり入っている。

↑「メンマチャーシュー」900円。チャーシューは4枚ぶんできゅうりは1本ぶん、メンマもどっさり入る山のような貫禄で、価格にも納得だ

 

チャーシューは、なじみの精肉店から届く巨大な塊の豚肩ロースを毎朝仕込み、メニューごとにカットしたものをこの一皿にも使用する。メンマは大きなたけのこ水煮から切り出し、しょうゆダレや黒コショウなどでしっかり味付けする自家仕込み。そこにみずみずしいきゅうりを切って合わせ、しょうゆやごま油などで仕上げる。

 

肉はむっちりジューシー、メンマはコリコリ、きゅうりはシャキシャキ。そこにほどよくエッジの効いた味付けがマッチし、ビールをはじめとする酒がグイグイ進む。数名で飲むなら、絶対オーダーするべき逸品だ。

↑チャーシューは、朝からじっくり煮込んだ肉塊を夕方にタレ漬けし、ゆっくり寝かせて都度使う、同店に欠かせない具材のひとつだ。本稿後述のメニューを知ればわかるが、使用量だけでもかなりのもの

 

ランチやシメに活躍するメニューといえば麺飯類だが、同店で絶大な人気を誇るのが“五目”のチャーハンと焼きそばだ。その理由は、一般的な五目のイメージを凌駕する盛り付けと、チャーシューの存在感にある。

↑「五目炒飯」750円。通常のチャーハンのうえに、玉子焼き、チャーシュー、海老、かまぼこがのり、見た目にも華やかだ

 

塩とこしょうが中心のシンプルな味付けだが、それもあって素材本来の味が口いっぱいに広がる。卵を2個ぶん使うという玉子焼きは見た目の演出だけではなく、ふわふわとした食感がエアリーなアクセントをプラス。多彩な具材も相まって、ハイクオリティなチャーハンに仕上がっているのだ。

↑「五目(揚)焼そば」750円。こちらも一目瞭然の豪華っぷりで、ドカンと鎮座するチャーシューは、まるでフレンチの「パテ・ド・カンパーニュ」のようないで立ちだ

 

豚肉、海老、いか、ウズラの卵、白菜、玉ねぎ、にんじん、ふくろだけ、ピーマン、ヤングコーンと品目数は圧倒的。かまぼことなるとが別々でのる点も特徴だが、これも彩りを重視する福澤さんのこだわりである。

 

↑焼きそばはこの揚げ麺のほか、揚げていないタイプの2種類から選べる

 

細めでパリパリの揚げ麺に絡む、味も食感も異なる様々な具材の数々。食事にもつまみにも万能な焼きそばで、シメに迷ったらこちらを選ぶのがいいだろう。

長いもや調味ダレなどを駆使する大ぶり餃子も絶品

ここまで3品の必食メニューを紹介したが、実は同店で一番人気なのは餃子だ。こちらは見た目こそ一般的な餃子と大差はないが、あんに独自の食材や調味料が使われている。長いも、全卵、みそダレ、焼肉のタレだ。ベースは豚ひき肉、キャベツ、ニラ、しょうが、にんにくなどベーシックだが、隠し味的なエッセンスを加えることで、口どけやうまみの輪郭をよりよくしている。

↑餃子の皮も、長年付き合いのある製麺所から納品。大判かつ厚めでオーダーし、同店らしい食べ応えのある餃子に包んでいく

 

ひき肉は赤身と白身を分けて仕入れ、自家調合。キャベツは微細にカットするなど、基本の具材にも手間ひまをかけて仕込む。あとは焼けばほぼ完成といえる餃子なので、まずは何も付けずにそのまま。次は酢とこしょうで食べるのが福澤さんのオススメだ。

↑「餃子(ギョーザ)」450円。基本的なレベルが高く、主食のサイドメニューとしても、つまみとしても万能なのがオーダー率の高さの理由だ

 

ほかに、お酒のお供として人気なのは「揚げレバー」。これは「揚げ茄子」「揚げ餃子」とともに“揚げの三兄弟”としてカテゴライズされたシリーズのひとつで、前記の肉屋から届く新鮮なレバーを、パンチの効いた味付けで調理する逸品だ。

↑「揚げレバー」750円。プリっと弾力のいいレバーと、にんにく、しょうゆ、こしょうの効いた味付けがたまらない

 

 

南の島から上京し、陸の孤島に都会のオアシスを作った

最後に、「菜来軒」の歴史を聞いてみた。ルーツは鹿児島県・奄美群島内の加計呂麻(かけろま)島。その島出身の、福澤さんの家族や親戚が上京し、はじめた中華料理店が「菜来軒」だという。

 

1944年生まれの福澤さんもその道へ続いた。地元の高校卒業後に兄の「菜来軒」で修業し、結婚後はいとこが営む「菜来軒」へ。いとこ親族は48人という大所帯で、その一番年下だったのが福澤さん。そしてご主人とともに独立して1981年、この墨田区石原に自身の「菜来軒」をオープンさせた。

↑家族の写真が飾られ、居間のような小上りを備えた、ガチでアットホームな空間。現在、親族の「菜来軒」は埼玉の川口や蕨、千葉の西船橋など数店となったが、最盛期は首都圏に38もの「菜来軒」があったという

 

昭和、平成、令和と時は流れて約40年。ご主人は昨年他界したが、福澤さんは5人の子どもと13人の孫に恵まれ、ときおり手伝ってもらいながらいまも元気に店を切り盛りする。常連客には若めのおひとり様も多いというが、きっと“おかあさんの味”や温もりを求めてのことだろう。

↑「ハイボール」は400円で、中身のウイスキーをおかわりするときはセルフサービスの杯数申告制。ほかにも申告制のドリンクがあり、性善説で成り立っている

 

壁には営業時間の張り紙とともに、「時間外はおかあさんに体調きいてね〜」「菜来軒を長く続けてほしい委員会」といった文も書いてあり、いかに愛されているかがよくわかる。また、メニューリストを作ってくれる常連がいるなど、まさに“下町人情”を絵に描いたような空間なのだ。たまにはちょっと時間をかけて、東京の街を歩いてみよう。なかには、同店のようなオアシス的街中華もあるのだから。

 

 

撮影/我妻慶一

 

【SHOP DATA】

菜来軒

住所:東京都墨田区石原4-19-4

アクセス:JR総武線ほか「錦糸町駅」北口徒歩14分

営業時間:11:30〜24:00(14:30〜16:30は不定休)

定休日:月曜

 

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