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カメラ界の生ける伝説!! プロが愛してやまないタムロン「90mmマクロ」の魅力とは?

  • 2018年5月7日
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吉森信哉のレンズ語り〜〜語り継ぎたい名作レンズたち〜〜 第2回「タムロン 90mmマクロ」

 

マクロレンズは、一般のズームレンズや単焦点レンズでは不可能な高倍率撮影が可能なレンズである。そのなかでも、焦点距離が100mm前後(35mm判フルサイズ換算)の中望遠マクロレンズは、高倍率時でも被写体との距離が適度に保て、大きなボケ効果を得ることもできる。そのため、いろんな撮影ジャンルに活用できる“定番マクロ”とされているのだ。そんな中望遠マクロレンズにおいて、フィルムカメラの時代から“伝説のマクロ”と呼ばれ、多くのカメラマンに愛用されてきた製品がある。それがタムロンの「90mmマクロ」シリーズである。

 

【今回ご紹介するレンズはコレ!】

手ブレ補正やAF性能などが向上した、シリーズ最強モデル


タムロン
SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017)
実売価格6万8980円

マクロレンズに求められる高解像力と同時に、滑らかで美しいボケ描写も得られる。それこそがタムロンの90mmが“伝説のマクロ”と呼ばれ続けてきた所以である。そして、その現行モデル(Model F017)では、手ブレ補正機構「VC」にシフトブレ補正機能が追加され、マクロ域での手ブレ補正性能が向上している(一般のレンズ内手ブレ補正はマクロ域ほど補正効果が低下してしまうのだ)。また、超音波モーター「USD」の制御ソフトの改善により、AF時の合焦速度や精度も向上。さらに、従来よりも高レベルの防塵防滴構造が採用され、屋外撮影時の信頼性も高まっている。

SPEC●焦点距離:90mm ●レンズ構成:11群14枚(LDレンズ1枚、XLDレンズ2枚) ●最短撮影距離:0.3m ●最大撮影倍率:1倍 ●絞り羽根:9枚(円形絞り) ●最小絞り:F32 ●フィルター径:62mm ●最大径×全長:79mm×117.1mm ●質量:610g ●その他:防塵防滴構造 ※全長と質量はキヤノン用の値

↑優れた光学性能や手ブレ補正機構「VC」だけでなく、金属製外装を採用した高品位なデザインも魅力の「タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017)」

 

次の写真は、赤いチューリップのシベ部分を大きくクローズアップ。肉眼では確認しにくい雌シベの細部やそこに付着した花粉までハッキリ確認できる。こういった本格的なマクロ撮影では、シフトブレ補正対応になった手ブレ補正機構「VC」が心強い。このほかの作例については、記事後半でたっぷりお届けしよう。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F5.6 1/80秒 +1補正 WB:太陽光 ISO800

 

伝説はこうして始まった――タムロン「90mmマクロ」の系譜

90mmマクロの初代モデルが発売されたのは、いまから40年近く前の1979年である。それまでのマクロレンズは、文献の複写などを想定した“近接撮影時の解像力を重視した光学設計”になっていた。そのため、人物撮影などに使用すると硬調な描写になりやすく、ピント位置前後のボケ描写も滑らかさに欠けていた。

 

だが、タムロンは、普通の中望遠レンズの光学系を拡張して近距離補正を行い“マクロ域でも使えるレンズにする”という独自の設計方針を採用する。これによって、中望遠としてもマクロとしても活用できる、“ボケ描写が滑らか、かつシャープで立体感のある描写”が得られる「90mmマクロ」が誕生した。そして、この革新的な中望遠マクロレンズは、人物撮影や自然撮影など幅広いジャンルのカメラマンに支持されることになる。

 

これが“伝説”の始まりである。

SP 90mm F/2.5 (Model 52B) 発売:1979年

↑記念すべき初代モデル。無限遠から39cmのマクロ域(0.5倍)まで、高コントラストで鮮鋭な画質が得られる。また、SP2倍テレコンバーターの使用で、等倍(1倍)のマクロ撮影も可能

 

その後、外観デザインや内部構造、またレンズ表面のコーディングなど、微妙な部分の改良を重ながら、この「最大撮影倍率0.5倍のMF中望遠マクロレンズ」は、多くのカメラマンに支持され続けてきた。なお、MFタイプの90mmマクロレンズは、いずれもマウント部が交換できる「アダプトール2」マウントが採用されていた。

SP 90mm F/2.5 (Model 52BB) 発売:1988年

↑ロングセラーレンズとなった初代モデル(Model 52B)の外観デザインを一新したモデル

 

しかし、カメラ市場がMFからAFに移行すると、単にフォーカス機構をAF化するだけでなく、“最大撮影倍率を等倍に引き上げる”ことも求められるようになってきた。そこで、1990年に発売された最初のAFモデル「SP AF 90mm F/2.5 (Model 52E)」から6年後、最大撮影倍率を等倍(1倍)に高めた「SP AF 90mm F/2.8 MACRO[1:1] (Model 72E)」が発売された。この際、マクロ撮影領域の拡大と小型軽量設計を両立するため、開放F値は長年守り続けた2.5からF2.8に変更されている。

SP AF 90mm F/2.5 (Model 52E) 発売:1990年

↑AF化された最初のモデル。通常撮影側と近距離側の距離範囲が設定できるフォーカスリミッター機構を採用

 

SP AF 90mm F/2.8 MACRO[1:1] (Model 72E) 発売:1996年

↑最大撮影倍率1倍を実現したモデル。また、マクロ撮影で多用するMFの操作性を向上させるため、新開発の「フォーカスリング・クラッチ機構」を採用。幅広フォーカスリングの滑らかな作動で、快適なフォーカシングを実現

 

そして、2000年ごろからのデジタル化の流れに対応すべく、2004年に発売された「SP AF 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 (Model 272E)」では、デジタル対応のコーティングを採用。デジタルカメラで問題になる「面間反射」を最小限に抑えるための策である。乱反射するフィルム面の内面反射とは違い、CCDやCMOSの表面が鏡のようになっているデジタルカメラでは、レンズ側の反射防止対策が不可欠なのだ。

SP AF 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 (Model 272E) 発売:2004年

↑フィルムでもデジタルでも、変わらぬ高画質を得るため、レンズコーティングを改善した光学設計“Di”を採用。さらに、フォーカスリングのラバーパターンも、指掛かりのよい形状に変更

 

SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F004) 発売:2016年

↑タムロン独自開発の手ブレ補正機構「VC」を搭載。また、超音波モーター「USD」の採用により、AFによるスピーディーなピント合わせが可能。光学系も、XLDレンズ2枚やLDレンズ1枚を採用してリニューアル

 

※一部、ここで紹介していない製品もあります

最新モデルを使い倒し! まずは新デザイン採用の外観をチェック

ここからは、現行モデルである「SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017)」をより詳細に見ていこう。

 

まず、製品名の頭に付いている「SP」とは、MFタイプの時代からタムロンの高性能レンズに与えられてきた称号である。2015年にそのSPシリーズが刷新された。光学性能の優秀さはもちろん、高品位な金属外装を採用し、マウント部の周囲にはルミナスゴールドの「ブランドリング」があしらわれた。このリングの存在は、ユーザーとタムロンの繋がりを“記念の指輪”に見立ててイメージした、新しい「SP」の象徴となる。そして、新しいデザインのスイッチ類や、見やすい文字表記などを採用し、操作性や視認性も向上させたのである。

↑現行モデル、SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017)に専用の丸型フード(HF017)を装着したところ。金属外装のレンズ鏡筒とは違い、このフードはプラスチック製。だが、レンズとの外観バランスは良好だ

 

↑金属鏡筒に埋め込まれた「SP」のエンブレム。高品位な操作感や描写性能を約束する証である

 

↑従来よりも大型化された表示窓(距離表示)を採用し、視認性を向上させている

 

↑使用される条件を考慮して形状やトルクが改善されたという、各種の切替スイッチ。被写体までの距離に応じて、フォーカス(AF)の移動量を制限できるフォーカスリミッター(上のスイッチ)を活用したい

 

光学系に関しては特殊硝材XLD(eXtra Low Dispersion)レンズ2枚と、LD(Low Dispersion : 異常低分散)レンズを1枚を使用して色収差を補正するなど、先進の光学設計で諸収差を徹底的に補正し、解像性能が高くてシャープな画質を実現。そして、円形絞りの採用によって、タムロン90mmマクロの伝説を引き継ぐ良質なボケ描写を可能にしている。これらの仕様は、基本的に前モデル「SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F004)」を踏襲したものである。

 

さらに、ほぼ可視光全域で秀逸な反射防止性能を誇る「eBANDコーティング」に従来からのコーディングを用いたBBARコーティングを組み合わせ、フレア(画面全体が白っぽくかすんで写る現象)やゴースト(本来は見えないはずの光が写ったもの)を大幅に抑制してクリアでヌケのよい画像を実現している。また、最前面レンズには、撥水性・撥油性に優れ耐久性にも優れる「防汚コート」も採用。これによって、レンズ表面に付着した汚れを簡単にふき取ることができる。

 

美しいボケ味に感動!! 最新モデルを実写チェック

ここからは実際の作例を見ていきたい。

 

まずは鮮やかな柄のチューリップの花弁をクローズアップ。風で花弁が微妙に揺れていたので、カメラのAFモードを「AIサーボ」(シャッターボタンを半押ししている間、被写体にピントを合わせ続けるAFモード)に設定。超音波モーター「USD」は作動音が気にならないので、小刻みなピント調節が繰り返されても快適に撮影できる。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F5.6 1/80秒 +1補正 WB:太陽光 ISO100

 

続いて、20mくらい離れた位置から、1本のサトザクラを狙う。木の前後をぼかすため、絞りは開放F2.8に設定。マクロレンズは接写で使用するレンズというイメージがあるが、本レンズであればこのように中望遠レンズとしても優秀な描写を得ることができる。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F2.8 1/800秒 WB:太陽光 ISO100

 

こちらは赤いストライプ模様が印象的だった黄色のチューリップ。開放絞りによって、その花の前後を大きくぼかした。とろけるようなボケ描写が美しい。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F2.8 1/400秒 +1補正 WB:太陽光 ISO100

 

花の時季にはまだ早いバラだが、逆光に映える若葉がみずみずしい。その背後に光の輝き(光沢のある葉の反射)があったので、その点光源を美しい形にぼかしたい。このレンズには、円形絞りが採用されている。だから、絞り開放時に画面周辺の点光源ボケが楕円に歪む口径食を避けるために1、2段絞り込んでも、絞り羽根の角が目立たない美しいボケが得られるのである(通常は絞る=F値を大きくすると、ボケの形が角張ってくる。そうならないよう、構造を工夫したのが円形絞りである)。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F4 1/100秒 +0.7補正 WB:太陽光 ISO125

 

赤みを帯びた夕方の光を背景に、白いリンゴの花が可憐な姿を見せてくれる。ピントを合わせた部分のシャープな描写と、自然にボケていく前後の描写が見事だ。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F2.8 1/640秒 +0.3補正 WB:太陽光 ISO100

 

受け継がれていく“伝説のマクロ”

筆者は、MF一眼レフの時代から、タムロンの90mmマクロを使い続けてきた。最初に使ったのは、2代目の「SP 90mm F/2.5 (Model 52BB)」である。そのころから、フォーカスリングのスムーズな動きや、自然なボケ描写に感心し、マクロレンズというよりも“優秀な中望遠単焦点レンズ”として信頼を寄せていた。

 

そして時代の流れに合わせてタムロンの90mmマクロはMFレンズからAFレンズに移行し、最大撮影倍率も0.5倍から1倍に拡大。MF/AF切り換え機構もより迅速で快適なタイプに進化していった。また、近年のモデルでは、最新のレンズ硝材や優れたコーティング技術によって、シリーズ共通の特徴である“美しいボケ”を継承しながら、よりシャープでクリアな描写が得られるようになっている。

 

さらに、現行モデル「SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017)」では、金属鏡筒や新デザインの採用で各段に高品位な製品に生まれ変わり、手ブレ補正機構「VC」もマクロ撮影域にも強くなるなど、これまで以上に魅力的な中望遠マクロレンズに仕上がっている。ちなみに、この現行モデルも所有し、常用している。

 

長年愛されるレンズには理由がある。このように、“伝説”は進化し、受け継がれてゆくのだ。

 

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