「つる植物ののびる夏」第1回ではヤブカラシについてたっぷり紹介しました。除草する立場から見ると、なかなか手強いザッソウですが、じっくり観察するといろいろな魅力もあるものです。また、見る方向や立場が違うと、その植物に対する印象がずいぶん変わります。
今回紹介するノブドウは、生活する場所や見た目、性質はヤブカラシに似ています。もちろん、個性的な魅力もたくさんあります。特に、「個体差のある葉形」や「色づいた果実」はノブドウを語るうえで外せないポイントです。
それでは、ノブドウとはどんなザッソウなのか、見ていきましょう。
ブドウ科ノブドウ属のつる性植物で、毎年芽を出す多年草です。道端や空き地、藪の他、野原や山野に自生します。見ることができる時期は初夏から秋にかけてです。日当たりと適度な湿り気のある土壌が好きなようで、ヤブカラシと混ざって生えていることもあります。成育旺盛で強健な性質はどちらも負けず劣らずです。畑や庭にはあまり生えてこないからか、ヤブカラシと違って悪者扱いされることはあまりないような気がします。
名前は「野に生えるブドウ」の意味ですが、食べることはできません。
葉っぱの形は個体差があります。ざっくり分けると、切れ込まないタイプ、浅く切れ込むタイプ、深く切れ込むタイプがあります。
深く切れ込むタイプは「キレハノブドウ」と呼んで区別しています。実際、葉っぱだけ見ると、「キレハノブドウ」と他のタイプは違う植物のように見えます。
個人的に、「キレハノブドウ」の葉っぱは、かっこいい形だと思います。ずっと見ていたかったので、押し葉にして、しおりとして使っていたこともあります。
巻きひげは先端が二又に分かれて他のものに絡まり、上に伸びていきます。
夏になると、小さな星形の花がかたまって咲きます。花の色は緑色です。丸い花盤の中央に雌しべが1本あり、花盤を囲むように5本の雄しべと花びらがつきます。雄しべと花びらは、咲いてまもなく落ちてしまいます。花盤は蜜を出して、虫を誘います。
果実は秋になると熟して、コバルトブルーや白、紫に色づきます。その様子は非常に美しいので、是非一度見ていただきたいです。不規則に色の違う果実が集まっているところが、美しさの要なのだと思います。内部はノブドウウミタマバエなどの虫が入って、虫コブとなっていることが多いです。
2回にわたって夏のつる性ザッソウを紹介しました。このほかにも、好きなつる性ザッソウはたくさんあるので、機会があればまたお話しできればと思います。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)