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渋谷で「ビーズ展」美しく精巧なビーズからのぞく世界各国の文化

  • 2022年12月2日
  • イベニア

《ハロウィンの首飾り》アメリカ合衆国 個人蔵
ビーズと聞くとどんなイメージが湧きますか? おもちゃ? アクセサリー? それとも……?知っているようで、実はよくわからない。そんなビーズについてフォーカスした展覧会「ビーズ ―つなぐ かざる みせる」が、渋谷区立松濤美術館で開催されています。

■ダチョウの卵も花も!何でもビーズに大変身

この展覧会ではビーズを「さまざまな素材に穴を開けて糸を通したもの」と定義しています。穴を開けて糸を通せばなんでもビーズになるのです。そのため展示されているビーズは実に多種多様。人類は世界各地で様々なビーズを作り続けてきました。

同展覧会では、紀元前から現在にかけて、世界各地で作られたビーズと関連する展示物を紹介しています。第一会場では世界各地のビーズの歴史や特性にフォーカス。

南アフリカでは、注射器のカバーに穴を開けてつなげた育児用お守りも作られているとのことでした。子どもが健康に育ってほしいという親御さんの願いが込められているのでしょう。

身近な素材ということでダチョウの卵殻を材料にすることも。ニワトリの卵は殻が薄くて脆いため、ビーズ加工には向いていないそうです。

身近な素材として、スイカの種や花の萼(がく)に糸を通して連ねることもあるそう。ビーズに使用されている素材をとおして、その地域の雰囲気や「らしさ」が見えてくるようです。

■意外なモノもビーズになるんです

私たちからすると意外な素材もビーズに大変身します。

首飾りで使用されている白いビーズ、実は歯なんです。子どもから大人まで複数人の歯が使用されていて、シャーマンが呪術的な意味合いを込めて身につけていたものだそうです。

初めて見た時はぎょっとしましたが、ほかのビーズと組み合わせることでどことなくお洒落な雰囲気も漂わせています。

生き物を素材としているビーズはほかにもたくさん。スズメバチの強さにあやかろうと、頭部を連ねたネックレスや、ピラルクの鱗でできたビーズもあります。

マメ科の植物でできた木製のビーズと組み合わせた壁飾りに仕立てられていて、デザイン性も存在感もいい味が出ています。
 
■交易の歴史をたどる「貝の道」

貝は世界中でとれる素材ですが、実はビーズの素材になりうるものは多くないとのこと。タカラガイは世界中に広がっている貝で、「貝の道」と呼ばれる海岸部から内陸部までの道もあり、内陸部に運ばれることで価値が付加されます。

第一展示室でも特に目を引くパプアニューギニアの神像には、タカラガイをはじめとする6種類の貝が使用されています。

エチオピア製の子どもを背負うための皮製袋と、インドで作られた戦闘用の装束にも、タカラガイが使用されています。同じ種類の貝が、はるか遠い地で異なる目的で使用されているのは、なんとも興味深いですね。
 
■完成までに2カ月。インパクト大なビーズ人像

興味深いといえば、世界最大級のビーズ工芸品ナイジェリア・ヨルバのビーズ人像。青と緑を基調とした色使いに約1.5メートルという大きさも相まって、会場内で存在感を放っています。

ナイジェリア国内の王様や首長からの依頼を受けて作成することが多いそうですが、近年では観光客や博物館からの求めに応じることもあるとか。

■ビーズをたどって世界一周旅行へ!

第二会場では、世界を10エリアに分類し、各地のビーズ工芸品を紹介。

同展覧会の会場である渋谷区立松濤美術館は、暮らしとファッション、暮らしとアートなどをテーマにした展覧会を数多く手掛けてきたこともあり、第一会場と雰囲気がガラリと変わります。

南スーダンのディンカの男性が富の象徴として身につけるコルセットは、豊かであるほどコルセットの背中部分が高くなるそう。

ちなみに、クリスチャン・ディオールの1997年のキャンペーンで利用されたことで注目されたほか、「ライオン・キング」のコスチュームのインスピレーション源にもなったそうです。

タイ・アカ族の未婚女性の衣装も必見です。黒地にガラスビーズや貝のビーズがふんだんにあしらわれ、顔周りや頭部にはコインに穴を開けたビーズが使われていて、とてもゴージャス。

ゴージャス感ならこちらも負けていません。南アフリカのズールーの女性の婚礼衣装です。身につけているものはすべて、大小さまざまなビーズを組み合わせて作られています。

円状のモチーフを複数組み合わせて作られたビーズ細工は、ウエディングケーキを模したハンドバッグとのことです。結婚式という、人生のハレの日をより華やかに見せたいという思いが伝わってきます。

■驚くばかりのビーズ装飾はぜひ間近で

展示室中央にばかり目が行きがちですが、見どころは他にもたくさん。画面左の仮面は、ビーズを蜜蝋などで貼り付けることで、細やかな模様を作っています。ビーズの穴がすべて上を向くよう統一されているので、ぜひ間近で見ていただきたい展示品のひとつです。
 
ニューオーリンズのハロウィンパーティでは、山車の上から観客に向けて投げられる首飾りが投げられるのですが、こちらはプラスチック製のビーズが使われています。色ごとに意味があり、紫は「正義」、緑は「信仰」、金は「力」をそれぞれ表しているそうです。 

北アメリカもビーズ製品の宝庫。自然素材からできたビーズ細工の伝統と、動物の皮革や毛を使用する装飾技術があったことで、ガラスビーズがスムースに浸透したと考えられています。

隙間なくきっちり縫い止められたビーズが織りなす模様は、アート作品を見ている気持になります。

ビーズによるアート作品と聞いて、ビーズバッグを連想する方もいるのではないでしょうか。グラデーションの細やかさやビーズによる凹凸感が表情豊かで、ノスタルジックで飽きの来ない美しさです。

結婚式など祝辞の席で使用される装飾品として大切にされ、母から娘へと引き継がれてきたビーズバッグですが、昭和30〜40年代以降は生産数が減り、現在では数名の職人のみが作る状態だそうです。

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■ビーズとアートが出会って生み出す新しい世界

ビーズは装飾品の材料以外に、絵画の画材や立体作品の素材としても使われるようになりました。

『貴婦人と一角獣』をモチーフにしたタペストリーは、一本の糸にガラスビーズを通して作られていて、ビーズの色鮮やかさと輝きが画面全体をより一層奥深くしています。

また、ビーズの絵画も。絵の具で彩色した上にビーズを貼り付けることで、画面内の立体感や光加減が生み出され、「ビーズってこんな使い方もできるんだ!」と新たな発見がありました。

日本のビーズ織りの技術に、ジンバブエの廃材ワイヤーを使用するワイヤーアートが加わり、「ワイヤー・アンド・ビーズアート」という新しいジャンルのアート作品も誕生しました。リアルな造形と躍動感のあるポーズに、今にも動き出しそうな印象すら受けます。
 
白井晟一氏が設計した建築作品と世界中から集められたビーズ作品が織りなす世界は、時間を忘れてしまうくらい濃厚でした。今回の展覧会は一部エリアを除き写真撮影が可能なので、思わず写真に収めたくなるほどです。

見れば見るほど魅入られるビーズの世界。芸術の秋の締めくくりに、渋谷でビーズを堪能してみるのはいかがでしょうか?

ライター:青木美佳(イベニア)

【展覧会概要】

<会場> 
渋谷区立松濤美術館

<開催日時>
2022年11月15日(火)〜2023年1月15日(日) 10時〜18時
※毎週金曜日は20時まで開館します。(入館はいずれも閉館の30分前まで)

<休館日>
月曜日(ただし1月9日は除く)、11月24日(木)、12月29日(木)〜1月3日(火)、1月10日(火)

<料金>
一般800円(640円)、大学生円640(510円)、高校生・60歳以上400円(320円)、小中学生100円(80円)
※土・日曜日、祝休日は小中学生無料
※毎週金曜日は渋谷区民無料
※障がい者及び付添の方1名は無料

★ビーズ割引★
入館日当日にビーズ(さまざまな部材に穴を開け、複数個を糸などでつないだもの)を身に着けてご来館されたお客様は、通常料金から2割引でご入館できます。割引の併用はできません。

★写真撮影OK★
本店では、展示室での写真撮影が可能です。(一部不可な資料もございます。詳しくは受付でお渡ししている注意事項をお読みください)

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