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自治体電力はドイツに学べ、日本シュタットベルケ・ネットワークが始動【エネルギー自由化コラム】

  • 2017年10月12日
  • エネチェンジ

官民が連携し、地域に密着したインフラサービスを提供するドイツのシュタットベルケ。電力小売りや再生可能エネルギーによる発電の担い手として注目されていますが、その特徴を国内の地方自治体が出資する電力会社に取り入れ、地域の課題解決に取り組もうとする動きが全国で広がっています。この動きを支援する「一般社団法人日本シュタットベルケ・ネットワーク」が設立され、自治体電力の後押しを始めました。

ドイツ国内に約1,400のシュタットベルケ

シュタットベルケの概要

事業目的地域住民に欠かせないエネルギーやサービスの提供
歴史ガスと水道事業を19世紀に開始
法人格株式会社、有限会社、公営企業など
出資自治体が50%以上出資することが多い
事業内容電気、ガス、熱、水道、ごみ収集、公共交通、通信など

出典:経済産業省、総務省資料から筆者作成

経済産業省によると、シュタットベルケは19世紀以降、水道やガス、電気、公共交通、ごみ収集などインフラを整備、運営するためにドイツで発達した自治体出資の事業者です。約1,400のシュタットベルケがあり、うち900以上が電力事業を手掛けています。

2013年の売上はシュタットベルケ全体で日本円にして電力が7兆円、ガスが3兆6,000億円、熱が5,000億円に上ります。このうち、電力小売の売上は2兆円程度。10兆円を超すドイツの小売電力市場でざっと20%のシェアを確保しています。

シュタットベルケの経済規模(共同組織加盟企業の合計)

業種売上高(億円)従業員数(人)
電力70,04963,019
ガス35,84633,643
5,4469,638
合計111,341106,300

出典:経済産業省「電力・ガス産業の将来像」(注)内容は2013年時点、1ユーロ=140円で換算

自治体の出資を受けていますが、経営は自治体から独立し、民間の手法で進められています。日本の第三セクター会社とは似て非なる存在で、事業がうまくいかなければ倒産することもあります。ただ、重要な決定については自治体が一定の関与をし、自治体の意向を反映させるケースが多くなっています。

エネルギー販売の利益で住民サービス

主に電気やガスなどエネルギー事業で利益を上げ、それを活用して単独で採算を合わせにくい公共交通サービスなどを実施しています。

バイエルン州のミュンヘンにあるシュタットベルケは、2015年の売り上げの8割以上を電力やガス、石油、熱というエネルギー販売が占めています。人口140万人の電力需要を自社の再生可能エネルギーで賄うため、風力発電への投資も継続中です。

ドイツでは日本より約20年早く電力とガス販売が自由化されました。その中でシュタットベルケは地域密着のサービスで競争力を確保しています。このため、自由化に合わせて民営化したシュタットベルケを再び、公有化する動きも各地で出ているのです。

ネットワーク設立は産官学がスクラム

日本シュタットベルケ・ネットワークは、こうしたシュタットベルケの特徴を国内の自治体電力などが取り入れ、地域課題の解決に取り組むことを目指しています。東京都新宿区に事務所を置き、既に事業をスタートさせました。

設立には産官学がスクラムを組んでいます。代表理事には立命館大経営学部のラウパッハ=スミヤ・ヨーク教授、理事には九州大炭素資源国際教育研究センターの原田達朗教授、京都大大学院経済学研究科の諸富徹教授が名を連ねました。

大学の研究者以外では、福岡県みやま市が出資する自治体電力・みやまスマートエネルギーの磯部達社長、NTTデータ経営研究所の村岡元司氏が理事に入っています。

民間のノウハウや知見を自治体電力に提供

エネルギー販売、地域課題の解決、事業計画に基づく企業体の設立、運営などについて、自治体に助言するのが主な事業です。日本版シュタットベルケが増えれば、講習会や勉強会を開催し、シュタットベルケに関する最新情報を共有するとともに、ドイツとの交流を推進します。

自治体電力には全国の自治体から注目が集まっています。地方へ行けば自治体の信用度が絶大で、水道など他のサービスと組み合わせることで一定の利用者確保を見込めるからですが、自治体は企業体運営のノウハウを十分に持っているわけではありません。

特に、エネルギー業界は電力と都市ガスの自由化で激しい競争が続いています。第三セクター会社のように自治体感覚の経営では、生き残りが難しくなります。そこで、産学の持つノウハウや知見を提供しようとしているのです。

日本シュタットベルケ・ネットワークは「自治体ごとに課題や問題点は異なってくるはず。それぞれの事情に合わせた解決策を模索し、提案していきたい」と話しました。

家庭向けに電力を販売している自治体出資の主な地域新電力

小売電気事業者名出資自治体販売区域
みやまスマートエネルギー福岡県みやま市九州
とっとり市民電力鳥取県鳥取市鳥取県
ひおき地域エネルギー鹿児島県日置市鹿児島県中心
中之条パワー群馬県中之条町中之条町
CHIBAむつざわエナジー千葉県睦沢町千葉県

出典:経済産業省登録小売電気事業者一覧から筆者作成

トップランナーがみやまスマートエネルギー

日本版シュタットベルケを目指すトップランナーが、2015年に設立されたみやまスマートエネルギーです。出資比率はみやま市55%、民間の九州スマートコミュニティ40%、筑邦銀行5%。太陽光パネルを設置したみやま市の家庭や、みやまエネルギー開発機構が運営するメガソーラーから電気を調達し、市内外で販売しています。

市内の販売先は家庭や商店をはじめ、公共施設、病院、工場など。契約した家庭は2016年度で2,000世帯。みやまスマートエネルギーは2018年度末までに1万世帯との契約を目標にしています。市外では2月、福岡県柳川市の公共施設と契約を交わしました。福岡県八女市や鹿児島県いちき串木野市、肝付町の地域新電力と電力融通も始めています。

高齢者の見守りなど生活支援サービスも進め、契約者に喜ばれています。関連事業も含めた新たな雇用が約40人生まれたのも波及効果の1つです。みやま市エネルギー政策課は「これまで順調に販路を広げてきたが、これからは十分な営業利益の確保にも力を入れていく」としています。

ドイツでは破たんしたシュタットベルケも

ただ、死角もあります。みやまスマートエネルギーは高値で仕入れた電気を安く販売しています。こうしたビジネスモデルが成り立つのは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)があるからで、利益が出るように低炭素投資促進機構から交付金が買取業者に補てんされているのです。

しかし、政府は買取価格の引き下げを進めています。4月に施行された改正FIT法で交付金の水準を市場価格から判断して決めるとしました。激変緩和措置で5年間は現在の交付金が維持されますが、その後も維持される保証はありません。

みやまスマートエネルギーがモデルとするシュタットベルケでも2014年、ゲーラ市で経営破たんが起きています。債務は日本円でざっと270億円。電力事業の採算悪化が引き金になりました。

ネットワークに課せられた重い責任

滋賀県大津市や群馬県富岡市、福井県福井市など公営企業で都市ガス販売をしてきた自治体は相次いで事業の民営化など公営企業からの脱皮を図っています。「動きの激しいエネルギー業界に自治体がついていけない」(新潟県柏崎市)と判断したからです。

その一方で、みやまスマートエネルギーと同じコンセプトを持つ動きは、滋賀県大津市や奈良県生駒市、鳥取県米子市など各地で見られるようになりました。

もし自治体電力が経営破たんし、市場からの撤退を余儀なくされたとしたら、負担は住民にのしかかります。それだけに、事業計画の段階から民間のノウハウと知識を十分に取り入れ、船出しなければなりません。

それを後押しするのが日本シュタットベルケ・ネットワークの役割です。日本版シュタットベルケが定着するのかどうか、ネットワークはスタート時点から重い責任を背負っているようです。

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