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経過措置料金の継続や北本連系設備増強など、電力業界動向まとめ【2019年7月版】

  • 2019年7月9日
  • エネチェンジ

制度の変更や新しいガイドラインの公開、低圧電力(家庭向け)の経過措置料金の継続が決まるなど大きな動きがあった2019年春以降の電力業界の動向を関係省庁の資料からまとめて振り返ってみましょう。

それぞれの資料の注目すべきポイント、決定や変更した点とどのような影響があるのかなどについて、エネチェンジを運営するENECHANGE株式会社の顧問である関西電力出身、元大阪府副知事の木村愼作氏に解説してもらいました。

関西電力出身、元大阪府副知事の木村愼作氏

電力・ガス小売全面自由化の進捗状況について

経済産業省の諮問機関で資源エネルギー庁に置かれた総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会では月に1回程度、会議の資料や議事を公開しています。

各種資料とあわせて度々公開される「電力・ガス小売全面自由化の進捗状況について」では、低圧・高圧・特別高圧などの分野別の新電力シェアの推移や卸取引市場の状況などがわかります。今回は6月26日公開された資料の注目ポイントを聞きました。


出典:資源エネルギー庁 電力・ガス小売全面自由化の進捗状況について 2019年6月26日(以下この章の出典はすべて同じ)

「電力・ガス小売全面自由化の進捗状況」で注目したいポイントは?

まず、注目したいのは6ページの高圧分野の新電力の販売量シェアの推移でしょう。

総じてゆっくりとした右肩上がりとなっていた中で、北陸と沖縄の急激なシェアの上昇が目立ちます。北陸については昨年の自由化部門の値上げの、沖縄については卸売りメニューの設定の影響が大きいと考えられます。

その他では関西で2年前からシェアの減少が続いていましたが、昨秋ごろからは横ばいになっています。2年ほど前から原子力発電所の稼働などによる料金値下げを武器に行ってきた関西電力の積極的な販売拡大戦略が一段落したのでしょうか。


出典:資源エネルギー庁 電力・ガス小売全面自由化の進捗状況について(2019年6月26日) 6ページ

全エリアの共通的な傾向としては、今年2月にシェアを落したものが3月に各エリアとも回復しています。これは新電力の顧客には夏・冬の冷暖房需要が多く負荷率が相対的に低い需要家が多いことが要因ではないかと考えています。今年の冬は暖冬で暖房の稼働が抑えられシェアが一時的に落ちたのではないでしょうか。昨年の7月のシェアが一時的に伸びたのは逆に記録的な猛暑の影響も大きかったと見ています。

低圧分野の新電力シェアは北海道エリアでは昨秋以降大きく低下

低圧分野の新電力シェアについて、北海道が昨秋以降で大きく低下している理由は北海道特有の季節要因が大きいと思います。


出典:資源エネルギー庁 電力・ガス小売全面自由化の進捗状況について(2019年6月26日) 7ページ

北海道電力は新電力にない融雪用電力というメニューを持っています。このため冬季には新電力のシェアが低下することになります。ということで、3月には逆にシェアが上昇していますね。

「電力・ガス小売全面自由化の進捗状況」の気になる点をまとめて聞いてみました

資料の中で編集部が気になった点をピックアップして質問し、答えてもらいました。

大手電力(旧一般電気事業者)の域外進出で高圧分野で増加しているのはなぜ? 資源エネルギー庁 電力・ガス小売全面自由化の進捗状況について(2019年6月26日)4ページ

高圧分野での域外進出では東京電力エナジーパートナー(東京電力EP)の子会社であるテプコカスタマーサービス(TCS)の成長の影響が大きいといえるでしょう。域内では東京電EPが販売をし、それ以外はTCSが営業し販売量が伸びているからです。

新電力からのスイッチングが2018年1月ごろから急に増えているように見えるが、なぜ? 資源エネルギー庁 電力・ガス小売全面自由化の進捗状況について(2019年6月26日)9ページ

大東エナジーが2017年11月、福島電力が2018年5月に小売事業からの撤退を発表したことが原因と考えられます。この新電力2社はそれぞれ自社を契約している需要家に向けて、電力会社の切り替えを依頼しました。それによりこの2社から大手電力(旧一般電気事業者)や他の新電力への切り替えが増加しています。

2016年ごろから増加してきた卸電力取引所の取引量が2018年10月に大きく伸びているはなぜ? 資源エネルギー庁 電力・ガス小売全面自由化の進捗状況について(2019年6月26日)12ページ

まず2016年ごろから旧一般電気事業者の予備力削減や各社の努力もあってゆっくり伸びてきました。2018年前半にはグロス・ビディングの目標取引量が増加したことでより大きくなっています。グロス・ビディングとは旧一般電気事業者による自社グループ会社との取引を卸電力取引所のスポット市場を通して行うことです。

その後2018年10月に間接オークションが開始されたことで、さらに増加しています。間接オークションでは⼊札価格の安い電源順に送電することを可能とするルールを導入することで地域間連系線をより効率的に利用できるようになりました。

低圧電力(家庭向け)の経過措置料金が2020年4月以降も継続へ

2020年3月末で廃止される予定となっていた低圧電力(家庭向け)の経過措置料金が、4月以降も継続される見込みで経済産業省の電力・ガス取引監視等委員会の経過措置料金に関する専門会合によるとりまとめが公表されました。

2016年4月の電力小売全面自由化以降、十分な競争環境が整うまでの経過措置として継続されていた規制料金ですが、廃止とならなかった理由についてとりまとめの資料から解説してもらいました。

「電気の経過措置料金に関する専門会合とりまとめ」で注目したいポイントは?

資源エネルギー庁から電気料金の経過措置に関する報告書のポイントをまとめた資料が公表されているので、こちらを見るとわかりやすいでしょう。


出典:電気料金の経過措置に関する報告書(ポイント) 資源エネルギー庁

これは2つの委員会の専門会合の内容をまとめたもの。左半分については経過措置の終了についての判断基準や結論、右半分については経過措置終了に向けて議論をしてきたさまざまな制度についてです。

(1)消費者等の状況、(2)十分な競争圧力の存在、(3)競争の持続的確保を総合的に判断した結果、「全ての供給区域について経過措置料金を存続させることが適当。」であるという結論になりました。今後は年に1度検討が行われます。

「電気の経過措置料金に関する専門会合とりまとめ」の気になる点をまとめて聞いてみました

予定されていた2020年3月の経過措置終了が見送られた理由はなんでしょうか。「電気の経過措置料金に関する専門会合とりまとめ」の資料から気になる点について話を聞きました。


出典:電気の経過措置料金に関する専門会合とりまとめ

経過措置終了について、消費者団体や新電力側からは慎重な判断を求める声があった。消費者や新電力にとっては経過措置を終了しないほうが良いのか。(11ページ)

十分な競争圧力がないまま規制料金が終了することで、消費者団体は電気料金値上げの可能性があることを懸念しています。また、新電力は反対に電源調達の公平性がないことや旧一般電気事業者が一時的な値下げをすることで寡占状態になる可能性を考え、慎重な判断を求めているのでしょう。

判断基準の1つになっている「十分な競争圧力」とは供給区域におけるシェア5%以上の競争者が2〜3者必要ということか?(8ページ)

総合的に判断をすることになっているので絶対的な判断基準ではありませんが、専門会合では基準の1つとしてこの数値を用いて検討が行われました。

「小売電気事業者の社内及びグループ内における小売市場の競争を歪めるおそれがある不当な内部補助を防止するための方策」の検討が必要とはどういうこと?(9ページ)

不当な内部補助とは簡単に言うと発電部門が価格面において自社の小売部門を新電力に比して有利に取り扱うことであり、新規参入者の電源調達環境の改善や競争の活性化のためには対応が必要です。

今後は「概ね年に1回程度検討」という頻度は少なくはないのか?(31ページ)

十分な競争圧力があるかを見るためのシェアが急に大きく伸びることは考えにくく、じわじわと状況が変化していきます。そのため年に1回程度となっていますが、いろいろな状況変化により柔軟な対応が望まれます。

「価格比較サイトの充実などを含め、実効的な競争基盤の整備に向けた検討」が必要とありますが、比較サイトにはどのような役割が求められているか。(9ページ)

スイッチングへの有効性、公平性、事業の継続性の3つが求められています。公平性が担保されていることで消費者の判断基準となるという意見がありつつも、事業モデルが未成熟、比較サイトを経由したスイッチングは減少傾向にあるのでは、といった指摘もあります。公平な基準で継続的にスイッチングを促進できるサービスである必要があるでしょう。

2019年度のFIT買取価格・再エネ賦課金単価が決定 事業用太陽光発電はどうなる?


出典:FIT制度における2019年度以降の買取価格・賦課金単価等を決定しました

2019年の事業用太陽光発電(10kW以上500kW未満)の買取価格が昨年度の18円+税から14円+税に決定しました。住宅用太陽光発電については2019年度はすでに決定していた通りです。

買取価格が大きく下がり、水準として通常の売電単価金額を下回る水準となりました。今後の再エネのボリュームゾーンの動きが注目されます。


出典:FIT制度における2019年度以降の買取価格・賦課金単価等を決定しました

再エネ賦課金はkWhあたり2円90銭が、2円95銭に。いろいろな工夫で若干の引き上げになりましたが、今後とも上昇が見込まれます。

北本連系線が増強され60万kWから90万kWに


出典:新北本連系設備運用開始に伴う今後の主なスケジュール

北本連系線が順調に動き始めました。3.11の震災以降に初めて地域間連系線が増強されたことになります。

この連携により北海道と東北、東北と本州の市場分断の機会が若干は少なくなります。また、電源の弱い北海道の事故の収束に活かせるほか、供給が需要を上回ってしまう太陽光発電の端境期の余剰に逃げ道ができます。したがって北海道のメガソーラーの出力抑制が起こりにくくなります。

今後は東京中部間連携設備の周波数変換装置(FC)が順次増強されていきます。

「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネスに関するガイドライン」の改定


出典:「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネスに関するガイドライン」を改定しました

「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネスに関するガイドライン」が改定されました。このガイドラインではデマンドレスポンス(DR)で生じた電力を電力会社が調達するネガワット取引についての取り扱いが決められています。

デマンドレスポンスとは電力の供給量にあわせて、需要家側の消費電力を制御するようにする仕組みで、インセンティブを提示して節電を促すなどの取り組みがあります。

このガイドラインではインセンティブ型DRのうち、下げDRの分類として3つの類型が定められています。(「ガイドライン」6ページ)。類型1(1)が従来のもので、小売電気事業者が自社の需要家による需要抑制で生み出された電力を使用するものです。

問題があったのは類型1(2)と類型2です。今回の改定ではネガワット調整金によってアグリゲーターが赤字になるという不満について、金額や支払い方法のガイドラインをつくることで解消する内容になっています。

インバランス料金制度の改定実施


出典:インバランス料金の算定の基となる省令の一部改正を行いました

インバランス料金(需要計画-需要実績間、発電計画-発電実績間の差分の調整に係る料金)の制度が改定され、新たに係数のK・Lが設定されました。

この係数は余剰電力の買い取りをより安く、そして不足した電力の販売をより高くするもので、計画値同時同量へのインセンティブがこれまでよりも働くようにするものです。2021年の広域の需給調整市場開設までのつなぎの対応です。

間接送電権取引市場の取引開始


出典:間接送電権取引市場の取引開始について

2018年10月より間接オークションが開始され、地域間連系線の利用は日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場を通して割り当てられるようになりました。この結果、卸市場の取扱高は飛躍的に拡大しました。

しかし、北本連系線や中国九州間連系線、周波数変換装置(FC)といった、地域間連系線では、かなりの頻度で線路容量が不足する混雑状態となり、スポット市場の約定価格においてエリアプライスに差、いわゆる値差が発生します。

この値差を軽減するために2019年4月24日から間接送電権のオークションがスタートしました。この権利を買い取ることにより、取引で生じた値差をJEPXが補填してくれる仕組みです。

卒FIT 旧一般電気事業者10社が買取価格を公表

今年の11月から次々と太陽光発電設置した家庭のFIT制度による10年の買い取り期間が終了となります。経産省は旧一般電気事業者に対し6月末までに、終了後の買取価格の公表を求めていました。

各社の買取価格は以下の通りであり、価格は安くても、その分電気料金を割り引くといった付帯サービスを多くの会社が提示しています。これを受けて、新電力なども続々と買取価格を発表しています。

会社名余剰電力買取価格
北海道電力8円/kWh
東北電力9円/kWh
東京電力8.5円/kWh
中部電力7〜12円/kWh
北陸電力1〜17円/kWh
関西電力8円/kWh
中国電力7.15円/kWh
四国電力7〜8円/kWh
九州電力7円/kWh
沖縄電力7.5円/kWh

新電力も含めた卒FIT後の余剰電力買取価格はこちらの記事でくわしく確認できます。

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